「65歳以上の在職老齢年金が始まる額が47万円に引き上げ」って、どういう意味なのか

[2019/4/4 06:00]

少しだけ緩くなった「在職老齢年金」

2019年4月1日から、「65歳以上の在職老齢年金」について、支給停止調整変更額が引き上げられました。

これまで、「46万円」だったのが、「47万円」に引き上げられたのです。

しかし、このニュースの意味が分かるためには、「在職老齢年金」という制度の知識が必要となります。

この記事では、「在職老齢年金」の仕組みと、どうしたらそれを避けておトクに年金を受け取れるかを、できるだけ簡単に紹介します。

会社に勤めながら年金をもらうと、減額される制度

「在職老齢年金」は複雑な制度ですが、ここでは、次のことだけ覚えてください。

  • 会社に勤めながら年金を受け取っていると、収入に応じて年金の金額が減らされる。これを「在職老齢年金」と言う。
  • 在職老齢年金の対象になるのは「厚生年金保険」の加入者に限られる。つまり、会社などに雇われている人が対象の制度。
  • 在職老齢年金の制度は「60代前半」と「65歳以上」では制度が違う。「60代前半」の方が、ずっと厳しい。
  • 収入と年金の合計が一定の金額を超えると、年金の減額が始まる。この金額を「支給停止調整額」という。

というわけで、支給されている年金の金額と給料の合計が基準の金額を越えると、年金が減額され、さらには支給停止に至ります。

4月1日からは、「65歳以上」の基準が「47万円」と1万円引き上げられたのです。

ここからは、「65歳以上の在職老齢年金」に限ってお話を進めます。

正社員ならば無視できない金額

「月に47万円も収入があるなんて、自分には関係ないよ」と思うかもしれません。

しかし、会社からの収入だけではなく、「会社からの収入と年金の合計」が「47万円」なので、思ったほど遠い数字ではありません。

例えば、現役時代にずっと厚生年金に加入していて、それなりの収入があった人は、年金の金額が20万円ある人は珍しくありません。

すると、47万円-20万円ですから、会社からの収入の枠は「27万円」なのです。

しかも、会社からの収入には「毎月の給与」だけではなく、「ボーナス(賞与)」も含まれます。

1年間のボーナスの合計金額を12で割った数字が、給与にプラスされます。

例えば、夏と冬に、年2回ボーナスが24万円ずつあったとすれば、年に48万円ですから、その12分の1の4万円が月々の収入とされます。

さきほどのように、年金が20万円あったとすれば、47万円から年金の20万円とボーナス分の4万円を引くと、23万円しか残りません。

これが毎月の給与に対する制限になりますから、意外と厳しいことが分かります。

65歳以上も正社員でバリバリ働くつもりの人にとっては、無視できない制度なのです。

「47万円を越えた額の半分」が減額される

では、年金と会社からの収入の合計が「47万円」を越えてしまった場合は、年金はどれぐらい減らされるのでしょう。

この場合は、「47万円を超えた金額の半額だけ減る」と覚えましょう。

例えば、年金が月に20万円、会社からの収入が30万円で、合計が50万円としましょう。

そうすると、50万円と47万円の差が3万円ですから、その半額の「1万5千円」減額されます。

つまり、年金額が18万5千円になって、収入の総額が50万円から「48万5千円」に下がります。

在職老齢年金への2つの対策

では、「65歳以上の在職老齢年金」には、どんな対策があるのでしょうか。

まず、正社員や契約社員のままで、在職老齢年金で減額されない範囲内で、生活とのバランスを取りながら働くという方法があります。

しかし、根本的な対策は「厚生年金保険」から抜けることです。

厚生年金を抜けてしまえば、在職老齢年金のことを考える必要はありません。

例えば、勤めている会社が従業員規模500人以下であれば、身分をアルバイトやパートにして、一般社員の勤務時間および労働日数の4分の3未満に止めれば厚生年金への加入義務がなくなります。

逆に、どうしても働く時間を減らしたくないならば、会社から雇用されることを止めて、個人事業者として「業務委託契約」で仕事をするという手もあります。

どちらにしても、「社員」という身分を失ってしまうわけですから、リスクがあります。「社員」という身分は、普通の人が想像している以上に保護された存在なのです。

自分と会社との関係、自分と仕事の関係、仕事に割きたい時間など、さまざまな要素が絡むため、正解は、その人ごとに異なるでしょう。簡単に決められることではありません。

あなたが、65歳になって、会社員として一定以上の収入が見込まれるときは、よく考えて決断してください。

家族、会社の総務部門、会社と契約している社会保険労務士(社労士)との相談も有効です。

[シニアガイド編集部]