20代から40代までの国民は、年金が信じられず、自ら働くしかないと思っている
国による大規模な調査
「社会保障を支える世代に関する意識調査」は、将来の社会保障制度に対する基本的な資料を得るために、国によって行なわれるものです。
全国の20歳以上の国民12,539人に質問票を配布し、8,873人の有効回答を得ています。
ここでは「将来への不安」に関するデータを見ていきましょう。
最大の不安は「年金」
「将来への不安」として、一番多くの人に挙げられたのは「公的年金が老後生活に十分であるか」でした。
実に80%以上の人が挙げており、年金制度に対する不安感の強さがうかがえます。
二番目は「医療や介護が必要になり、その負担が増大してしまうのではないか」という、医療費/介護費に対する不安でした。
三番目は「企業年金や退職金が減額、廃止されるのではないか」です。
老後の生活費に対する不安が、一番目と三番目に入っていて、老後に対する金銭的な不安の強さが感じられます。
それでも、老後の生計の手段は「年金」
次に「あなた自身の老後の生計を支える手段」を、2つ聞いています。
一番目の手段として挙がったのは、「公的年金」「自分または配偶者の就労による収入」「貯金または退職金の取り崩し」の順でした。
二番目の手段として挙がったのは「貯金または退職金の取り崩し」が一番多く、「公的年金」と「就労による収入」が続きます。
20代から40代は「年金」を信じられないでいる
「老後の生計を支える手段」の回答を、年代別に見ると、20代から40代までと、50代以降では対照的な結果になりました。
20代から40代では、生計を支える手段として「自分または配偶者の就労による収入」を挙げる人が多く、「公的年金」を挙げる人は少なくなっています。
例えば、20代では「就労による収入」が47.8%なのに対し、「公的年金」は29.5%です。
「公的年金」を当てにしている人は少なく、自ら稼ぐしかないと思っている人の方が多いのです。
この年代では、まだ公的年金の支給開始年齢や支給金額が確定していません。そのため、「公的年金」に対する信頼が持てないのでしょう。
しかし、50歳になると、自分が公的年金を貰い始める年齢と、予想される年金の金額が書かれた「ねんきん定期便」という通知が届きます。
言葉は悪いですが、「自分たちは逃げ切れそうだ」と思いはじめる年齢なのです。
そのため、50歳~64歳では、「就労による収入」が32.6%なのに対し、「公的年金」が51.8%と逆転します。
さらに65歳以上になれば、実際に年金の支給が始まります。
こうなると、老後の生計を支える手段として「公的年金」を挙げる人が70%を超え、「就労による収入」を挙げる人は11.4%まで減ってしまいます。
「今後充実させるべき社会保障分野」も「年金」
老後に対する不安の強さは、「今後充実させるべき社会保障分野」という質問でも感じられます。
一番多いのは「老後の所得保障(年金)」で、男女とも70%以上の人が挙げています。
次が「高齢者医療や介護」で、やはり老後の問題です。
話題になることが多い「子ども/子育て支援」や「医療保険/医療供給体制」よりも、老後の問題解決に力を入れるべきであるという回答が多いのは、それだけ自分たちの老後に対する不安が強いと見るべきでしょう。