退職金について語られている「噂」は本当か
語られている「噂」は本当か
退職金については、いろいろな「お話」があります。
それを「常識」として語る人もいれば、ひそひそと「噂」として語る人もいます。
ここでは、そのうちのいくつかを国の調査結果をもとに検証してみましょう。
使ったデータは、厚労省による「平成30年就労条件総合調査」です。
「小さい会社には退職金制度がない」
小さい会社に転職しようとすると、「そんな退職金もあるかどうかわからないような会社は止めときなさい」と身近な人に言われる場合があります。
調査結果を見ると、確かに、従業員数が「30~99人」の会社は、「1,000人以上」の会社に比べて、退職金制度がある会社が少ないのは事実です。
ただし、「30~99人」の会社でも、77.6%には退職金制度があります。
一応、確認してから、「小さいけれど、退職金ぐらいはあるよ」と言って安心させてあげましょう。
「小さい会社が潰れると退職金が出ない」
「あの社長が夜逃げをしたら、あなたの退職金も危ないんじゃない」と言う人がいます。
人が勤めている会社について、会社が潰れたときの話をする人もどうかとは思いますが、きっと、心配してくれているのだと思うことにしましょう。
中小企業の退職一時金については、「中小企業退職金共済制度(中退共)」と「特定退職金共済制度(特退共)」という制度が準備されています。
つまり、お金は、社内で社長が持っているのではなく、社外の公的な組織に任されています。
万が一、社長が夜逃げをした場合でも、受け取るまでの手続きは面倒ですが、自分の退職金が無くなることはありません。
特に「中退共」は国の制度なので、信頼度が高いと言えるでしょう。
不安を感じたときは、自分の会社の退職金制度が、中退共や特退共なのか、確かめておきましょう。
ちなみに、下のグラフは、制度を利用している割合を、そのまま足したものです。複数の制度を利用している会社があるので、トータルは100%を超えます。
「大きい会社の退職金は一時金よりも年金が多い」
例えば「30~99人」の会社の退職金は、8割以上が一時金だけです。
しかし、「1,000人」以上の会社では、その割合は3割弱まで下がります。
いろいろな理由が考えられますが、「一時金の金額が大きくなると、退職所得控除の範囲を超えてしまい、高額な税金がかかる」などが身近なところでしょう。
自分の会社の退職金が、年金制度を併用している場合は、いつからどんな形で貰えるのか、就業規則などで確認しておきましょう。
「退職金の目安は、退職時の給与の40カ月分」
最近の退職金制度は、ポイント制度とか、企業型確定拠出年金など、複雑な要素が増えて、いったい自分がどれぐらいの金額を貰えるのか、判断するのが難しくなりました。
こういうときに便利なのが「定年退職による退職一時金の金額は、最後にもらっている給与の40カ月分ぐらい」という説です。
実際に確かめてみましょう。退職一時金の金額は、学歴や仕事によって差があります。
しかし、退職時の給与で割ると、だいたい40倍になっています。
とりあえず、退職一時金については、給与の40カ月分は良い目安のようです。
「退職年金の金額はアテにならない」
最後に、年金型の退職金である「退職年金」について、見ておきましょう。
過去3年間で、退職年金制度の見直しを行なった企業の割合は5.1%でした。
その多くが「新たに制度を導入する」か「他の年金制度に移行」しています。
具体的には、貰える金額が決まっている「確定給付年金」を止めて、「確定拠出年金」へ移行する企業が多くなっています。
確定拠出年金になると、積み立てる金額だけが決まっていて、貰える金額は運用によって左右されます。
つまり、毎月いくら貰えるかは運次第というわけです。
この移行は、経営上のリスクを避けることを目的とした、全世界的な流れなので、もとのような「確定給付年金」へ戻ることは期待できません。
退職年金については、あまりアテにしすぎないように注意しましょう。