「要介護3」以上の介護は丸一日かかる人が多い

[2020/7/26 00:00]

「要介護3」と言われた時に、何を覚悟すれば良いか

あなたに、離れて住んでいる一人暮らしの親がいて、介護が必要な状態になったとします。

役所や病院のアドバイスに従って、「要介護認定」を受けると、例えば、「要介護3」という「要介護度」の判定が出ます。

しかし、「要介護3」と言われても、それがどれぐらいの覚悟が必要な状態なのか分かりません。

要介護度の判定が出た以上、介護が必要な状態であるということは分かります。

しかし、自宅でそのまま生活できるのでしょうか、それとも施設などに入所する必要があるのでしょうか。

さらに、自宅で生活できるとして、一人暮らしできるのでしょうか、だれか家族が付き添わなければならないのでしょうか。

家族が介護をするとしても、それは1日仕事なのでしょうか、半日でしょうか、片手間でできる範囲なのでしょうか。

そういうことが、パッとイメージできる人は少ないでしょう。

私達はふだん「要介護度」という基準になじみがないので、それがどれぐらいの程度なのか、判断できないのです。

せめて、「要介護3」なれば、1日に何時間ぐらいかかる、というように時間に換算できないものでしょうか。

この記事では、それぞれの要介護度には、どれぐらいの時間がかかるのかということを目安を紹介します。

要介護認定で見る時間

要介護認定では、対象となる人の状態によって、介護にかかる時間が判定基準になっています。

具体的には、入浴や食事を始めとする、さまざまな介護にかかる時間を分単位で目安にしています。

もちろん、これは判定のためのものさしであり、実際の介護時間そのものではありませんが、一応の目安にはなります。

  • 要支援1 25分以上32分未満
  • 要支援2 32分以上50分未満
  • 要介護1 32分以上50分未満
  • 要介護2 50分以上70分未満
  • 要介護3 70分以上90分未満
  • 要介護4 90分以上110分未満
  • 要介護5 110分以上

さきほど例に挙げた「要介護3」ならば、1日に必要な介護に使う時間は「70分以上90分未満」、つまり1時間から1時間半ぐらいは必要となるわけです。

「要介護3」以上では、丸一日介護にかかる人が多い

しかし、実際の介護では、個人個人で状態が異なるので、必要な介護も変わります。

もう少し、具体的な数字を見てみましょう。

厚労省が行なった「2019年 国民生活基礎調査」に、自宅で同居している介護者が、1日にどれぐらいの時間を介護に使っているかというデータがあります。

これを見ると、「要介護2」までは「必要なときに手を貸す程度」という人が、「要介護3」からは「ほとんど終日」という人が、一番多くなっています。

「ほとんど終日」ということは、丸一日気を抜くことなく、介護に携わっていることになります。

「要介護3」では、「ほとんど終日」が3割で、次に多い「必要な時に手を貸す程度」が2割強です。

同じ「要介護3」でも、条件によって介護の負担に差があることが分かります。

しかし、少なくとも、同居の家族がいない一人暮らしの状態を続けることが難しいことは想像できます。

「要介護3」よりも重い「要介護4」「要介護5」と進むと、「ほとんど終日」の人が半分を占めており、誰かが終日つきっきりで介護を行なう必要があることが分かります。

出典:厚労省

人に相談して、力を借りることを考えよう

親の介護のために退職する人を見ていると、「パートやアルバイトができるぐらいの時間の余裕がある」と思って介護を始める人が多いことに気が付きます。

しかし、今回のデータで分かるように、「要介護3」を超えると、「ほとんど終日」を費やすことが多いのです。

特に、徘徊や不潔な行為などの「問題行動」がある場合は、本当に目が離せません。

実際に、どれぐらいの時間が必要となるのか、ケースワーカーとよく相談しましょう。

また、自分で全部やろうとするのではなく、ホームヘルパーなど制度に基づく他人の力を借りることを考えましょう。

その上で、本当に自宅介護で良いのか、施設に入所した方が良いのかも相談してください。

特に「要介護3」以上は、在宅での生活が困難になった要介護の高齢者が入居できる公的施設である「特別養護老人ホーム」の入居基準でもあります。

そういう施設に入ることができるということは、そういう施設での対応が必要な状態であるということです。

安易に、自分ひとりで介護をすると決めつけずに、ケースワーカーを始めとする専門家とよく相談してください。

[シニアガイド編集部]