実は市区町村ごとに違う国保の保険料。家族の人数と収入で比較しよう
保険料の計算方法が変わりつつある
フリーランスや自営業の人が加入している「国民健康保険」の保険料は、市区町村単位で決められています。
過去の経緯もあって、その方法は3通りに分かれていました。
方式が違うと比較もできないので、自分が住んでいる街の健康保険料が、隣の市と比べて高いのか安いのかを調べることも大変だったのです。
しかし、2018年4月から、この状況が変わりはじめました。
きっかけは、国民健康保険の財政の責任が、市区町村から都道府県へ移されたことです。
都道府県は、市区町村に対して、家族の「人数」と「収入」による保険料の基準を示します。
これまで、都道府県が示す方法とは、異なった方法で計算していた市区町村も、都道府県と同じ方法に合わせ始めました。
つまり、その市区町村の保険料が高いか安いかが、家族の「人数」と「収入」だけで判断できるようになりつつあるのです。
計算方法が大きく変わった「町田市」
ここからは、東京都町田市を例にして、どのように保険料の計算方法が変わったのかを見てみましょう。
「町田市」は、都内の自治体としては珍しく、国民健康保険料の計算方法に【平等割】がありました。
世帯の収入をもとにした【所得割】と、世帯の人数をもとにした【均等割】のほかに、一世帯あたりいくらで課金する【平等割】があったのです。
この3つの組み合わせで、保険料を計算していました。これを「三方式」と言います。
2017年度の計算方法は、次のようになっていました。
- 【平等割】1世帯当り15,000円
- 【均等割】1人当り43,000円
- 【所得割】収入に対する税率が8.48%
しかし、2018年度からは、東京都の方式に合わせて【平等割】を止めて、【所得割】と【均等割】で計算するようになりました。これを「二方式」と呼びます。
そして、2018年度からは、次のようになりました。
- 【均等割】1人当り52,200円(プラス9,200円)
- 【所得割】収入に対する税率が8.51%(プラス0.03%)
町田市では、【平等割】が無くなった分、【所得割】と【均等割】を値上げして、必要な収益を確保したのです。
周囲の自治体と保険料が比較しやすくなった
健康保険料の計算方法が、「二方式」に変わったことで、町田市の保険料は、他の市区町村と比べやすくなりました。
これまで、「町田市」の隣にある「多摩市」と、どちらの保険料が安いのか比べるのは面倒でした。
しかし、2018年度からは簡単です。
多摩市の保険料は、次のようになっています。
- 【均等割】1人当り47,700円
- 【所得割】収入に対する税率が8.18%
【均等割】も【所得割】も町田市より安いのですから、家族構成に関わらず、多摩市の方が保険料が安いことが分かります。
実は、「多摩市」だけではなく、他にも保険料が安い自治体はたくさんあります。計算方法の違いで気が付きにくかった、健康保険料の価格差が明らかになったのです。
保険料の変化に気をつけよう
町田市は、「三方式」から「二方式」に変わりました。
しかし、都内には、「三方式」どころか、「四方式」の自治体も残っています。
つまり、【所得割】と【均等割】と【平等割】に、さらに【資産割】という固定資産税を基にして計算する方法が組み合わさっているのです。
固定資産税がかかる家や土地を所有している人と、借家住まいの人では、大きな差が出る計算方法なのです。
しかし、これも「三宅村(三宅島)」のように、「二方式」へと変える例が出てきています。
おそらく、数年のうちに、四方式や三方式の自治体は、二方式に統一されるでしょう。
保険料の計算方法が大きく変われば、自分が払う保険料も変わります。
計算方法が変わらなくても、これまで抑えていた保険料を、この機会に値上げする市区町村も出てくるでしょう。
むこう何年かは、年度が変わるときの国民健康保険料の変化に注意してください。
例えば、銀行口座からの引き下ろし金額が大きく変わっていて、生活費などに影響が出る可能性もあります。
特に、「三方式」が残っている「あきる野市」や、「四方式」が多い伊豆/小笠原諸島の自治体に住んでいる人は、大きく変わる可能性が高いので注意が必要です。
最終的には都道府県内は同じ保険料に
この記事では、東京都の例を挙げましたが、国民健康保険に変動が起きているのは全国共通です。
国民健康保険の財政が都道府県単位になったことで、最終的には、同じ県内であれば、同じ保険料になります。
ただし、それには、ある程度の時間が必要です。
値上げをするにしても、値下げをするにしても、衝撃を与えないように、少しずつ変えていく必要があるからです。
国民健康保険に加入されている人は、自分が住んでいるところの保険料が、どのような計算方法で計算されているかを、まず確認してみましょう。
こちらの厚労省の資料で、全国の市区町村の計算方法が確認できます。
そして、周囲の自治体と比べて、高いのか、安いのか、比べてみてください。
周囲と比較しやすくなったことで、住む街の選択が変わってくるかもしれません。