老人福祉事業の倒産が3年連続の高水準。介護サービスが8割を占める

[2019/2/13 00:00]

依然として多い倒産件数

企業情報調査会社の帝国データバンクが「老人福祉事業者の倒産動向調査」の結果を公開しています。

2018年の老人福祉事業者の倒産は83件で、過去2年に続いて高い水準となっています。

出典:データを基に編集部が作成

帝国データバンクでは、老人福祉事業者の倒産が多いことについて、次のようにコメントしています。


 競争激化で小規模事業者を中心に2015年の介護報酬改定(引き下げ改定)が影響し、2016年以降の倒産件数が急増しているが、2018年の引き上げ改定が来年以降の件数にどのような影響を及ぼすのか注目される。

 一方で、さらに深刻化していく人手不足の問題を各事業者がどのようにクリアしていくか、また、利用者の選別意識が高まるなか、知名度、信用、実績をいかに築いて安定した経営を続けていけるかがポイントとなる。

介護サービスが8割を占める

ここからは、倒産した老人福祉事業者のうち、詳細が分かっている78件について状況を見ていきましょう。

どんな法人が倒産しているのか分かれば、自分や家族が老人福祉事業者を選択する際の参考となります。

倒産した法人の業態を見ると、居宅介護などの「訪問介護」と、デイサービスなどの「通所介護」の2つで、8割以上を占めています。

「訪問介護」と「通所介護」は初期投資の負担が少なく起業しやすいため、資本面などが弱いのが影響しています。

出典:データを基に編集部が作成

NPO法人や社団法人も倒産する

倒産した法人の法人格を見ると、一般的な「株式会社」が多く、6割以上を占めています。

ただし、「特定非営利活動法人(NPO法人)」「一般社団法人」「社会福祉法人」など、一般には倒産するイメージを持ちにくい法人格もあります。

法人格の種類に関わらず、倒産する場合は倒産するということは覚えておきましょう。

出典:データを基に編集部が作成

再建できる法人はほとんど無い

倒産の形をみると、9割以上が「破産」を選択しています。

「民事再生法」によって再建される法人は、ほとんどありません。

「破産」や「特別清算」は、その法人を清算する形で処理されます。

そのため、利用者はサービスを継続して利用することができません。

倒産した場合は、他の法人を探すことになると思った方が良いでしょう。

出典:データを基に編集部が作成

設立10年未満の法人が7割以上

倒産した法人が、設立されてから倒産に至るまでの期間は、「5~10年」が多くなっています。

そして、設立から10年未満の法人が、倒産した法人の7割以上を占めています。

老人福祉事業者は、2000年の介護保険制度導入以降に設立された法人が多く、他の業界に比べても業歴が短い法人が多くなっています。

出典:データを基に編集部が作成

倒産理由は「販売不振」が多い

老人福祉事業者が倒産する理由で一番多いのは「販売不振」でした。

この業種の「販売不振」とは、計画していた利用者が集められず、資金繰りが苦しくなる状況を指します。

資金繰りに追われて、介護保険報酬の不正請求や、窃盗事件に関わった例もありました。

出典:データを基に編集部が作成

施設に入居する前に経営状況を確認しよう

利用していた老人福祉事業者が、倒産した場合、それが介護サービスであれば、代わりの業者も見つけやすく影響は大きくありません。

ただし、老人ホーム、高齢者専用住宅、グループホームなどに入居する場合は、保証金や供託金として多額の金銭を預ける場合があります。

もし、入居した施設が倒産すると、預けたお金が戻らずに、自分の生活の拠点を失ってしまう可能性があります。

施設などに入居するときは、経営する法人のホームページで「財務諸表」や「事業報告書」を見て、経営状況を確認しましょう。

[シニアガイド編集部]