日本の年金運用で14兆円の巨大赤字

[2019/2/2 00:00]

3カ月間で14兆円の損失

年金の運用を行なっている「年金積立金管理運用 独立行政法人(GPIF)」が、2018年第3四半期の運用で、14兆8,039億円の損失を出したと発表しました。

GPIFは、国民年金や厚生年金の過去の積み立て分である「年金積立金」の運用を行なっている団体です。

GPIFは、過去にも運用による損失を出していますが、四半期単位では、今回が最大級の損失です。

GPIFは、現在「150兆6,630億円」の資産を運用しているので、その1割近くを失ったことになります。

出典:GPIF

国内外の株式の下落が影響

GPIFでは、髙橋則広 理事長のコメントとして、次のように損失の理由を説明しています。


2018年度第3四半期(10月~12月)は、世界経済と企業収益の先行きに対する懸念等から、投資家のリスク回避姿勢が高まり、国内外の株式市場が大幅に下落しました。

一方で、安全資産とされた米国債や日本円へ資金を振り向ける動きが強まり、金利は米国を中心に低下し、為替は主要通貨に対して大幅な円高となりました。

 このような結果、10月から12月までの運用資産全体の運用実績はマイナス9.06%となり、市場運用を開始した2001年度からの累積収益額は56兆6,745億円(年率プラス2.73%)となりました。

つまり、国内外の株式市場の下落が大きく影響したとしています。

国内債券以外は全部負け

実際に、どの部門で損失が出たのかを検証しましょう。

GPIFでは、運用資産を「国内株式」「外国株式」「国内債券」「外国債券」の4つに分けて運用しています。

どの資産に投資するのかは、「基本ポートフォリオ(組み合わせ)」で定められており、ほぼその割合に沿って投資されています。

出典:GPIF

2018年第3四半期の投資の状況を見てみましょう。

株式投資では、国内外とも大きな損失を出しています。

出典:GPIF

債権投資では、国内は利益が出ていますが、海外は円高の影響で損失が出ています。

出典:GPIF

最終的には、投資先別の状況は次のようになりました。

  • 国内株式 7兆6,556億円のマイナス
  • 海外株式 6兆8,582億円のマイナス
  • 国内債券 4,242億円のプラス
  • 外国債券 7,182億円のマイナス

国内債券投資のみが黒字で、ほかは全部負けの1勝3敗となったのです。

11兆円の損失で年金は破綻するか

今回の11兆円の損失で、日本の年金制度は破綻してしまうのでしょうか。

GPIFが運用している年金積立金は150兆6,630億円ですから、11兆円の損失は、その9%にあたります。

また、GPIFが運用を始めてからの累積の収益は「56兆7千億円」ですから、今回の損失はその範囲です。

「今回の損失は、過去の利益の範囲で済んで、元本は丸々残っている」状態です。

かなり痛いダメージではありますが、これによって年金制度が破綻するということは考えられません。

GPIFの赤字の意味

誤解してはいけないのは、今回のGPIFの損失は、「天下りした役人が向こう見ずな投資をして無駄遣いをした」というような話ではありません。

分散投資などを始めとする、GPIFの投資のルールは、一般の市場で投資を勧める人が口にする基本です。

GPIFのように、きちんとした体制のもとに管理されたルールのもとに投資をしていても、今回のように市場の状況が悪ければ勝てません。

GPIFに罪が無いというわけではありませんが、リスクを負った投資をしている限りは、可能性としてありうる事態なのです。

GPIFの場合、運良く、ここまで勝っていたことによって蓄積がありますから、大きなダメージにはなりませんでした。

しかし、この状態が続くような場合、今後の投資方針などに影響が出るでしょう。

さらに状況が悪化すれば、年金をリスクのある資産で運用すること自体が問われるでしょう。

「必ず勝てる投資はない」

最後に、今回のGPIFの損失から、私達が学べるものがあるでしょうか。

今回の損失から、次のような教訓が得られます。

  • 「株式」などのリスクのある投資では、勝ち続けることは難しい。つまり「必ず勝てる投資はない」。
  • 比較的リスクが少ない「債券投資」でも、外国債券は為替リスクにより赤字になることがある。
  • 4つの投資先に分散投資していても安全とは限らない。

3つの教訓は、老後の資金などを目的として、投資を勧誘されたときに覚えておきましょう。

[シニアガイド編集部]