国民生活センターが「次亜塩素酸水」をテスト。半分以上の製品が表示濃度に届かず

[2020/12/30 00:00]

「次亜塩素酸水」15製品の現物を試験

国民生活センターが、「次亜塩素酸水」について、実物を購入してテストを行なっています。

次亜塩素酸水は、濃度が足りない製品が消費者庁に指摘されるなど、用途や濃度などで誤解を招きやすい製品です。

今回のテストでは、2020年8月から10月にかけて購入した15製品が対象になっています。

濃度の表示すらない製品もある

「次亜塩素酸水」は、一定の「有効塩素濃度」がないと、消毒の効果がありません。

しかし、用意された15製品のうち、5製品は、購入した製品の本体に「有効塩素濃度」の表示がありませんでした。

さらに、そのうちの1製品は、取扱説明書や、製品のWebサイトにも有効塩素濃度の表示がありません。

この時点で、問題のある製品が多い分野であることが分かります。

表示があっても濃度が足りない製品が多い

さらに、濃度の表示があった14製品も、そのうちの8製品は、実際の「有効塩素濃度」が、表示の有効塩素濃度の9割に届きませんでした。

中には、実際の濃度が、表示されている濃度の2割にも届かない製品もありました。

つまり、有効塩素濃度の表示があっても、かなり怪しい数字なのです。

もともと、次亜塩素酸水は、製造時から販売されるまでの期間に、有効塩素濃度が下がりやすい製品です。しかし、表示と実体との差は無視できない大きさです。

さらに、国民生活センターでは、購入時期をずらして2回購入していますが、2回とも表示を下回った製品が大半を占めています。

つまり、購入した製品の個体差によるものではなく、もともと低い濃度で出荷されている可能性が高いということです。

国民生活センターでは、消費者へのアドバイスとして、『「次亜塩素酸水」は、有効塩素濃度が購入時点で表示の濃度と大きく異なる場合があることを知っておきましょう』と警告しています。

つまり、濃度の表示があっても、それが信用できるとは限らないのです。

ちなみに、厚生労働省、経済産業省、消費者庁の3省庁連名で公表された、次亜塩素酸水による拭き掃除の注意では「有効塩素濃度80ppm以上のものを用いること」とされています。

しかし、実際に計測された有効塩素濃度が、これを下回った、“薄い”製品が少なくありません。

80ppmというのは、かなり“ゆるい”基準なので、これでは消毒には使えません。

出典:国民生活センター

濃度の表示がない製品は、やっぱり濃度が低い

テストの対象となった「次亜塩素酸水」のうち、本体に濃度の表示がなかった製品は、実際に計測された濃度も低くなっています。

そのため、国民生活センターの2つめのアドバイスは、『「次亜塩素酸水」を購入、使用する際には、有効塩素濃度やpH、使用期限、使用方法などの表示をよく確認するようにしましょう』となっています。

常に表示が正しいとは限らないが、それでも有効塩素濃度の表示が本体にない製品には手を出してはいけないということです。

「次亜塩素酸水」を手指の消毒に使ってはいけない

そして、「次亜塩素酸水」として販売されている商品は、医薬部外品や化粧品ではなく、物の除菌を目的としています。

これらを、手指や口腔等の人体の消毒や殺菌に使用することはできません。

しかし、15製品のうち5製品には「皮膚を清浄にする」や「口中を浄化する」という誤解を招く表示がありました。

このような表示は「化粧品」としての基準を満たしている製品以外では使用してはいけないことになっています。

そもそも、濃度の濃い次亜塩素酸水を使用するときに、ゴム手袋を使用することが推奨されていることを考えれば、手指の消毒に使うことの危うさが分かります。

消毒が目的なら、他にも選択肢はある

国民生活センターの3つ目のアドバイスは、『物に付着した新型コロナウイルスの消毒や除菌には「次亜塩素酸水」や一定濃度のアルコール、界面活性剤等、さまざまな選択肢があります。目的に合ったものを適切に使いましょう』です。

かなり遠回しな表現ですが、消毒が目的なのであれば、アルコール消毒液や家庭用洗剤、塩素系漂白剤でもできますよと言っています。

特に理由がなければ、「次亜塩素酸水」でなくても良いのではありませんか、よく考えてくださいというわけです。

消毒方法の選択に迷ったら、厚生労働省、経済産業省、消費者庁の3つの省庁が共同で公開している「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法」というWebサイトを参考にして検討してください。

「空間除菌」の有効性は確認されていない

国民生活センターのレポートは、最後に「空間除菌」について触れています。

「次亜塩素酸水」のメーカーでは、次亜塩素酸水を超音波加湿器に入れて噴霧することで、空気の除菌ができると主張している例があります。

これについて、国民生活センターでは、世界保健機関(WHO)や、米国疾病予防管理センター(CDC)などの公的な組織が、「空間除菌」を認めていないことを紹介しています。

そして、『これまで、消毒剤の有効かつ安全な空間噴霧方法について、科学的に確認が行われた例はありません。また、現時点では、薬機法に基づいて品質・有効性・安全性が確認され、「空間噴霧用の消毒剤」として承認が得られた医薬品・医薬部外品も、ありません』と結んでいます。

つまり、メーカーが自主検査などで「空間除菌」の有効性を主張していても、その有効性は公的には認められていないというわけです。

現時点では、「空間除菌」は、そのような位置づけなのです。

それを目的として「次亜塩素酸水」を購入するときは、国民生活センターのような見解もあることを知っておいてください。

[シニアガイド編集部]