2040年の水道料金は、高いところと安いところで20倍違う!?

[2019/8/16 00:00]

2040年の水道料金を推計

新日本有限責任監査法人と水の安全保障戦略機構事務局が、将来の水道料金についての共同研究レポートを公開しています。

水道は、地域ごとに事業体があり、事業体単位で水道料金を決めています。

例えば、東京都では、東京都水道局という事業体が、都の大半の地域に水道を供給しています。

このレポートは、全国の事業体について、2040年の水道料金を推計したものです。

その結果、次のような結論を得ています。

  • 2040年までに、約90%の事業体で水道料金が値上げされる可能性がある
  • 2015年の水道料金と比較した値上げ率は全体平均で「36%」になる

ただし、2040年までの状況は、地域によって異なります。それを反映して、水道料金の値上げ幅にも地域差があります。

どんな地域が値上げ幅が大きく、高い水道料金になっているのかを中心に、レポートの内容を紹介しましょう。

2015年の地域差は「9.1倍」

まず、このレポートの起点となっている2015年の時点で、各地の水道料金には、どれぐらいの価格差があるのでしょうか。

一般的な家庭の月間使用量である「20立方m」を基準にして、水道料金を比較してみましょう。

2015年の全国平均は「3,187円」です。

全国で一番安いのは長野県 下諏訪町で「750円」です。

一番高いのは、北海道 夕張市で「6,841円」です。

つまり、水道料金の価格差は「9.1倍」あります。

2040年には「19.6倍」に拡大

では、2040年には、水道料金はどう変わるのでしょう。

2040年の水道料金の全国平均は「4,358円」になります。

2015年に比べると、36%値上げされています。

一番安いのは、静岡県 長泉町で「1,130円」です。

一番高いのは、福岡県 みやこ町で「22,239円」です。

水道料金の価格差は「19.6倍」と、2015年の倍以上に広がります。

人口や人口密度の低下が、水道料金に影響

水道料金の値上げ幅が大きいのは、どんな地域でしょう。

レポートでは3つの特徴を挙げています。

  • 給水人口が少ないほど、値上げ幅が大きくなる
  • 人口密度が低いほど、値上げ幅が大きくなる
  • 値上げ幅が大きい事業体は、北海道、東北、北陸地方に多い

つまり、2040年までに人口が減る地域ほど、水道料金が高くなりやすいのです。

2040年の水道料金の推計値が一番高かった「みやこ町」を例に見てみましょう。

みやこ町の総人口は、2040年までに32.8%も減少するとされています。

そのため、水道料金が上がりやすく、2015年の「4,370円」から、2040年の「22,239円」へと、5倍以上の値上がりが予想されています。

みやこ町は、推計値だけでなく、値上げ幅も全国で最大です。

人口の減少が、水道料金に影響する典型的な例と言えるでしょう。

大都市圏は20~30%の値上がり

では、人口が減りにくいとされている大都市圏の水道料金は、どうなるのでしょうか。

2015年と2040年の水道料金を比べて見ましょう。

例えば、東京都の東京都水道局の場合、「2,430円」から「2,845円」へ、17%値上げが予想されています。

大阪府大阪市は、「2,592円」のままで、値上げがありません。

愛知県名古屋市は、「2,381円」から「3,039円」へ、28%の値上げです。

福岡県福岡市は、「2,775円」から「3,412円」へ、23%の値上げです。

つまり、大都市圏の中心地は、値上げがないか、あっても20~30%程度に留まる見込みです。

ただし、大都市の周辺であっても「大阪市河南町(かなんちょう)」や、「東京都八丈町」「東京都大島町」のように、3倍以上の値上げが予想されている地域もあります。

推計値どおりに値上げするとは限らないがリスクはある

今回の推計値は、人口の変化や、水道を運営する事業体の経営状況などをもとにして計算されています。

しかし、この推計値の通りに値上げされるかというと、そうとは限りません。

水道料金は重要な公共料金の一つであり、大きな値上げは住民が受け入れないからです。

例えば、経営上の理由で、水道料金を5倍に値上げをしなければならない状態であっても、「来月から水道料金を5倍に値上げします」と言えるものではありません。

例えば、地元の自治体が税金を使って、水道事業を援助する可能性は高いでしょう。

実際、すでに赤字となっている水道事業体でも、値上げを控えているところは少なくありません。

ただし、将来の水道料金の推計値が高かったり、値上げ幅が大きいということは、その地域の水道を維持することが難しいことを示しています。

もし、地元の自治体が水道料金を援助すれば、今度は自治体の予算が少なくなってしまいます。

また、他の水道事業者と合併するなど、なんらかの合理化が行なわれれば、水道料金が値上げされる可能性が高いでしょう。

つまり、すぐに水道料金が値上げされないにしても、いつか、どこかにしわ寄せが出るリスクがあるのです。

水道は、生活を支える重要なインフラです。

そのリスクを知っておくためにも、こちらのPDFファイルで、お住いの地域や、今後、引っ越す可能性がある地域の予測値をチェックすることをおすすめします。

[シニアガイド編集部]