老後の資金を考えるための、3つのライフステージ
老後への不安と戦う方法
老後の生活資金に対して不安を感じたときに、具体的にはどんなことを考えて行動すればよいのでしょうか。
いろいろな考え方はありますが、この記事では「人生を3つの期間に分けて、老後の資金を考える」方法を紹介します。
この方法は、金融庁が準備中の「高齢社会における資産形成・管理」という報告書に掲載されているものをベースにしています。
人生を3つのステージに分ける
この方法では、人生の資金計画を3つの期間に分けて考えます。
- 現役期(~50代)
- リタイヤ期前後(60代)
- 高齢期(70代以降)
全体の流れとしては、「現役期」に資産を作り、「リタイヤ期」に出る退職金で資産がピークを迎えます。
そして、「高齢期」は、それを取り崩しつつ生活していきます。
資産の量をグラフで見ると、「リタイヤ期」を頂上にして、富士山のような形になります。
各ステージの目的
3つのライフステージの目的は、それぞれはっきりしています。
- 現役期→資産の形成
- リタイヤ期前後→運用/取り崩しの計画
- 高齢期→資産の管理
基本的には、それぞれの時期は、その目的に集中します。
そして、3つのステージでは、それぞれ注意する点が異なります。
それぞれのステージについても、見ていきましょう。
長期投資をする「現役期」
「現役期」は、長期・積立・分散投資など、少額からでも資産形成の行動を起こす時期です。
iDeCoやつみたてNISAなど、長期を前提にした制度を利用して、少ししでも多く老後の資金を積み立てておくことが重要になります。
「現役期」は、60歳をめどにした長期的な積み立てだけを考えれば良いと割り切りましょう。
例えば、短期間に無理に資産を増やすための、イチかバチかの投機的な投資は必要ありません。
ましてや、ローンを抱えてしまう不動産投資のような無理な運用は必要ありません。
結婚、住宅購入、育児、介護などの課題が、次々にふりかかってくる多忙な時期ですから、余計な悩みのタネを抱え込まないように注意しましょう。
出揃った資産の使い方を決める「リタイヤ期」
「リタイヤ期」は、資産の目減りの防止や、計画的な資産の取り崩しに向けて行動する時期です。
現役時代に積み立てた老後資金や退職金などで、資産はピークを迎えます。
また、自分が受け取れる公的年金の金額などをも分かります。
つまり、これからの人生に、どれぐらいお金を使えるかということが、はっきりと分かる時期です。
そして、その資産を、次に「高齢期」にむけて、どう使っていくかを計画する時期です。
退職金の金額に目がくらんで無駄遣いをしたり、慣れない投資をして、資産を減らさないように注意する必要があります。
退職金は会社人生へのごほうびではなく、自分の将来のために必要なお金と認識しましょう。
自分の衰えに備える「高齢期」
「高齢期」は、資産の計画的な取り崩しを実行するとともに、認知・判断能力の低下や喪失に備えて行動する時期です。
手持ちの資産を、ゆっくりと取り崩していくわけですが、そのためには資産を傷つけないことが重要です。
投機的な投資や無駄遣いへの誘惑にも備えましょう。
また、認知症などになった場合でも、資産が維持されて、定期的な収入が確保されるように準備をしておく必要があります。
目的がはっきりすれば、やるべきことが見えてくる
自分の人生を、3つのステージに分けることによって、どんなメリットがるのでしょうか。
一つは、それぞれのステージの目的がはっきりするので、余計な迷いがなくなることです。
例えば、「現役期」である20代や30代からずっと公的年金と老後生活への不安を抱えながら生きていては、目の前の人生の問題に立ち向かえません。
まず、「60歳」を目安にして、手持ちの資産を積み立てるという目標を決め、有利な制度を選んで、毎月少しずつでも積み立てを始める方が、ずっと有効です。
老後資金が必要なのは60歳以降であって、いま! すぐ! ではないと分かるだけでも、無謀な投資などのワナにはまらなくなるでしょう。
「リタイヤ期」は、揃った資産の確認と、取り崩しの計画をする時期とわかっていれば、「退職金」がごほうびではなく、必要な資金の一部と認識できます。
そうすれば、無駄な使い方をする前に、考えることができるでしょう。
「資産管理期」では、すでにある資産を傷つけないようにするのが、なによりも大切です。
それが分かっていれば、一攫千金を狙うような無理な投資にお金をつぎ込んでしまうことが無くなるでしょう。
資産を取り崩して生活していくことに不安を感じるかもしれませんが、「自分が死ぬときには葬式代が残っていれば良い」と割り切って、使い切れるように計画を立てましょう。
自分が、人生のどのステージにいて、そのステージでは何が一番の目的なのかがはっきりすれば、やるべきことも自然に見えてくるでしょう。