60代前半で働いていないと、ほぼ半分の人が赤字になる
老後資金に関する調査
公益財団法人のダイヤ高齢社会研究財団が、「老後資金に関する調査」の結果を公開しています。
この記事では、2019年2月に行なわれた調査の中から、「60代」の家計に絞って紹介します。
働いていないと赤字になりやすい
60代で定年を経験している回答者を、「60代 前半/後半」「有職者/無職者」の4つのグループに分けて、毎月の家計収支を聞いています。
「60代前半」で「有職者」の場合、収入の方が多い“黒字”の人が42%で、収入と支出が同じ人が32%、支出のほうが多い“赤字”の人が26%です。
同じ「60代前半」でも、「無職者」の場合、ほぼ半分の人が赤字になります。
現在は、年金を受け取り始めるのが65歳からという人が多く、「60代前半」に働かないと赤字に直結してしまうのです。
「60代後半」になっても、この傾向は同じで、働いている人の赤字は17%なのに、働いていない人の赤字は35%になります。
「60代前半」よりも「60代後半」の方が、赤字の人が少ないのは、60代後半になると公的年金が出る人が多いからでしょう。
働いていないと「年金頼り」になりやすい
60代の人は、どれぐらい「年金」に頼って生活しているのでしょうか。
世帯の収入に占める年金の割合を見てみましょう。
「60代前半」で「有職者」の場合、「公的年金」と「企業年金/個人年金」が収入に占める割合は12%でした。
同じ年齢でも「無職者」の場合、これが53%まで大きくなります。
つまり、働いていないと、年金に頼る生活になってしまうのです。
「60代後半」になると、公的年金が出るようになるので「有職者」でも年金が収入に占める割合が増えます。
それでも、年金が収入に占める割合は、「有職者」が42%なのに対し、「無職者」は80%に達します。
60代後半で働いていない人は、収入の多くを年金だけに頼っていることが分かります。
公的年金だけで余裕のある生活を送るのは難しい
では、年金だけで生活はできるのでしょうか。
60代後半の人に「収入が公的年金のみと仮定した場合の暮らし向き」を聞いています。
面白いことに「有職者」と「無職者」で、回答にはあまり差がありません。
「(公的年金だけで)ゆとりをもって暮らせると思う」という人は数%しかいません。
そして、「ゆとりはないが日常生活はまかなえる」という人と「日常生活をまかなうのも難しい」という人が、ほぼ同じ割合になります。
公的年金だけで日常生活をまかなえるかどうかは、それぞれの生活費や、受け取れる年金の金額によって決まるのです。
結論として、次の2つのことが言えます。
- 公的年金だけで余裕のある生活を送るのは難しい
- 公的年金だけで日常生活をまかなえるかどうかは半分ぐらいの割合
年金は生活の柱だが、それ以外の収入も確保したい
老後の収入の多くを「公的年金」に頼るのは悪いことではありません。
公的年金は、期間の限定がなく受取人が死亡するまで支給されますから、生活の柱として頼りになる存在なのです。
しかし、収入が公的年金だけでは、余裕のある生活を送るのは難しいのも真実です。
生活を支えるのに、年金以外の収入があれば、それに越したことはありません。
余裕のある生活を送るためには、まず、自分が受け取れる年金の金額を「ねんきん定期便」などで確認しましょう。
国民年金に10年間しか加入していない人と、厚生年金に長期間加入した人では、受け取る年金に大差があります
その金額が、日常生活をまかなうには苦しい場合には、定年を過ぎても働き続けるか、定年前に金融資産を増やすことを検討してください。