相続が始まると税務署から届く「相続税についてのお尋ね」
税務署から来る、お問い合わせの手紙
あなたの親が亡くなって、財産を相続したとします。
相続財産には、家と土地が含まれていますが、面倒なので相続税の申告はしないつもりでいました。
すると、税務署から「相続税についてのお尋ね」という手紙がやってきます。
「相続税についてのお尋ね」が届くのは、相続税の申告期限の前後です。
つまり、「あなたに、申告すべきと思われる相続財産があることは存じておりますよ」と税務署が言ってくるわけです。
この記事では、「相続税についてのお尋ね」に代表される、税務署からの「簡易な接触」を紹介します。
無申告や過少申告が疑われる場合にやってくる
「簡易な接触」は税務署が使う用語で、郵便や電話によって納税者に問い合せをすることを指します。
「簡易な接触」は、次の2つのような場合に行なわれます。
- 申告義務があるにも関わらず無申告と想定される
- 申告額が過小であると想定される
納税者の自宅などの現地で行われる立ち入りを伴う「相続税の実地調査」の前の段階と思えば良いでしょう。
具体的には、次の2つの方法が使われます。
- 相続税を申告しない可能性がある納税者に対して、書面で問い合わせて、申告書の提出を促す
- 調査すべき問題点が限られている場合は、納税者に電話や来所依頼(呼び出し)をして調査する
いずれにしても、税務署の目が自分に向いていると感じられるわけです。
「簡易な接触」の半分以上で違反が見つかる
「簡易な接触」は、どれぐらい効果があるものでしょうか。
2017年7月から2018年6月の1年間で行なわれた「簡易な接触」は、11,198件でした。
そのうち、申告漏れなどを表す「非違(ひい)」は6,995件でした。
【お詫びと訂正】初出時に非違の数字を誤っておりました。お詫びして訂正させていただきます。
非違の割合は「62.5%」になります。
つまり、かなり高い確率で、申告漏れなどを含んでいます。
「簡易な接触」の結果、申告漏れとされ、相続税が課せられた金額は「517億円」もありました。
解決しない場合は「実地調査」が待っている
「簡易な接触」が、きわめて有効な手段であることが分かりました。
「簡易な接触」の効果を支えているのは、後に控えている「相続税の実地調査」と「重加算税」への恐怖です。
同じ1年間で、12,546件の「相続税の実地調査」が行なわれ、10,521件の非違が見つかりました。
非違の割合は「83.7%」という高さです。
申告漏れの金額は「3,523億円」もありました。
さらに、悪質な違反が見つかった場合、「重加算税」が課せられる可能性があります。
今年度は、全体の14.3%に、重加算税が課せられました。
重加算税の税率は条件によって変わりますが35%~50%もあります。
本来の相続税とは別に、これだけの重税を課されるのですから、たまったものではありません。
こんなに恐ろしいものが控えているのですから、「簡易な接触」の段階で、正しく申告してしまうのも無理はありません。
迷ったときは、先に相談を
税務署から、問い合わせを受けたら、正しく申告をすることが基本です。
相続税の申告期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」です。
申告の作業は、それなりに手間がかかります。
申告が必要かどうか迷っている場合は、税理士や税務署に相談して、早めに行動を取りましょう。
面倒かもしれませんが、お呼び出しや調査のことを考えれば、片付けてしまう方が楽なのは間違いありません。