「こりゃあ、70歳までは働くしかないかな」と納得させられそうになるプレゼン
70歳まで働けと言われても
2018年10月現在、「企業の継続雇用を70歳に引き上げる意向」というニュースが流れています。
「60歳になったら、引退して年金ぐらしするつもりだったのに、それが65歳になってガッカリしてたら、今度は70歳まで働けっていうのか」とお怒りのご同輩も多いことでしょう。
そんなあなたに、ご覧いただきたいプレゼンがあります。
これは、経済産業省が「2050経済社会構造部会」という会議のために作った資料です。
テーマは「高齢者就労の現状と課題」ですが、要は「もっと高齢者に働いてもらおう」という内容です。
会議に参加されている委員の方々は、産業界の社長さんたちが中心ですから、パッと分かるプレゼンです。
まずは、会議に呼ばれた委員になったつもりで、以下のプレゼンをご覧ください。
老後が長くなって「年金」と「保険」が危ない
プレゼンの真ん中のグラフを見てください。
1961年に「国民皆年金/国民皆保険」ができたときは、男性の老後期間は「12年」女性は「16年」でした。
つまり、いまの年金や保険の制度は、そういう前提で設計されています。
しかし、2017年の老後期間は、男性が「16年」、女性が「24年」です。
平均寿命が延びたことで、制度を設計したときの想定よりも、ずっと「老後の期間」が長くなっています。
大前提が崩れたわけですから、年金も保険も大変なことになるわけです。
「支えられる側」から、「支える側」にまわろう
これは、「高齢者」と「現役世代」の割合を示した画像です。
これまでのように「18~64歳で65歳以上を支える」と考えると、2040年には、1人の高齢者を1.5人で支えることになってしまいます。
しかし、高齢者が働くことで「18~74歳で75歳以上を支える」に変わると、2040年でも1人の高齢者を支える人が3.3人に増えます。
支える人数が2倍以上なると、見える景色が変わります。
「もっと現役を続けて、人を支える側にまわりましょうよ」と、呼びかける声が聞こえてきます。
高齢で働いている人は300万人も増えている
このプレゼンは、就業率の数字に目を取られやすいのですが、注目すべきは棒グラフの方です。
2002年からの15年間で、働いている高齢者が300万人以上も増えています。
人口が多い「団塊の世代」が60歳以上になったため、働いている人の人数が大きく伸びたのです。
「3%増えた」と言われても「へー」と思うだけですが、「300万人も増えた」と言われれば、「そんなに増えてたんだ。私も働かないと」と思いませんか。
健康を維持するために働こう
このプレゼンは、「健康を維持するためにも、高齢者は働きましょう」と呼びかけています。
左は、「働いている高齢者が多い都道府県は、医療や介護にかかる人が少ない」というグラフです。
右は、「仕事をしている人は、8年経っても自立をしている割合が高い」という意味です。
自分の健康が気になる人は、働き続けたくなりませんか。
働いている家庭は赤字にならない
グラフの青い棒が「収入」で、赤い棒が「支出」です。
左の「60~64歳」を見ると、働いている世帯は、無職の世帯よりも「2.9万円」も支出が多いことがわかります。
しかし、もっと注目したいのは、青い棒と赤い棒の関係です。
「勤労世帯」の方は、青い棒の「収入」の方が長く、「無職世帯」は赤い棒の「支出」の方が長いのです。
つまり、「無職世帯」は、支出のほうが多い“赤字”の状態です。
「支出」が足りない分は、預金などで補っているのです。
右の「65~69歳」の世帯でも、この関係は変わりません。
「働いている家庭は赤字にならない」のです。
毎月、こんなに預金を取り崩す前提で考えていると、必要な老後資金の金額は果てしなく大きくなってしまいます。
老後の資金に不安を感じている人は、仕事を続けたくなりますね。
自分と家庭の状況から考えてみよう
さて、プレゼンを見たご感想はいかがでしょうか。
「まぁ、会社を辞めてもすることはないし、もう少し働いてみようか」と思いませんか。
それとも「いやいや、これぐらいじゃ、ダマされませんよ」と思いますか。
とりあえず、自分の体調や将来の希望、家計の状況などを考慮して、自分の行く末をゆっくり考える機会を作りましょう。
なお、ここで掲載したのは、プレゼンの一部です。
全部見たい方や、大きい画像を見たい方は、こちらのPDFファイルをご覧ください。