65歳以上の介護保険料の一部が4月から安くなる
4月から、一部の介護保険料が引き下げ
2019年4月1日から、介護保険料の一部が引き下げられました。
対象となるのは「第1号被保険者」と呼ばれる、65歳以上の人の一部です。
「第2号被保険者」と呼ばれる40歳~65歳未満の人は対象ではありません。
介護保険料の計算の仕組みは複雑です。最初に制度の基本を紹介してから、今回の引き下げの内容を見ていきましょう。
「基準額」×「倍率」で決まる介護保険料
「第1号被保険者」の介護保険料の決め方は、全国共通です。
- 市区町村ごとに、介護保険の状況に応じた「基準額」が決まる
- 被保険者の収入に応じた「段階」に当てはめ、基準額の何倍になるかを決める
つまり、その人の介護保険料は「基準額」に「収入に応じた倍率」を掛けて決まります。
地域によって差がある「基準額」
「基準額」は、介護保険を管理している市区町村ごとに異なっています。
例えば、東京都の基準額の平均は、月額「5,911円」です。
しかし、一番安い御蔵島村では「4,800円」、一番高い青ヶ島村では「8,700円」で、市区町村によって1.8倍も差があります。
東京特別区(23区)に限っても、一番安い千代田区は「5,300円」、一番高い足立区は「6,580円」で、1.2倍の差があります。
市区町村ごとの基準額の差は意外に大きいのです。
国では収入に応じて9段階の倍率が決められている
「基準額」が決まったら、その人の収入に応じて掛ける「倍率」を決めます。
厚労省では、収入に応じて9つの段階と、それぞれの倍率を決めています。
各段階ごとの倍率は次の通りです。
- 第1段階 0.45倍
- 第2段階 0.75倍
- 第3段階 0.75倍
- 第4段階 0.95倍
- 第5段階 1.00倍
- 第6段階 1.20倍
- 第7段階 1.30倍
- 第8段階 1.50倍
- 第9段階 1.70倍
つまり、介護保険料は、基準額の0.45倍から1.7倍の範囲で決まります。
しかし、この「段階」は、市区町村ごとに、かなり異なります。
介護保険は、基本のルールは共通ですが、市区町村に裁量の余地があり、地域ごとの差が大きいのです。
例えば、さきほどの「足立区」では、収入の段階を9段階ではなく「14段階」に設定しています。
どうして段階を増やすかというと、収入に関する条件を増やして、介護保険料の幅を広げるためです。
足立区では、第1段階の「0.45倍」から、第14段階の「2.7倍」まで、国の標準よりも幅広く設定されています。
これは、低所得者の負担軽減や高所得者の所得に応じた保険料負担を求めるためです。
「基準額」が同じ地域に住んでいても、収入に応じた「段階」で決まる「倍率」によって、介護保険料の金額には大きな差があるのです。
収入が少ない段階の倍率を引き下げ
ここまで、65歳以上の「第1号被保険者」の介護保険料の決め方を紹介しました。
では、今年度からは何が変わったのでしょうか。
厚労省は、9つある段階のうち、収入が少ない方から3つの段階について倍率を下げたのです。
- 第1段階 0.45倍→0.375倍
- 第2段階 0.75倍→0.625倍
- 第3段階 0.75倍→0.725倍
今回の介護保険料の軽減措置が、消費税の引き上げによって生活が苦しくなる低所得層を対象にしたものであることが分かります。
なお、来年度は1年間を通して消費税が10%になるので、さらに倍率を下げる予定になっています。
「住民税非課税」が最低条件
第1段階から第3段階になるためには、どんな「条件」があるのでしょうか。
第1段階から見ていきましょう。
第1段階
- 生活保護受給者、世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者
- 世帯全員が市町村民税非課税、かつ本人の年金収入等が80万円以下
第2段階
- 世帯全員が市町村民税非課税、かつ本人の年金収入等が80万円を超え120万円以下
第3段階
- 世帯全員が市町村民税非課税、かつ本人の年金収入等が120万円を超える
つまり、基準がゆるい「第3段階」でも、家族全員の住民税が非課税でなければなりません。
これは、かなり高いハードルと言って良いでしょう。
自分の住む街の「段階」を見ておこう
今回の、介護保険料の軽減は低所得層が対象なので、自分や家族が該当しない場合もあるでしょう。
しかし、良い機会ですから、一度、「自分が住んでいる市区町村の名前」と「介護保険料」で検索してみることをおすすめします。
自分住んでいる市区町村の介護保険料の「段階」が分かれば、介護保険料を下げるためのヒントが見つかる可能性があります
例えば来年度に向けて、今いる段階から、一つ下の段階へ移れる可能性が見つかるかもしれません。
「65歳以上」の第1号被保険者の介護保険料は、年金から天引きされるのが基本です。
もし、少しでも保険料を安くすることができるならば、手取りの金額が増えます。
それだけ生活費が増えるのですから、介護保険料を安くするメリットは大きいのです。