新型コロナの予防でマスクの有効性を実証。実際のウイルスで実験

[2020/10/27 00:00]
出典:東大グループ

本物のウイルスで実験

新型コロナウイルスの予防にマスクが有効であることを、東京大学医科学研究所などのグループが実際のウイルスを使った実験で確認しました。

この研究は、東京大学、慶應義塾大学、国立病院機構仙台医療センターが共同で行なったものです。

実験は、安全性を確保した施設で行なわれています。

3種類のマスクをテスト

実験では、向かい合わせに置いたマネキンの片方から新型コロナウイルスを噴霧し、もう片方で吸い込みます。

マネキン同士の間隔は50cm空けてあります。

吸い込み側のマネキンには、人工呼吸器が接続されており、吸い込んだウイルスの量を計りました。

結論として、ウイルスを吐き出す側も吸い込む側も、マスクを着用することでウイルスの量を減らすことが実証されました。

用意されたマスクは、一般向けの「布マスク」、医療用の「サージカルマスク」、特別な用途で使われる「N95マスク」の3種類です。

いずれにおいても、マスクの効果はありましたが、マスクの種類によってウイルスの量には差がありました。

マスクをすると「吸い込む」ウイルスが何割も減る

まず、「吸い込む側」にマスクを着用した場合を見てみましょう。

ウイルスの量は「力価」と「RNA(遺伝子)」の2つの方法で計っていますが、ここでは「力価」の方を見ていきましょう。

マスクをしていない状態の、ウイルスの量を100としています。

「布マスク」を着用した場合、ウイルス量は17%減って83になります。

同じように「サージカルマスク」では、47%減って53と、ほぼ半分になります。

「N95マスク」では43と半分以下に減ります。

さらに、「N95マスク」は装着の状態で大きく効果が変わります。

「N95マスク」を密着して装着した場合は、ウイルスは79%も減って21になります。

マスクの効果は、「布マスク」「サージカルマスク」「N95マスク」「N95マスク(密着)」の順で大きくなります。

出典:東大グループの資料をもとに編集部が作成

マスクをすると「吐き出す」ウイルスが7割減る

次に、吐き出す側のマネキンにマスクを着けた効果を見てみましょう。

こちらも「力価」の結果を紹介します。

吐き出す側に着けた場合は、「布マスク」でも「サージカルマスク」でも、効果に大きな差がありません。

いずれも70%以上もウイルスの量が減っています。

「N95マスク」ではさらに効果が大きく、95%もウイルス量が減りました。

さらに、「N95マスク」を密着して装着した場合は、検出できないレベルまで減ります。

出典:東大グループの資料をもとに編集部が作成

「マスク」の有効性を実証

この実験によって明らかになったことを箇条書きにしてみましょう。

  • マスクを着けると、ウイルスを吐き出す側と吸い込む側の両方に効果がある
  • 特に吐き出す側が着用すると効果が大きい
  • マスクの効果は、「布マスク」「サージカルマスク」「N95マスク」の順に大きくなるが、「布マスク」でも一定の効果がある
  • 「N95マスク」は装着時のフィッティングによって大きく効果が変わる

新型コロナウイルスの流行当初は、「マスク」の効果に懐疑的な意見もありました。

しかし、今回、実際の新型コロナウイルスを使用した実験により、マスクの予防効果が実証されたのです。

「マスク」は有効だが、それだけでは不足

「マスク」は、新型コロナウイルスの予防に必要な存在です。

しかし、今回行なわれた実験では、ウイルスを吐き出す側と吸い込む側の両方がマスクを着用していても、ウイルスの量がゼロにならないことも明らかになりました。

つまり、マスクだけでは、新型コロナウイルスを完全に防ぐことはできません。

では、どうすれば良いのでしょう。

もう一つの実験で、マスクを着けない状態で、マネキンの距離を離すと、ウイルスの量が大きく減ることが分かっています。

「マスクの着用」と「人と人との距離を保つ」ことを組み合わせることで、さらに予防効果を高めることができるのです。

2つの予防手段を組み合わせて、新型コロナウイルスの感染を予防しましょう。

出典:東大グループの資料をもとに編集部が作成
[シニアガイド編集部]