60歳を過ぎて給与が下がったら、雇用保険の高齢者給付金を貰おう

[2019/3/13 00:00]

雇用保険にある2つの高齢者対策

60歳が近くなった会社員が考えておかなければならないのは、定年後の働き方です。

多くの会社では、60歳の定年後は、65歳まで「再雇用制度」が用意されていて、働くことができます。

また、定年を期に、別の職種や職場へ転職したいという人もいるでしょう。

いずれにしても、現役時代のような水準の給与を確保することは難しいでしょう。

そういうときに知っておきたいのが、雇用保険から出る「高年齢雇用」に関係する2つの給付金(手当)です。

これらの給付金を使うと、60歳以降に、減ってしまった給与を、何割か補うことができます。

この記事では、2つの給付金について、知らないと困る基本的な事柄に絞って紹介しましょう。

継続して働いているときに貰える手当

まず、「高年齢雇用継続基本給付金」です。

これは“雇用継続”とある通り、60歳を過ぎても同じ会社に勤めていて、給与が減ってしまった人を対象としています。

例として、60歳を期に、正社員から嘱託に変わったAさんに登場してもらいましょう。

Aさんは、30代に今の会社に転職し、60歳まで正社員として働いてきました。

60歳時点の賃金(月給)は「30万円」でしたが、現在は「18万円」に下がりました。

Aさんの例を図にすると、次のようになります。

出典:ハローワーク

会社から「高年齢雇用継続基本給付金」の申請をハローワークにすると言われ、必要な書類を提出すると、あとは会社が手続きをしてくれました。

しばらく経つと、Aさんの銀行口座に、1カ月分として「2万7千円」が振り込まれていました。

下の図が、届け出の流れです。赤枠の部分は、本人に関係する部分です。

出典:ハローワーク

大切な項目をまとめておきましょう。

  • 60歳以降65歳まで、継続雇用されている期間中は支給される
  • 雇用保険に5年以上入っていた実績が必要
  • 現在も雇用保険に加入している
  • 手続きは基本的に会社が行なうが、入金は本人の口座に入る
  • 以前の75%未満まで、賃金が下がっていないと対象にならない
  • 賃金の下がり方によって、貰える金額が変わる

支給金額を決めるルールについては、ハローワークのサイトを参照してください。

小さな会社の場合、総務の担当者が、この制度を把握していない場合があります。会社を担当している社会保険労務士(社労士)さんに、確認してもらってください。

支給が始まっても、会社の負担が増えたりはしないので、使えることが分かれば対応してもらえるはずです。

転職したときに貰える手当

もう一つ、「高年齢再就職給付金」を紹介しましょう。

こちらは“再就職”とあるように、60歳以降に転職した人が対象となります。

こんどは、転職したばかりのBさんに登場してもらいましょう。

Bさんは、65歳定年制の会社で働いていました。

しかし、60歳を過ぎた頃から、以前の部下が上司となり、仕事の内容も管理職から現場に変わったこともあって、職場が楽しくありません。

思い切って退職し、雇用保険の基本手当(失業手当)をもらいながら就職活動して、「再就職」に成功しました。

Bさんは、まだ62歳なので、65歳までの3年間は頑張って働くつもりです。

以前の会社に比べて、給与は下がりましたが、「高年齢再就職給付金」の手続きをしてくれたので、少しはカバーできます。

Bさんの例を図にすると、次のようになります。

出典:ハローワーク

「高年齢再就職給付金」について、届け出の流れは「高年齢雇用継続基本給付金」と同じです。

出典:ハローワーク

申し込みの条件なども、共通の部分が多くなっています。

  • 雇用保険に5年以上入っていた実績が必要
  • 現在も雇用保険に加入している
  • 手続きは基本的に会社が行なうが、入金は本人の口座に入る
  • 以前の75%未満まで、賃金が下がっていないと対象にならない
  • 賃金の下がり方によって、貰える金額が変わる

しかし、「高年齢再就職給付金」には次の特徴があります。

  • 雇用保険の基本手当の支給残が100日以上必要
  • 支給される期間は、1年ないし2年。支給残が200日以上あると2年になる
  • 期間中でも65歳になると支給が止まる
  • 「再就職手当」とどちらかを選ばなければならない

支給期間が、最長で2年に制限されているのが、最大の相違点です。

支給期間は、雇用保険の基本手当の支給残によって変わります。頑張って早く再就職できると、長く貰えます。

年金の受け取り方も含めて働き方を考える

雇用保険から出る「高年齢雇用」に関係する2つの給付金について紹介しましたが、60歳以上65歳未満で働く場合は、「年金」の問題も忘れてはいけません。

つまり、「在職老齢年金」によって支給が制限されるので、年金を受け取るべきかどうかも考えなければなりません。収入が十分にあるならば、「年金」を繰り下げるという選択肢もあるでしょう。

この場合の相談先は、年金事務所になります。

60歳になる前に、「給与」「雇用保険の手当」「年金」の3つの収入のバランスを考えながら、自分の働き方を考えておきましょう。

[シニアガイド編集部]