臓器移植の希望者が多いのは「腎臓」、移植数が多いのは「角膜」
臓器移植の現状報告
厚労省が「臓器移植の実施状況等に関する報告書」というレポートを公開しました。
この報告書は、1997年に施行された臓器移植法に基づくものです。
臓器移植法の施行からの22年間に、臓器を提供された脳死者は588人でした。その方々の、ご冥福をお祈りいたします。
移植希望者が多いのは「腎臓」
臓器移植を希望する人は、それぞれの窓口となる機関に、移植を希望するという登録を行なっています。
基本的に、臓器の移植を希望する場合は、公益社団法人 日本臓器移植ネットワークが窓口となります。
また、「眼球(角膜)」については、全国の医療機関に設置されているアイバンクが窓口となります。
2019年3月末時点の、臓器別の登録者数を見てみましょう。
一番多いのは「腎臓」で1万人を超えています。
次に多いのが「眼球(角膜)」で、こちらも千人を超えています。
他の臓器では、「心臓」「肺」「肝臓」などの移植を希望する登録者が多くなっています。
移植数が多いのは「角膜」
実際に1年間に、どれぐらいの移植が行なわれているのでしょうか。
2018年4月から2019年3月の1年間の状況を見てみましょう。
一番多いのが「眼球(角膜)」で、移植数が千を超えています。
つまり、「眼球(角膜)」の移植は、条件が合う人が見つかれば、移植できる可能性が高いことが分かります。
なお、1,155件の手術のうち48件は、脳死された方からの移植です。
次に多いのは「腎臓」です。
しかし、「腎臓」の移植は1年間に192件しか行なわれていません。
「腎臓」の移植を希望する登録者数が1万人を超えていることを考えると、すぐに移植できる可能性は低いことが分かります。
なお、192件の手術のうち135件は、脳死された方からの移植です。
この2つ以外の、「心臓」「肺」「肝臓」「膵臓」「小腸」の移植については、すべて脳死された方からの移植です。
生着率が高い「心臓」の移植
移植された臓器は、すべてが定着して機能しつづけるわけではありません。
ここでは、手術から5年目の「生着率」を見てみましょう。
「生着率」とは、移植された臓器が、拒絶反応や機能不全に陥ることなく、体内で機能し続けている割合を示します。
「生着率」が一番高いのは「心臓」で、90%を超えています。
つまり、手術後5年経っても、移植された心臓の9割以上が正常に動いています。
次に高いのが「腎臓」と「肝臓」で、この2つは80%を超えています。
登録をするときは、どれぐらい待つかも考慮を
今回の報告書を見ると、臓器移植を希望する人に対して、実際の移植手術は、あまり多くないことがわかります。
特に「腎臓」については、移植を希望する登録者数に対して、移植数の割合が低くなっています。
また、「心臓」などの臓器は、すべて脳死された方からの移植となりますので、もともと移植数が多くありません。
臓器移植を希望する場合や、臓器の提供を考えるときには、これらの事情も考慮すると良いでしょう。