第31回:「withコロナ」時代の寺院はどう変わるか
コロナの影響に対応できるか否かで行く末が決まる

[2020/7/1 00:00]


新型コロナウイルスによる影響が長びき収束が見えない中、「withコロナ」の時代という呼び方がされるようになってきています。

新型コロナウイルスと共存をしていかなければならない時代という意味です。

では、コロナと共存しながら生き残っていくためには、どうすればよいのでしょうか。

今回は、寺院や宗教界にスポットを当て、withコロナ時代には寺院や宗教界はどう変わり、それにどう対応していくのかについて、浄土真宗本願寺派築地本願寺の宗務長で宗教法人築地本願寺の代表役員である安永雄玄(やすなが ゆうげん)氏にお聞きしました。

安永雄玄(やすなが ゆうげん)氏

規模は縮小したとしても儀式は総て行なう

新型コロナでどのような影響が出ておりますか。

寺院も社会経済環境の中で存在している組織体ですから、非常事態宣言などが出されると、それに対応せざるを得ません。

当院は、非常事態宣言が出された4月8日以降は、門信徒さんから依頼される一周忌や三回忌といった「3密」になるような法要を、本堂で行なうことはお断りさせていただきました。

通常は、法要を行なうご家族は一日に何組もいらっしゃいますが、それを全部、6月1日以降に繰り延べるという形にさせていただきました。

築地本願寺の正面外観

非常事態宣言が出されていない期間は、どのようにされているのでしょうか。

門を閉ざして、門信徒さんも門の中に入れないという措置を取られた寺院も結構あるようですが、当院は、「お寺というのは人々の安心の最後の拠り所である」という考え方をしていますので、来られたい方はいつでも来られるように門は開けております。

ですから、従来から行っている儀式は、規模は縮小したとしても全部行なうようにしています。

しかし、コロナで外に出るのが怖いという方も結構いらっしゃいますので、そういう人たちのためにインターネットで中継して流すということも行なっています。

具体的には、何をどのように行っているのですか。

当院では、本堂で毎日朝7時からと夕方4時からの一日2回、勤行(ごんぎょう)を365日行なっていますが、コロナ禍が始まった以降も出仕(しゅつし)する僧侶は減らして、毎日行なっています。

通常は、毎日最低でも40~50人がお参りしており、新型コロナの影響で減りはしましたが、それでも20人位はお参りされています。

この勤行を、4月20日からインターネットで中継して流すようにしました。ですから、スマホがあれば、家で一緒にお参りすることができます。

築地本願寺での勤行の様子

それ以外の特別な法要、例えば、宗祖親鸞聖人の月忌(がっき)法要とか、歴代宗主の法要などにつきましても、出仕するお坊さんの数を4分の1程度にするなど規模は縮小していますが、法要や儀式はきちんと行なっています。

そして、そうした大きな法要については、YouTubeでライブ配信し、その法要の動画を誰もがいつでも見られるようにしています。

インターネットやYouTubeを経由してご参拝する方は、最初は少なかったですが、日を追うごとにどんどん増えてきました。やはり、行なっているうちになじんでくるのだと思います。

築地本願寺での法要をライブで配信

そのほか、新型コロナの影響があっても、通常通りに行なっていることはありますか。

法要のお参りに来て欲しいという場合や、外で葬儀を行なうのでお坊さんを派遣して欲しいという場合についても、コロナのリスクはあっても対応しようということでお受けしています。

コロナの影響があっても、そういう依頼も結構あるのですか。

あります。例えば、お寺によくお参りに来られる方のご家族がお亡くなりになったケースがあります。

一族の中で行なうか行なわないかについてだいぶ議論されたようですが、結局、参列者をかなり絞っておやりになりました。

私は、導師として参加して、納骨までお付きあいさせていただいたのですが、施主(喪主)さんが「親族でいろいろ議論したけれども、小規模でもやはり行なって良かった」と言われていました。

もし、コロナがあるから、葬儀は行なわずに1周忌に盛大にやれば良いということにしていたら、多分、ズッーと悔やむことになっただろうと施主(喪主)さんは話されていました。

門を閉ざすとお寺ではなくなってしまう

今までお聞きしたことに関しまして、いくつか質問させていただきます。コロナ禍でも門を閉ざさずにオープンにされているというのは、宗務長のお考えでしょうか。それとも宗旨宗派の考え方などもあるのでしょうか。

基本的に、私が考え、決断したことです。

ただ、私たち浄土真宗本願寺派の京都の本山(西本願寺)も開いています。なぜかと言いますと、浄土真宗というのは、沿革的に庶民のための仏教だからです。

庶民に広がり、庶民に支持されて今日の基盤を築いた庶民仏教ですから、コロナ禍でもお寺にお参りしたいという方がいるのに、門を閉ざすということは、なかなかできないことなのです。

私は新型コロナウイルスの影響が出始めた当初に、「お寺というのは人々の最後の拠り所なので、門を閉めずに最期までオープンにする」ということを、私の方針として100人位いる職員全員に話しました。

毎日の勤行に参拝される人は、半分から3分の1に減ったとはいえ、こういう時期にそれだけの人が参拝されるというのは多いと思います。参拝されるのは信仰心が強い人たちなのでしょうか。

信仰心があり、長年培われた習慣と、お参りさせていただくと気持ちが良いとか、ありがたいと思われるからでしょう。

お寺というのは、そういう究極の安心感をお届けするところだと思っていますので、そう思っていただけることはお寺にとってすごく大事なことです。

コロナ禍でも、1人でも2人でも参拝してくれるところにお寺の存在価値があるということですね。

そういうことです。

オンライン法要は当たり前になってくる

オンライン法要についてお聞きします。築地本願寺で行なう門信徒さんの個別の法要を、法要に参列できない人のためにオンラインで参列できるようにするということは行なっていらっしゃらないのですか。

それも5月11日から開始しました。今までに12件お申し込みいただいています。

申し込んだのはどのような方ですか。

もともと「築地本願寺倶楽部」(後述)に入会されていた方がほとんどです。

法要後にお送りしたアンケートでは、「自宅に実際に来ていただいているようだった」、「お願いしてよかったと、家族で話をしています」と満足いただいています。

12件という件数は、どう思われますか。

少ないと思います。ただ、告知し始めたのはゴールデンウィークが明けてからですから、まだ知れ渡っていません。

しかし、オンライン法要は、これから段々と当たり前になってくるかもしれません。

どうしてかと言いますと、自分は東京に自宅があるけれども、両親や親族は地方に住んでいるという人たちは結構いらっしゃるからです。

例えば、私も自分の両親のお墓は、九州の博多にあります。

七回忌が終わり、次は十三回忌なのですが、その時どうするかといった時に、私と連れ合いの2人だけで博多に行くということはあるかもしれません。

でも、子供や孫を全部連れて行こうと思ったら大変です。1泊2日で行くと、何十万円もかかりますし、時間も取られますからね。

それだったら、九州のお寺さんにオンラインで行なってもらって、私たち家族は、自宅で仏壇の前に座り、パソコンを置き、皆で年忌法要を行なうというのは、結構合理的な選択だと私は思うのです。

オンライン葬儀は、行なっていらっしゃらないのですか。

オンライン法要は、参加されるのは家族や親族の方ですので、接続の仕方は1対1でいけますので比較的簡単です。

オンライン葬儀の場合は、家族や親族以外の人たちも参加されて、接続は1対多になりますから少し難しく、今のところ、オンラインではなく直接うかがわさせていただいています。

しかし、希望があれば、オンラインでもお参り出来るようにしたいと考えております。

お話をお聞きしていますと、オンライン化に非常に積極的ですが、それはなぜでしょうか。

それは、どんなところにでも、仏様のお慈悲をお伝えするのが、我々お寺、僧侶の役目だからです。

だから、コロナで出歩けないとか、距離が遠いからといって、仏様のお慈悲をお届けすることをあきらめるべきではないし、コロナ禍でも出来ることは総て行ななおうというのが私の考えです。

オンラインというのは、読経をテープに録音して、そのテープを送って、聞いてもらってお終いというのではありません。

リアルで行なっていることを、オンラインでそのまま伝えるのですから、私はオンラインであってもまったく問題はないと考えています。

「出来ることは総て行なう」というお考えだそうですが、ほかに、コロナ禍でもこういうことも行なっているということをお聞かせください。

法話というのもお寺にはつきものです。

当院では、常例布教というのを、毎週木曜日の夜から、金、土、日とスケジュールを組んで行なっていましたが、密な状況になってしまうため、中止にしました。

そのかわり、法話を行なっていただいている布教師の先生方に、長い法話ではなく、15分~30分程度の法話を行なっていただき、それをYouTubeにアップしています。

ですから、誰もが見られるようになっています。

ある仏教系の学校の先生は、そのYouTubeをクラスの生徒に観せて、皆で話し合いを行なうという使い方をしているそうです。

YouTubeにアップしていますから、誰もが自由に利用して社会に広がっていくという、これはまさに布教です。

コロナ禍によって、新しい形の布教が生まれたということですね。

そうです。今は、70~80代でもスマホを持っている人が増えていますので、広い年代の方々に聞いていただけていると思います。

コロナの影響が長引けばお寺離れは加速する

次の質問をさせてください。新型コロナウイルスの影響が長期化することが予想されることから、「withコロナの時代」とも言われておりますが、withコロナの時代が続くと寺院、宗教界はどう変わると思われますか。

withコロナの時代になるということは、お寺やお坊さん、宗教との付き合いが、そもそも必要なのかということが突きつけられるということです。

実際、身内が亡くなった時に、葬儀にお寺さんを呼んだ方が良いのだろうか、親戚を呼んだ方が良いのだろうかなどと皆さん悩んでおられます。

そして、コロナウイルスの影響で葬儀を行なわず、直葬にする人がすごく多くなっています。率直に言いますと、それが現実です。

コロナウイルスが葬儀を行なわない言い訳や免罪符になってしまっていますものね。

でも、直葬にしてしまうと後ろめたく思い、それを引きずる人も多いのです。

例えば、私の親友で亡くなった人がいます。彼は医者で宗教はいらないという主義でした。私もお葬式に行って弔辞を読んだのですが、宗教儀式はなく、友人葬みたいでした。

ところが、ご両親と奥さんは、そのことをズーッと気に病んでおられました。

それで、三回忌にお参りに行った時に、「では、私がお勤めさせていただきましょうか」と言ったのです。

「是非、お願いします」ということでしたので、お勤めしました。

ご両親と奥さんは、ものすごく喜んで「最初からそうしてもらえば良かった」と言っておられました。

本人が、葬儀不要、墓不要、散骨希望と遺言を残すと、遺された人たちはそうせざるを得ません。

でも、遺された人は、そうしたくないという気持ちを持っている人も多いようです。

ですから、我われお寺は、そういうところにきちんと対応していかなければいけません。

直葬と考えている人たちに対して、一歩踏み込んで、お葬式を提供できるかどうかによって、お寺の今後も変わってくると思います。

つまり、コロナによって直葬が増えているのだから、今まで以上に働きかけをしなければならないということですね。

そうです。コロナの影響が長引けば長引くほど、葬儀不要、墓不要という人は増え、お寺離れは加速していくと思います。

ですから、コロナの影響にどう対応していくかによって、お寺の行く末も変わってきます。

当院は、コロナの影響に一生懸命対応しようとして、いろいろなことを行なっています。行なうことによっていろいろ学び、さらに進歩していくわけです。

先ほどお話ししたオンラインにしても、最初は「そんなもの使えるのですか」と思う人がいても、やってみると意外と使えて、だったら、もっとこうしようと工夫していくわけです。

例えば、本堂で行なう法要をオンラインでただ配信しても、何のための法要で、お経の意味も全く分かりません。

それを今は、僧侶が解説を入れて説明しています。そうすると、すごく分かりやすいですし、分かりやすかったら、また参列しようと思ってもらえます。

そういう改善を繰り返すことによって、オンラインでもレベルが段々上がっていきます。

そうすると、聴き手の方も、もっと聴きたいと思って、リアルの法要を本堂に聴きに行こうという人も出てくるわけです。

お寺が生き残っていくためには、そういうことを地道に繰り返していくしかありません。

そういうことを地道にできるお寺でないと、生き残っていくのは難しいということですね。

そうです。「当院は、自分の方から門徒さんに寄り添っていくことはしません。頼まれたことをやるだけです。それがお寺の務めです」と自己定義してしまったら、外に一歩も出られなくなります。

従来の門信徒さんがいなくなり、新しく門信徒さんが増えなければ、お寺は縮小していきます。

そういうお寺と、新しいことをどんどん行なって、新しい門信徒さんを獲得しようとするお寺とでは、どちらが生き残れるのかは自ずと明らかになります。

2015年7月に宗務長に就任され、従来のキャリアを生かされて、経営やマーケティング視点で築地本願寺を大改革されてこられましたが、築地本願寺内での反応はいかがですか。

否定的な意見ももちろんありました。それに対して私は、「寺も生き残っていかなければいけない。何もしなくても生き残れる策があるのなら、是非積極的に提案してください」と言うのですが、出てきませんでした。

今は理解も深まり、積極的な人も増えてきました。でも、心の底では、「お坊さんはそんなことをすべきではない」と苦々しく思っている人は少なからずいると思います。

新しいことに対しては、特に年配者は抵抗感を持ちやすいですし、苦々しく思われるのは改革者の宿命ですね。

ご縁を絶やさず、そのご縁を太くしていく

最後に今後の重点方針をお聞かせ下さい。

人々とのご縁を絶やさず、そのご縁を太くしていくことです。そのためには、お寺自身が信頼される存在になっていかなければなりません。

そこで、一般の人々の人生や暮らしに関するいろいろなご相談に対応し、必要なサービスをワンストップで提供することを目的に「築地本願寺倶楽部」という会員制度を、2017年11月に作りました。入会費や会費は無料です。

仏教や葬儀、法事に関して我われがご相談に応じるだけではなく、それ以外の「心」や「生きがい」、「メディカル」、「終活」など人生に関する様々なサポートサービスについても、築地本願寺がハブとなって専門家をご紹介できるようにネットワークを広げています。

お寺がそんなことまでやってくれるのだと思っていただければ、信頼度は上がっていくと思うのです。

そういうことを地道に積み上げていってご縁を絶やさず、信頼される存在になっていく努力を永久に続けていくしかないと思っています。これでいいやと思ったら、それでお終いですから。

「築地本願寺倶楽部」の会員は2万人近くになったそうですが、サポートサービスの利用状況はいかがですか。

利用は、「合同墓」のお申し込みや「KOKOROアカデミー」(人生や終活を考える講座などが集まったアカデミー)の受講が多く、他にも、「メディカルコールサービス」や境内店舗の割引を利用いただいています。

築地本願寺の敷地内に開設された「合同墓」の外観
「KOKOROアカデミー」のヨガ講座の様子

築地本願寺倶楽部会員は、門信徒予備軍と言ってもよいのではないかと思うのですが、そうしたエピソードは出てきておりますか。

今回のコロナに関わることとしては、次のようなことがありました。

会員の方から電話がかかってきて、「葬式はやるつもりはないけれど、お参りにきてもらえますか」というのです。

倶楽部のメンバーだから、お勤めしてもらえるかもしれないと思って電話をかけてきたと思うのです。メンバーでなかったら、電話はかかってこず、そのまま直葬だったかもしれません。

その問い合わせに対し、我われはお勤めさせていただき、簡易な形ながらも葬儀を行ないました。

つまり、その会員の気持ちに寄り添われたわけですね。

そうです。このケースで感じたのは、宗教心というのは、日本ではお金のある無しに関わらず、そんなに絶えてはいないのではないか、潜在的には総ての日本人が持っているのではないかということです。

ですから、小さなきっかけであっても、お寺がそれを大事にして徐々に大きくしていく努力を怠らなければ、お寺にお参りする門信徒さんは、必ず増えてくると思っています。

だから、「ご縁を絶やさず、そのご縁を太くしていくこと」が大事だとおっしゃっているわけですね。今日は素晴らしいお話をありがとうございました。



【安永雄玄(やすなが ゆうげん)氏のプロフィール】

浄土真宗本願寺派築地本願寺 宗務長、グロービス経営大学院大学 教授。

1979年慶應義塾大学経済学部卒業、ケンブリッジ大学大学院博士課程修了(経営学専攻)。 三和銀行(現三菱UFJ銀行)、ラッセル・レイノルズ社を経て、島本パートナーズにパートナーとして参画し2006年より同社代表取締役社長。

金融業界から生産財、消費財、流通サービス業界にいたる幅広い分野に人脈と情報ネットワークを持つ。幅広い実務経験を背景にクライアントに経営戦略上のアドバイスと人材コンサルティング、エグゼクティブ・コーチング、経営者向け研修などを提供していた。

2015年7月より、浄土真宗本願寺派築地本願寺の宗務長(しゅうむちょう)に就任し、宗教法人築地本願寺の代表役員として、僧侶組織のトップに立って様々な法要を主導し、築地本願寺の経営管理全般を統括する。

また、築地本願寺銀座サロンや、境内地の全面的改装、コンタクトセンター開設、築地本願寺倶楽部会員制度や「人生サポートサービス」の開始など、首都圏における様々な伝道布教プロジェクトに取り組んでいる。

2004年よりグロービス経営大学院大学専任教授(人材マネジメント、企業家リーダーシップ、企業倫理、経営道場講座担当)として社会人大学院生や企業の経営幹部教育にも携わっている。

国際コーチング連盟認定プロフェッショナルコーチ(CPCC)、早稲田大学商学部元講師、社団法人経済同友会会員。日本ファイナンス学会、経営行動科学学会、日本キャリアデザイン学会会員。

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塚本 優(つかもと まさる)
終活・葬送ジャーナリスト。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、葬祭(葬儀、お墓、寺院など)を事業領域とした鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務めたほか、終活資格認定団体を立ち上げる。2013年、フリーの終活・葬送ジャーナリストとして独立。 生前の「介護・医療分野」と死後の「葬儀・供養分野」を中心に取材・執筆活動を行なっている。

[塚本優]
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