「長生きすることは良いことだ」と思えなくなるきっかけ
「長生き」に対する意識調査
国の研究機関である社会保障・人口問題研究所が「生活と支え合いに関する調査」の結果を公開しています。
この記事では、その調査結果から、「長生きすることは良いことだと思いますか」という質問について見ていきます。
この質問には、全国の19,800人が回答しています。
回答者の7割弱は「長生きすることは良いことだ」と思っている
「長生きすることは良いことだと思いますか」という質問では、回答の選択肢は、「とてもそう思う」「ややそう思う」「あまりそう思わない」「全くそう思わない」の4つです。
回答率を見ると、「とてもそう思う」と「ややそう思う」を足した、「長生きすることは良いことだ」という回答が68%でした。
だいたい、7割弱ぐらいの人は、「長生き」に肯定的です。
現在と未来が無ければ「長生き」を肯定できない
「長生きすることは良いことだ」と思うためには、現状がある程度、幸福で、将来的にも希望が持てることが必要です。
したがって、それぞれの人生の状況によって回答が変わってきます。
ここでは、男性の回答を、婚姻状況別に見てみましょう。
「既婚」の男性は、「未婚」の男性に比べて、「長生きすることは良いことだ」という比率が高くなります。
つまり、結婚することによって幸福度が増し、未来に対する希望も持てるようになる、男性が多いことが分かります。
しかし、配偶者と「死別」すると、「長生きすることは良いことだ」という比率が下がります。
配偶者との死別は、現在と未来の人生に対して大きなダメージを与えるのです
さらに、配偶者と「離別」(離婚)すると、さらに長生きに肯定的な人は減ります。
「離別」は「死別」よりも、人生に対して与えるダメージが大きいと言えるでしょう。
「結婚」は、男性ほど女性を幸せにしていない!?
同じ変化を女性について見てみましょう。
女性の場合、「既婚」の方が、「未婚」よりも、「長生きすることは良いことだ」という比率が下がります。
よく見ると、「とてもそう思う」という人が減っています。
「長生きすることは良いことだ」と思っていた人が、結婚することによって、自分の現在や将来に対して疑問を持ち始めているように見えます。
結婚によって、幸福感を持つ男性が多いのに対し、女性はかならずしもそうとは限らないと言えるでしょう。
「介護」の経験は長生きを考える機会を与えてくれる
結婚以外にも、「長生きすることは良いことだ」という気持ちに影響することがあります。
例えば、親などの介護経験が有る人は、介護経験が無い人よりも、「長生きすることは良いことだ」という比率が下がります。
さらに「現在介護中」の人を見ると、「長生きすることは良いことだ」という比率が60%まで下がります。
「家族の介護」は、長生きすることに対して考える機会を与えてくれる場面が多いのでしょう。
会話がない高齢者は「長生き」を肯定できなくなる
最後に、「長生きすることは良いことだ」という人が、特に少ない例を紹介しましょう。
回答者を「65歳以上」に限定し、「会話の頻度」順に分類しています。
会話の頻度が「毎日」の人は66%の人が、「長生きすることは良いことだ」と感じています。
しかし、会話の頻度が「2~3日に1回」「1週間(4日~7日)に1回」と下がるにつれて、「長生きすることは良いことだ」という人は減り、50%台になります。
さらに会話の頻度が「2週間に1回以下」になると、「長生きすることは良いことだ」という人は50%を切ってしまいます。
つまり、高齢者にとって「会話が無い」ということは大きなダメージであり、現在と将来への肯定感が下がってしまうのです。
「長生きすることは良いことだ」と感じられる老後のためにも、会話ができる人の縁(えん)を大事に育てておきましょう。