消費者庁が「新型コロナウイルスの予防効果」を訴える42の製品を摘発
緊急事態宣言以後の広告が対象
消費者庁が、「新型コロナウイルスの予防効果」があるとする製品を摘発し、消費者に警告を発しています。
今回の警告は、緊急事態宣言が出た2021年1月以降のインターネット広告を対象にしています。
対象となったのは、45事業者による42の製品やサービスです。
消費者庁による新型コロナウイルス関係の表示に関する警告は、何度も行なわれていますが、再度の緊急事態宣言を受けて、根拠のない表示をする製品が登場していることが分かります。
さまざまな工夫をこらす「健康食品」の誇大広告
警告の対象となった製品は、いずれも「新型コロナウイルスに対する予防効果がある」という趣旨の表示をしていました。
対象となった商品が一番多いのは、いわゆる「健康食品」でした。
32の事業者による32の商品が、警告の対象となっています。
「健康食品」の誇大な広告には、いくつかのパターンがあります。
そのパターン別に、実例を見てみましょう。
治療法を発見したというパターン
- スイカズラは今、新型ウイルスの治療に効果があると科学者らが明らかにしたことを受け話題沸騰中
- 白樺キノコ(チャーガ)をベースにしたコロナウイルスの治療法を発見
- 柿渋(柿タンニン)により新型コロナウイルスが不活化(無害化)
言うまでもありませんが、現時点では、新型コロナウイルスに対して、有効とされている薬品さえごくわずかな状態です。
薬効を認められていない「健康食品」で、新型コロナウイルスが治療できるわけがありません。
「スイカズラ」や「白樺キノコ」で、新型コロナウイルスが治れば苦労はしません。
一見科学的に見える解説で納得させるパターン
- 還元発酵乳酸菌は、コロナウイルスの「エンベローブ」という薄い膜に対し針で刺すような特別の働きをすることで、99.9%以上のウイルスを不活性化、還元発酵乳酸菌エキスが新型コロナを無害化
- 新型には免疫が無いので、誰でもかかる可能性が高い、小麦発酵抽出物は、体内の自然免疫「マクロファージ」の活動を活性化、自己免疫力を高めるのに最高の免疫賦活素材
上の文章は、「エンベローブ」という用語を使うことで、なんとなく効きそうな印象を与えています。
ちなみに、ウイルスの「エンベロープ」は、アルコール消毒でも簡単に壊れてしまいます。「特別の働き」などは必要としません。
下の文章も、白血球の一種である「マクロファージ」という細胞の名前を出すことで、なんとなく効きそうな雰囲気を出しています。
免疫力を強化するパターン
- 抗酸化食品であるゴマをたくさん食べて新型コロナウイルスの対策を!
- コロナウイルスに勝つためには、今大事なのは免疫力アップ、免疫機能を正常に保つDHA・EPA
- コロナ新習慣、自然免疫をサポートする成分LPS(リポポリサッカライド)を配合したサプリ、感染による重症化を防ぐ効果や感染力を低下させる効果
- 新型コロナウイルス感染症対策にも良いと言われる「大麦β-グルカン」、世界に脅威を与えるウイルスにも免疫力を高め、ウイルスに負けない身体作り
商品の広告において、「新型コロナウイルスに対して有効」と言うと、薬効を主張することになるので、嘘がバレやすくなります。
そこで、「免疫力を強化してコロナウイルスにも負けない身体を作る」と主張するパターンがあります。
ただし、「健康食品」の場合、「免疫力を強化する」という薬効を主張することもできません。
もちろん、「重症化を防ぐ効果や感染力を低下させる効果」などの、証拠のない主張は行き過ぎです。
「マイナスイオン発生器」や「除菌スプレー」も多い
「健康食品」以外でも、多くの製品が、摘発の対象となっています。
各分野ごとに、摘発の対象となったキャッチフレーズを見てみましょう。
マイナスイオン発生器
- 新型コロナウイルス除去にも期待! ウイルス除菌率99%! 効果実感!、いま世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス除去にも一定の効果が期待できる
- 新型コロナウイルスの感染力をほぼ消すことのできるオゾンガスを使った医療用物質生成器
- コロナ除菌でウイルス対策を!! お部屋の空気の身のまわりを除菌してウイルスをはねのけよう!!
「マイナスイオン発生器」では「除菌」が人気のキーワードです。
「ほぼ消すことができる」とか「一定の効果」という数字をぼかした言い方に遠慮が見えます。
除菌スプレー(銀イオン、電解水等)
- 新型コロナウイルスと同じ構造のウイルス97.9%以上除菌、コロナウイルス除菌スプレーついに登場! 【第三者機関で実証】新型コロナウイルスと同じ構造のウイルスを除菌!
- 新型コロナウイルス死滅兼用、新型コロナウイルスにも効果があることがテストで明らかに
「除菌スプレー」では、「テストで効果が証明された」という言い方が人気です。
「建材」や「シャンプーサービス」も新型コロナウイルスへの効果を主張
これ以外でも、次のような製品の表示が、摘発の対象となりました。
- 二酸化塩素加湿器「COVID-19にも効果が期待できる、ダントツの殺菌効果」
- 抗ウイルスマットレス「ウイルスを吸着して破壊99.99%減少」
- 建材「付着したウイルスならば早期に分解してくれます。そのため新型コロナウイルス等の感染症に有効であると注目されているのです!」
- シャンプーサービス「皮膚のバリア機能が強固になるので皮膚からの新型コロナウイルス侵入防止になります」
分野を問わず、「ダントツの殺菌効果」など殺菌力の強さを主張するものが多いことが分かります。
「菌」と「ウイルス」は違うものなのですが、分かっていてやっているのでしょう。
効果が確かではない商品でお金を失わないように
緊急事態宣言も長くなり、新型コロナウイルスへの不安は、ますます強くなっています。
もう、マスクをして、「三密」を避けているだけでは、不安が解消なくなっています。
そこで、もっと自分にできることは無いかと探していると、今回のような製品の広告が目に入ってきます。
しかし、新型コロナウイルスに対しては、「ワクチン」の普及までは、コレという決定的な対策がありません。
それを主張する「健康食品」や「除菌スプレー」などは、すべて誇大な広告なのです。
長引く自粛への不安から、そのような製品に飛びついてしまうと、思わぬ大きな金額のお金を失うことになってしまいます。
効果が確かではない「何か」にすがることなく、地味でも効果が確実な「マスク」や「三密を避ける」などの対策に努めてください。