定年まで同じ会社で働き続ける男性は32%、女性は6.5%
「終身雇用」は現在でも有効か
よく、「日本の会社は終身雇用制で、定年まで勤め上げる人が多い」ということを聞きます。
たしかに制度上は、そうなっているのですが、転職サイトのCMを見ない日はありません。
実際に一度も転職しないで会社人生を終える人は、どれぐらい居るのでしょうか。
見つけたのが、内閣府の「人づくり革命 基本構想」にある「年齢階級別の転職割合」というデータです。
このデータは、リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査2017」をベースにしたもので、最初に就職したときに正社員だった人に限定して、各年代ごとに転職回数を聞いています。
このデータを使って、「転職」する人、しない人の割合を見ていきましょう。
終身雇用の道のりを歩む人は少ない
最初に、転職回数が0回、つまり転職の経験がなく、最初に入社した会社に勤め続けている人のグラフです。
男性のグラフを見ると、20代前半の段階で、転職経験がない人が70%を切っています。
その後も、退職することなく「終身雇用」の道のりを歩んでいる人は、減り続けます。
30代後半では42%、40代では38%、50代前半で36%まで下がります。
定年を60歳とすると、その直前の50代後半まで、転職なしで勤め続けている人は32%しかいません。
つまり、最初に正社員で就職しても、定年時まで勤め続ける男性は、3人に1人の割合なのです。
女性は転職経験者が多い
女性の場合は、転職経験がない人の減り方が、もっと大きくなっています。
20代後半では41%、30代前半で27%、30代後半からは20%を切ります。
50代後半まで同じ会社に勤め続ける人は6.5%しかいません。
正社員で入社しても、定年まで勤め上げる女性は、ごく少ないことが分かります。
この調査では、退職の理由などは分かりませんが、結婚や育児、介護などの理由で退職や転職をする人が多いのでしょう。
30代後半になると転職経験者の方が多くなる
次に、「転職の経験がある人」のグラフを見てみましょう。
男性の場合、30代後半には50%台に乗ります。つまり、転職経験者の方が、未経験者よりも多くなります。
また、30代前半からは、転職回数が1回の人よりも、2回以上の人が多くなります。
40代後半の女性の67%は「転職経験あり」
転職の経験がある女性は、20代後半には40%台に乗り、その後も増え続けます。
40代後半には67%まで増えます。
つまり、この年代の女性は、3人のうち2人は転職経験があることになります。
男性と同様に、30代前半になると、転職回数が1回の人よりも、2回以上の人の方が多くなります。
終身雇用を実現している人は少ない
ここまで見てきたように、正社員で入社して60歳の定年まで同じ会社で勤め続けるという、終身雇用モデルに沿った会社人生を送る人は、すでに少数派です。
もちろん、職種や会社の規模によって、終身雇用をめざす人の割合は異なるでしょう。
また、本人の意志とは関係なく、グループ会社などへの転職を強いられる場合もあるでしょう。
確実に言えるのは、「終身雇用」を目指しても、それを実現できる人は少ないということです。
定年の年代まで働き続けている人が多い
最後に、「最初に正社員で入社した人が、転職回数に関わらず、その時点で働き続けている割合」のグラフを紹介します。
男性は、50代前半までは90%以上の人が働き続けています。
60代前半でも74%の人が働いていますから、「65歳」まで働き続けることは珍しいことではなくなっています。
女性の場合も、50代前半までは70%以上の人が働き続けています。
男性よりも家庭内の問題で負荷がかかりやすいことを考えれば、かなり高い割合と言って良いでしょう。
ほとんどの人は、最初の会社を退職して「終身雇用」の道筋を外れても、働くこと自体をやめてしまうわけではありません。次の仕事を見つけて、働き続けているのです。