新型コロナの影響で、9割近い寺院が「葬儀」の参列者の減少を感じている
大学による寺院関係者へのアンケート
大正大学地域構想研究所 BSR推進センターが「寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査」の結果を公開しています。
BSRは、「Buddhist Social Responsibility」の略で、仏教者の社会的責任を意味します。
2020年5月に行なわれたインターネット調査には、517人の寺院関係者が回答しています。
ここでは、葬儀と法事の変化についての回答を紹介します。
葬儀の会葬者が減っている
「葬儀についてどのような変化があったのか」を聞いています。
一番多い回答は「会葬者の人数が減った」でした。
実に9割近くの人がこれを選んでおり、広い範囲で、葬儀に参列する人が減っていることが実感できます。
また「一日葬など葬儀の簡素化」も4割の人が挙げています。
法事は中止か、やっても少人数に
次に、七回忌などの「法事についての変化」を聞いています。
9割近くの回答者が、「法事自体の中止や延期」と「参列者の人数が減った」を挙げています。
法事は中止になるか、行なわれても参列者が減っていることが分かります。
コロナへの対応は「換気」と「人と人との距離」
「葬儀や法事の際に、特別にとっている対応」を聞いています。
「客間や本堂をこまめに換気する」と「間隔をあけて席を配置する」の2つは、8割近い人が選んでいます。
それ以外にも「消毒液の設置」や「法要後の会食を控える」「マスクの着用を勧める」などは、半分以上の人が行なっています。
なお、自分自身のマスク着用については「読経のときはマスクを外しているが、法話の際はマスクを着用している」というコメントがありました。
読経の際は、参列者に背を向けて仏前に向き合うのでマスクを外し、参列者に語りかける法話の際は着用しているのでしょう。
以前の状況に戻らないのではないかという不安
今回のアンケートでは、新型コロナウイルスの影響で、葬儀や法事の簡略化、そして少人数化が進んでいることが分かりました。
このような状況に対して、回答者からは多数のコメントが寄せられています。
その一部を紹介しましょう。
- 葬儀の仕方が変わって行くのではないのか。例えば1日葬が主になるとか、家族だけでの葬儀が増えるとか、本来の葬儀のありかたが簡略化され、葬儀の重要性が無視されてしまう。
- 法要や葬儀を簡素化あるいは開催しないことを、ある意味新型コロナウイルスが後押ししてしまった。一度楽なことを憶えると元の面倒なやり方には戻らないかもしれないという不安。
- 葬儀、法事の小規模化が一気に進みかねない。葬儀、法事を通して、多くの人々に布教する機会があったのだが……。
いずれも、新型コロナウイルス対策をきっかけにして、簡略な方向へと進んでしまい、以前の状況に戻らないのではないかと恐れています。
ここでは葬儀と法事のみを取り上げましたが、それ以外の寺院の行事でも継続が難しい状況となっています。
今回の新型コロナウイルスは、寺院の活動に対して大きな影響を与えており、寺院の存在価値が問い直されるきっかけとなっているのです。