資産家の相続では、「養子」がいる割合が50%を超える
過去4年間の相続の記録
相続専門の税理士法人レガシィが、「相続事例の分析レポート」を公開しています。
このレポートは、2015年から2018年の4年間に、レガシィが扱った相続事例を分析したものです。
公開されているデータは限られていますが、特に資産家の相続について面白いデータとなっています。
相続財産が5億円以上を「資産家」に分類
このレポートでは、資産家を「課税価格が5億円以上」と定義しています。
ここで言う課税価格は、相続税の対象となる相続財産の総額です。
つまり、家や土地などの不動産、現金、株式などの財産の総額が5億円を超える人を「資産家」としています。
ここからは、全体の平均と資産家のデータを比較しながら見ていきましょう。
資産家の方が少し長生き
相続財産を所有していた「被相続人」、つまり亡くなった方の年齢は、平均が「83歳」、資産家が「85歳」でした。
資産家の方が、2歳ほど寿命が長いようです。
資産家は相続人が多い
相続財産を受け取る「相続人」の数は、平均が「2.72人」、資産家が「3.81人」でした。
資産家の方が、財産を相続する人の数が多いのです。
資産家の相続人には養子が多い
「相続人の中に養子が含まれる割合」は、平均が「8%」ですが、資産家は「52%」で大きな差があります。
半分以上の資産家は、「養子縁組」をしていることになります。
これについてレガシィでは「課税価格が高額になっていることから、養子縁組による相続税対策を反映している」と分析しています。
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という式で計算します。
つまり、相続人の数が増えれば増えるほど、基礎控除額が大きくなって、相続税が安くなります。
資産家は相続の対象となる財産が大きいので、少しでも基礎控除額が大きくなるように手を打っているわけです。
資産家以外でも「本家相続」が多い
法律上の規定では、子供同士の財産の取り分は平等です。
しかし、実際には「本家相続」(ほんけそうぞく)と言って、長男が家を引続ぐ形を取ることが多いとされています。
例えば、農家の土地や、家業の会社など、分割すると事業が承継できない場合は「本家相続」が多くなります。
長男は財産を相続する代わりに、残った親の介護や、墓地の管理、冠婚葬祭の取り仕切りなどの負担を引き受けます。
このレポートでも、全体の平均では「65%」、資産家では「70%」が本家相続となっています。
「本家相続」の場合、長男に相続させるために、他の兄弟には一定の現金などを分かちます。これを「ハンコ代」と呼ぶことがあります。
また、「本家相続」に対して、子供に均等に財産を相続する場合は「均分相続」と呼びます。
資産家でも「遺言書」を残す人は少ない
最後に、「遺言書」を残している割合を見てみましょう。
遺言書を残している人は、平均では「10%」、資産家でも「19%」に留まっています。
遺言書を残している人は少数派と言えるでしょう。
これに対してレガシィでは「遺言書作成が少ないのは、子供に差をつけることが忍びないという親の気持ちを反映している」と分析しています。
しかし、「本家相続」が多いなど、法律による規定と、実態が異なっていることを考えると、子供同士で同意ができず、相続でもめてしまうのではないかと心配になります。
分割できないような財産を残すことが分かっている場合は、「遺言書」の作成など、スムーズに相続が終わるような対策が必要でしょう。