外国でも老後は大変なのか、アメリカやスウェーデンと比べてみる
よその国でも、老後は不安なのか
2019年6月に起きた、金融庁による「老後の生活資金2,000万円不足問題」をきっかけに、老後への不安が問題となっています。
このような、老後への不安は、日本だけの問題なのでしょうか。
諸外国では、高齢者はどれぐらい年金をもらって、どのように暮らしているのでしょうか。
内閣府の調査データをもとにして、紹介します。
4カ国の高齢者千人への面接調査
今回使ったデータは、2015年に日本、ドイツ、アメリカ、スウェーデンの4カ国で、60歳以上の男女千人程度を対象に行なわれたものです。
単なるアンケートではなく、統計的な標本の抽出を行ない、面接によって回答を得た調査ですので、内容についての信頼度は高いと言えるでしょう。
1カ月の平均収入が少ない「日本」
まず、「1カ月の平均収入」から見てみましょう。
一番少ないのは日本で「21万7千円」です。
ドイツ、アメリカ、スウェーデンの順に多くなっていきます。
特にスウェーデンは、円換算で30万円を超えています。
現役時代の社会的な負担が大きい「高負担高福祉」の国とはいえ、なかなかうらやましい金額です。
日本では半分近い人が「20万円未満」で暮らしている
次に、「平均収入が20万円未満の人の割合」を見てみましょう。
日本では「45%」の人が、月収20万円未満です。
ドイツとアメリカは30%台ですが、スウェーデンは20%を切っています。
特にスウェーデンは低収入の人が少ないのです。
暮らしにくさを感じている人が多い「アメリカ」
しかし、平均収入が高いことが、暮らしやすさにつながるわけではありません。
「日々の暮らしに困ることがある」という割合は、アメリカが多くなっています。
アメリカは、日本やドイツよりも平均収入が高いのですが、暮らしに困っている人が多いのです。
スウェーデンは、暮らしに困っている人が少なく、他の国とは10%以上も差があります。
働くことが求められる「アメリカ」と「日本」
アメリカの暮らしにくさの原因の一つは「主な収入源」にありそうです。
4カ国とも、一番多い収入源は「公的年金」です。
しかし、アメリカでは、その割合は55%に留まっており、70%台の他の国とは差があります。
そして、「仕事」での収入の割合は日本と並んで一番多くなっています。
収入を年金に頼れず、収入を得るために働き続けなければならないという圧力が、生活の不安につながっている可能性があります。
「個人年金」と「投資」で老後に備える
最後に、「老後の生活費に対する備え」を見てみましょう。
これは「50代までに、老後の経済生活に備えて、特になにかしていたか」を聞いたものです。
日本とドイツは「預貯金」が中心です。
一方、アメリカとスウェーデンでは、「個人年金」を利用していた割合が高く、「投資」も活発です。
日本でも、税金の優遇を受けながら投資や貯金ができる個人年金制度として、「個人型確定拠出年金(iDeCo:イデコ)が整備されてきています。
このような制度を利用して、現役時代から自分のための年金を積み立てておくことが、老後への不安を和らげることにつながるでしょう。