高齢者の外出手段で一番多いのは「自分で運転する自動車」
高齢者の運転の実情を探る調査
高齢者が自動車を運転することについては賛否があります。
すでに、70歳以上の人が運転免許証を更新する場合は、年齢に応じて高齢者講習や認知機能試験などが課せられようになりました。
また、運転免許証を自主的に返納する人の数も、年々増えています。
その一方で、公共交通機関が少なく、自家用車に頼る機会が多い地域については「何歳になっても運転を止められない」という意見もあります。
この記事では、内閣府が行なった「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」の結果と、同時に公開された中央大学大学院戦略経営研究科の佐藤博樹教授による解説をもとに、高齢者の運転の実態を紹介します。
もととなった調査は、2018年11月に面接方式で行なわれ、全国の60歳以上の男女1,870人が回答しています。
外出する際に利用するのは「自分で運転する自動車」
「外出する際に利用する移動手段」として「自分で運転する自動車」を挙げた人は半数を超えます。
さらに、「家族などが運転する自動車」を含めると、普段の外出に自動車を使う人が多いことが分かります。
大都市の高齢者は運転する人が少ない
主な移動手段として「自分で運転する自動車」を挙げた人を都市の規模別に見てみましょう。
自分で運転する自動車に頼る人は、人口10万人未満の「小都市」と、郡部などの「町村」では7割近くに達しており、自動車への依存度の高さが分かります。
人口が10万人を超える「中都市」でも6割近くを占めており、自動車が重要な交通手段であることが、よく分かります。
一方、東京23区と政令指定都市などの「大都市」では、「自分で運転する自動車」に頼る人は4割もいません。
この理由として佐藤教授は、「公共交通機関の利用可能性の違い」を指摘しています。
つまり、大都市は自分で運転をしなくても、鉄道やバスなどの公共交通機関に頼って生活できるので、自動車の運転をする高齢者が少ないのです。
男性は80歳を過ぎても運転している
高齢者は、何歳ぐらいまで「自分で運転する自動車」に乗っているのでしょうか。
男性は70代になっても7割前後が、80代でも半分の人は運転を続けています。
女性は60代から減り始め、70代後半からはかなり少なくなります。
いずれにしても、かなりの高齢になっても運転を続けている人が多いことが分かります。
7割以上の人は、ほとんど毎日運転している
自動車への依存性の高さは、運転する頻度の高さからも分かります。
外出手段として「自分で運転する自動車」を挙げた人のうち、「ほとんど毎日利用する」は7割近くもいます。
これに「週2~3回は運転する」を合わせると9割を超えます。
それだけ自動車という交通機関への依存度が高いのです。
大都市に住むと毎日運転する必要性が下がる
外出手段として「自分で運転する自動車」を挙げた人のうち、「ほとんど毎日運転する」の比率を都市の規模別に見てみましょう。
「町村」と「小都市」では、7割以上の人が、ほとんど毎日運転しています。
この割合は、「中都市」になると6割台に、「大都市」になると5割に下がります。
住んでいる都市の規模が大きくなるほど、自動車以外の選択肢が増えてくるので、運転する機会が減るのでしょう。
生活が成り立つようにしないと運転免許証の自主返納が進まない
ここまでの調査結果を見ると、「大都市」では自動車以外の選択肢があり、自動車を運転する人や、毎日運転する人が少ないことが分かりました。
言い換えれば、運転免許証を自主返納しても、生活が成り立ちやすい条件となっています。
一方、「中都市」「小都市」「町村」では、自動車への依存度が高く、何歳になっても「自分が運転する自動車」が主な交通機関であることが分かりました。
つまり、運転免許証を自主返納してしまうと、生活が成り立ちにくい環境なのです。
大都市以外の地域で、高齢者に運転免許証の自主返納を呼びかけるときは、自動車が無くても生活が成り立つような施策とセットで呼びかける必要があることが、改めて分かる調査結果となりました。