すでに昨年の2倍を超えた、上場企業の早期希望退職
10月までに72社が実施
企業情報調査会社の東京商工リサーチが、「早期希望退職」が急増していると警告しています。
早期希望退職とは、主に正社員を対象に、定年より前に退職する人を募集する制度です。
早期に退職する代わりに、退職金の上乗せや転職の補助などを行なうのが一般的です。
東京商工リサーチによれば、2020年1月1日から10月29日の間に、早期希望退職を募集した上場企業は72社でした。
2019年の1年間で35件でしたから、すでに昨年の2倍以上となっています。
募集人員も、判明しただけで14,095人に達しており、すでに、昨年の1,1351人を上回りました。
業績が赤字の企業が多い
早期希望退職を募集している業種は、新型コロナウイルスの影響が大きい、「アパレル・繊維」「外食」が多くなっています。
早期希望退職を行なった企業全体を見ても、その4割以上が、新型コロナウイルスの影響を原因として挙げています。
また、早期希望退職を行なった企業の半分以上は、年度単位の「本決算」が赤字でした。
さらに、3カ月単位の「四半期決算」が、直前で赤字だった企業を含めると、7割以上の企業が赤字です。
2019年は、早期希望退職を行なった企業の半分以上が黒字で、「黒字リストラ」と呼ばれました。
これは、会社の業績が良いので、社員の若返りや専門分野の人材獲得を目的としたものです。
それに対して、今年は新型コロナウイルスの影響による、業績悪化が原因の「赤字リストラ」が主流となっています。
たった1年で、早期希望退職の目的が大きく変わったのです。
年齢制限がない企業が増加
これまでの早期希望退職は、「40歳以上」「50歳以上」など、対象となる年齢を指定した募集が一般的でした。
しかし、今年は片倉工業やシチズン時計のように、募集にあたって年齢制限がない企業が増えています。
さらに、ラオックスのように、正社員だけではなく、契約社員も対象としている例もあります。
このように早期希望退職の対象者を広げているのは、できるだけ早く人と人件費を減らす必要があるからです。
東京商工リサーチでは、このような状況について、次のようにコメントしています。
雇用を取り巻く環境は厳しさを増し、業界によっては“切羽詰まった”状況にある。
新型コロナによる企業業績への影響は、国内外の市場が縮小し、依然として先行きは見通せない。
新型コロナウイルスの流行に歯止めが掛からない現状から考えると、あと2カ月となった年内だけでなく、2021年についても、早期希望退職の募集は続くでしょう。
東京商工リサーチが集計の対象にしているのは上場企業ですが、早期希望退職は会社の規模に関係なく行なわれます。
将来の人生設計に大きく影響するできごとなので、自分の会社の動向にも注意しておきましょう。