自分に介護が必要となる確率を考えてみる
介護保険のデータから、介護が必要になる割合を計算する
民間の保険会社による“介護保険”の広告を見る機会が増えてきました。
そういう広告を見るたびに、「いったい、自分はどれぐらいの確率で、介護が必要な状態になるのだろう」と考えてしまいます。
例えば、一般的に、保険で備えることが多い、病気やケガの確率や、交通事故に遭う確率と比べて、高いのでしょうか、低いのでしょうか。
ちょうど、厚労省から、国内の介護が必要な高齢者についてのデータをまとめた「介護保険事業状況報告」が出ていたので、これをもとにして考えてみました。
なお、ここからは混同を避けるために、ただ「介護保険」と言ったときは国の介護保険を指すことにします。
高齢者の数は3,440万人
介護保険の主な対象は、「第1号被保険者」と呼ばれる65歳以上の加入者です。
この数は、2017年3月末現在で「3,440万人」です。
国の人口がだいたい1億2千万人ですから、その30%弱と考えれば良いでしょう。
介護認定を受けている人は632万人
介護保険では、保険を利用する前に、「介護認定」というテストを受ける必要があります。
3,440万人の高齢者のうち、「介護認定」を受けて、「要介護要支援認定者」となった人は「632万人」です。
つまり、高齢者になったから、全員介護が必要になるわけではありません。
介護を受ける必要があると判定される人は、高齢者全体の5人に1人ぐらいの割合です。
要介護3以上の人は219万人
「要介護要支援認定者」は、体の状態によって、7段階に評価されます。
この7段階を、大きく2つに分けると、「要支援1~要介護2」までと「要介護3~5」までに分かれます。
例えば、介護が必要とされる人を対象とする「特別養護老人ホーム(通称:特養)」に入居するためには、「要介護3以上」が必要条件となっています。
「要介護3」の状態は、「立ち上がりや歩行、食事、排せつ、入浴の際に全面的な介助が必要である」「常時誰かの支援や見守りが必要」です。
つまり、常時、誰かの介護を受ける必要がある状態と考えれば良いでしょう。
ここまで状態が進むと、家庭での介護は難しくなるので、「特養」に入る資格があると判断されるわけです。
632万人いる「要介護要支援認定者」のうち、要介護3以上の人は35%、人数で言うと「219万人」です。
65歳以上全体で、介護が必要とされる人は「6.3%」
というわけで、65歳以上の高齢者で、常時誰かの介護を受ける必要がある人数は「219万人」と分かりました。
これは、3,440万人の高齢者のうち、「6.3%」にあたります。
かなり高い確率ではありますが、必ずしも全員がそうなるわけではないことも分かります。
常識的な判断で言えば、自分がそうなることをまったく考えないというのも良くないと思いますが、40代以下の人が、その状況におびえて、民間の介護保険に入って何十年も支払いを続けるには、やや低い確率なのではないでしょうか。
まだ、長い人生のどこでどのようにお金が必要になるのかわからないのですから、お金の用途を介護で縛ってしまうのはもったいない気がします。
例えば、その分を、保険ではなく、貯金として積み立てることを検討しても良いでしょう。
また、どうしても保険でカバーするのであれば、もっとカバーする範囲が広い「医療保険」の特約として入るなどの方法も検討してください。