介護生活も、最期を迎える場所も、本当は「自宅」にしたい

[2019/10/10 00:00]

高齢者の自宅に関する愛着を見る

政府が行なった「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」から、高齢者の自宅への愛着ぶりを紹介します。

たとえば、自分が最期を迎える場所として「自宅」を挙げる高齢者は「50%」もいます。

実際には「病院」で亡くなっている人が多いのですが、「自宅」はそれだけ思い入れがあり、安心できる場所なのです。

もととなった調査は、2018年11月に面接方式で行なわれ、全国の60歳以上の男女1,870人が回答しています。

体が弱っても「自宅」で暮らしたい

まず、「体が弱って介護などが必要になったときに住む場所」から見ていきましょう。

一番多い回答は、「現在の住居に、とくに改修などはせずそのまま住み続けたい」でした。

次に多いのは「現在の住宅を改修し住みやすくする」でした。

つまり、1位と2位は「自宅」で、両方を合わせると、50%を超えます。

「特別養護老人ホーム(特養)」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」「有料老人ホーム」などの施設に比べても、自宅を離れたくないという人が多いことがわかります。

出典:データを基に編集部が作成

人生の最期は「自宅」で迎えたい

次に、「完治が見込めない病気の場合に最期を迎えたい場所」を聞いています。

一番多いのは「自宅」で、50%を超えています。

次に多いのが「病院/介護療養型医療施設」で、30%ほどでした。

厚労省の調査によれば、「病院」で亡くなる人の割合は70%を超えています。

しかし、本当は「自宅」で死にたいと思っている人が多いのです。

出典:データを基に編集部が作成

孤立死を身近に感じる人は3人に1人

自宅と死といえば、「孤立死(孤独死)」のことも忘れてはいけません。

この調査では、孤立死を「誰にも看取られることなく、亡くなった後に発見される死」と定義しています。

「孤立死を身近に感じる」人は、回答者の34%でした。

だいたい、全体の3人に1人ぐらいの割合です。

意外と多いと言って良いのではないでしょうか。

なお、孤立死を身近に感じる割合は、「持ち家」や「賃貸」など住宅の種類の影響を受けません。いずれも30%台で、ほとんど変わりません。

一方、一人暮らしをしている単身世帯では、50%前後まで増えます。

家の形よりも、誰と暮らしているかということの方が、孤立死への近さを決めているのです。

出典:データを基に編集部が作成

死後の自宅は家族が使う

最期に「自分が死んだ後の家」はどうなるのでしょうか。

70%近い人は、「子供や配偶者(パートナー)等が住む」と回答しています。

次に多いのが「分からない」ですから、自分の死後に自宅がどうなるのか真剣に考えている人はあまりいないようです。

これは、回答者の多くに家族がいるということも影響しているのでしょう。

出典:データを基に編集部が作成

家族の「自宅」も守ってあげよう

調査の結果を見ると、多くの高齢者にとって「自宅」がとても大切な存在であることがわかりました。

介護を受けるようになっても、死を目前にしても、自宅は離れがたい存在なのです。

しかし、自分の死後に自宅がどうなるかを考えている人はあまり多くありません。

持ち家の場合、家族が不動産を相続することになりますが、それは判断が難しく、手間のかかる作業です。

また、現金と違って、不動産は簡単に分けることができません。一歩間違うと、家族同士の争いの種になってしまうのです。

自分がいなくなったあとも、いつまでも家族が「自宅」を愛して暮らせるように、遺言書を用意するなど事前の準備を検討してください。

[シニアガイド編集部]