小さい会社の後始末は「自分の代で廃業」が最多
小さな会社に聞いた「引き継ぎの予定」
日本政策金融公庫総合研究所(日本公庫総研)が、「中小企業の事業承継に関する調査」の結果を公開しています。
2019年10月に行なわれたインターネット調査には、従業員299人以下の中小企業4,759件が回答しています。
なお、ここでいう「企業」は、「法人企業」だけではなく、「個人企業」も含まれています。
つまり、1人でやっている個人事業主や、家族を従業員としている4人以下の小さな企業が多いのです。
半分以上が「自分の代でやめるつもり」
現在行なっている事業について「後継者が決まっていますか」と聞いています。
一番多い回答は「自分の代で事業をやめるつもりである」で、50%を超えています。
半分以上の企業が、事業を次代に継承せず、自分の代で終わりにするつもりです。
「後継者が決まっている企業」は13%しかありません。
自分がまだ若いので今は決める必要がないと思っている「時期尚早」や、後継者が決まっていない「未定」の方が、決まっている企業よりも多いのです。
誰かに継いでほしいと思っていない
「自分の代で事業をやめるつもり」という人が廃業する理由を聞いています。
一番多い回答は「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」でした。
次が「事業に将来性がない」です。
3番目からようやく、「後継者が見つからない」が出てきます。
個人の技能で成り立つ仕事だから継がない
では、どうして「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」のでしょうか。
一番多いのは「経営者個人の感性、個性が欠かせない事業だから」でした。
つまり、個人の技能を生かした職人芸的または属人的な仕事なので、簡単に受け継ぐことができないのです。
2番目以降も、「自分の趣味で始めた事業だから」「行動な技術、技能が求められる事業だから」と、仕事の内容が個人の趣味や技能に依存していることを理由にしています。
70代でやめることを考えている人が多い
自分の代で廃業するつもりの人は、何歳ぐらいまで働くつもりなのでしょうか。
一番多いのが「75~79歳」、次に多いのが「70~74歳」でした。この2つで半分を超えています。
「70代」を仕事を終える目安と考えている人が多いことが分かります。
やめるときの問題は「お金」
廃業する際には、どんなことが問題となると考えているのでしょうか。
一番多いのは「特に問題はない」でした。
事業を終えるにあたって、大きな問題はないと考えている人が多いのです。
次に多いのが「やめた後の生活費を確保すること」でした。
また、「事業をやめるための費用がかかること」や「借入金などの負債を整理すること」を挙げる人もいて、お金が問題がつきまとうことが分かります。
定年後の起業は「終わり」も視野に
今回の調査で、中小企業の場合、事業は自分一代限りと考えている人が分かりました。
例えば、多数の従業員を使っているような事業の場合、いきなり事業を終えることは簡単ではありません。
ただし、自分だけ、または家族が社員のような小規模な事業の場合、無理に承継しなくて良いと考える人が多いのです。
例えば、定年後の選択肢として、継続雇用制度を選ばずに起業した場合でも、いつかは事業を終えることを考えておく必要があります。
しかも、多くの事業主は、「70代」になったら廃業することを考えていますから、定年から起業したとすれば、残されている時間は長くても20年足らずです。
そうであれば、起業の時点で、最終的には、この事業をどこまで育てて、どのように終わらせるべきかを考えておく必要があるでしょう。
あらかじめ、事業の終わりを視野に入れておけば、事業の進路の選択を迫られたときにも、決断に迷うことがないでしょう。