定年後の家計は、現役時代の8割とイメージしよう

[2018/10/15 00:00]

定年後の家計を想像してみる

定年後の生活に不安を感じる理由の1つが、家計の内容が変わることです。

これまでの給与生活から、公的年金をベースに貯金や個人年金などで補なう生活に変わるため、家計が維持できるかどうか不安なのです。

特に、支出について、その規模や内容を具体的にイメージすることが難しいようです。

ここでは、政府が行なっている「家計調査」のデータをもとにして、定年後の支出のイメージを探っていきましょう。

家計の規模が8割になる

家計調査では、世帯主が65歳以上の世帯を「高齢者世帯」、65歳未満の世帯を「非高齢者世帯」と言います。

「非高齢者世帯」という呼び方は、ちょっとわかりにくいので、ここでは「現役世帯」と呼びましょう。

現役世帯の1カ月の支出は「310,455円」です。

これに対し、高齢者世帯は「247,701円」です、現役世帯のちょうど8割にあたります。

定年後の生活のイメージは、現役時代の家計を2割縮小して考えると良いでしょう。

出典:データを基に編集部が作成

減る支出と減りにくい支出

高齢者世帯の支出の内訳を見てみましょう。

支出が多い項目は「食費」「交通/通信費」「教養娯楽費」「水道光熱費」などで、ごく普通に見えます。

出典:データを基に編集部が作成

わかりやすいように、現役世帯と比較したグラフを作りました。

全体の傾向は変わりませんが、「交通/通信費」や「被服費」「教育費」などが減っています。

高齢者世帯では、外出する機会が少なくなったり、子供の教育費がかからなくなる様子が想像できます。

ただし、「光熱水道費」のように現役世帯と差がない項目もあります。定年後であっても、暮らし方が大きく変わらない限り、変化しにくい項目なのです。

出典:データを基に編集部が作成

増える支出もある

一方、高齢者世帯で支出が増える項目もあります。

もっとも増えるのが「保険医療費」です。

「保険医療費」の内訳を見ると、病院などの「保健医療サービス費」が増えています。医者にかかる機会が多くなるのでしょう。

また、サプリメントなどの「健康保持用摂取品」も増えています。愛用する人が増えるのでしょう。

「その他の支出」に含まれる「交際費」も増える支出です。

具体的には、現役世帯で「17,646円」なのが、高齢者世帯では「25,315円」になっています。

時間的な余裕ができるので、子供や孫、親戚などとの付き合いが増えるのでしょう。

出典:データを基に編集部が作成

定年後の生活も、現役時代の延長線上にある

自分が現役のうちは、定年後の生活は、なかなかイメージしにくいものです。

しかし、「現在の生活の8割掛けになる」と思えば、無闇に怖れるほど、厳しいものではないことが分かります。

もちろん、節約は必要ですし、教育費がなくなる代わりに医療費が増えるなどの変化もあります。

しかし、少し規模は小さくなりますが、定年後の生活は、現役時代の生活の延長線上にあるのです。基本的な構造は同じで、大きく変わるわけではありません。

住居費について考慮が必要

今回の結果を、自分の将来の設計に活かす際に、一つ注意があります。

それは「住居費」の金額です。

今回利用した家計調査によれば、調査対象の「持ち家率」は高く、全国平均では「84.9%」に達しています。

「地代/家賃」を払っている世帯は、「14.3%」しかいません。

14%の人が払っている「地代/家賃」を全体で割るので、「住居費」の平均金額は、実際よりもずっと低くなっています。

具体的には、現役世帯が「17,876円」で、高齢者世帯が「14,853円」です。

都会で賃貸住宅に住むには、この数倍の家賃が必要でしょう。

また、分譲マンションでも、管理費などの経費だけで、この金額を超えることが珍しくありません。

将来の支出を想定するときは、自分のライフスタイルに合わせて、リアルな住居費の金額を調べておきましょう。

[シニアガイド編集部]