状況は「ステージ3」相当なのに、東京都の「緊急事態宣言」が終わらなかった理由
実は「ステージ4」を下回っていた
東京都を始めとする一都三県について、新型コロナウイルスに対する「緊急事態宣言」が延長されました。
「緊急事態宣言」は、国の指標で「ステージ4」であることが前提です。
しかし、東京都の直近の状況は「ステージ4」を下回り、「ステージ3」か「ステージ2」に相当しています。
単純に数値の問題ならば、「緊急事態宣言」は解除されてもおかしくありませんでした。
しかし、国は「緊急事態宣言」を延長しました。
単純にステージの問題ではないほど、現状が厳しいことが分かります。
では、新型コロナウイルスの現状の何がマズいのでしょうか。
ここでは東京都のデータをもとに、少し詳しく「緊急事態宣言が終わらなかった状況」を紹介します。
1月から「すごく減った」気がする新規陽性者数
新型コロナウイルスの新規陽性者数をグラフにすると、2021年1月7日の「2,520人」をピークにして、その後は減り、3月に入ってからは200人前後の状態が続いています。
私達は、毎日の新規陽性者数が2,000人を超えている状況に慣れていたので、200人前後という数字を見ると「少なくなった」と感じてしまいます。
しかし「200人前後」という数字は、2020年7月ごろの第二波のピークに相当します。
「すごく減った」気がしていますが、それは正しい感覚ではありません。
委員会の報告書でも「依然として高い数値の状態が続いている」とされています。
また、もう一つ問題なのは、陽性者数の下がり方が鈍くなってきたことです。
例えば、曜日によるばらつきをなくすために7日間の平均で見ると、2月24日は「288人」ですが、1週間経った3月3日は「272人」で、あまり減っていません。
これも、「最近はだいぶ減ってきたから、少しは外出しても良いだろう」と考える人が増えたからでしょう。
いろいろな指標が「ステージ2」相当まで下がっていても、この下げ止まりのせいで、気が抜けない状況が続いているのです。
「ステージ3」相当でも病院への負担は大きい
新型コロナウイルスは、患者本人が苦しむだけではなく、医療体制への負担の大きさが問題となります。
新型コロナウイルスによって大量の入院患者が発生すると、新型コロナ患者に病床を取られてしまい、それ以外の病気の患者が入院する余地が無くなってしまうのです。
そのため、新型コロナウイルスの状況を見るためには、「入院患者数」と「重症患者数」が重要な指標になります。
東京都の「入院患者数」と「重症患者数」は、国の指標で「ステージ3」に相当しており、油断ができない状況と言えます。
入院患者数は、1月12日に「3,427人」でピークとなり、その後、減少しています。
しかし、3月3日の時点でも「1,548人」と多く、「非常に高い水準で推移している」とされています。
また、「重症患者数」も、1月20日の「160人」をピークにして、減っていますが、3月3日時点でも「52人」もいます。
「52人」という数字は少なく見えますが、2020年8月末の「第二波」のピークでも40人未満だったことを思えば、かなり多いことが分かります。
専門家からは「冬期は脳卒中・心筋梗塞等の入院患者が増加する時期であり、新型コロナウイルス感染症の重症患者だけでなく、他の傷病による重症患者の受入れが困難な状況が続いている」というコメントが寄せられています。
「ステージ4」ではなく、「ステージ3」であっても、新型コロナウイルスの流行による医療機関の負担は大きいのです。
2月末から緩み始めている「外出の自粛」
東京都の「新規陽性者数」や「入院患者数」は、2021年の1月にピークを迎え、その後は大幅に減りました。
しかし、直近では、その減り方が鈍くなっています。
その理由の一つが、「繁華街の人出」で分かります。
繁華街にいる人の数を見ると、12月までは高い水準が続いていましたが、1月8日の「緊急事態宣言」をきっかけにして大きく減りました。
しかし、2月の後半からは、また少しずつ増え始めています。
これから分かるように、1月は「緊急事態宣言」を受けて、不要不急の外出を避ける人が増えたので、新型コロナウイルスの勢いが無くなりました。
しかし、「緊急事態宣言」の期間が長くなり、ある程度の成果も見えてきたので、2月末になると気が緩んで外出する人が増えてしまったのです。
このまま予定通り「緊急事態宣言」を解除したら、新規陽性者数などがリバウンドして増えてしまうのではないかと思われても仕方がありません。
「緊急事態宣言」を2週間延長することで、新型コロナウイルスによる危機的な状況が続いているということを改めて知らしめたいというのが国の意図なのでしょう。
私達に求められているのは、気を引き締め、改めて基本的な感染対策を守ることなのです。