「緊急事態宣言」2カ月半ぶりの解除で、もう安心して大丈夫!?
2カ月半ぶりの「解除」
政府は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の「一都三県」に発令されていた「緊急事態宣言」を、3月21日で解除すると発表しました。
緊急事態宣言の解除は、1月8日の発令以来、約2カ月半ぶりです。
今回の緊急事態宣言は、新型コロナウイルスの流行を受けて、2021年1月8日に一都三県に発令されました。
その後、対象となる地域の増減はありましたが、一都三県だけは延長されていました。
一都三県の緊急事態宣言は、当初は2月7日に解除予定でしたから、1カ月半も期間が延びたことになります。
しかし、ニュースでは、新型コロナウイルスの新規陽性者数が、一時よりは減少したものの、再び増加傾向にあると伝えられています。
このような状態で、本当に緊急事態宣言を解除しても問題はないのでしょうか。
国や東京都の専門家会議の資料から、現在の状況を探ってみましょう。
国の指標は下回った
国の会議では、一都三県の状況について、次のように評価しています。
感染状況
- 新規感染者数を、「直近1週間の対人口10万人の値」で見ると、ステージの指標となっている15人を下回っている。
- 新規陽性者数は、他の地域と比べると高い水準が続いている。特に、東京と埼玉では増加の動きが見られる。
医療提供体制
- 新規感染者数と療養者数の減少に伴ない、自治体での入院等の調整も改善が続き、病床使用率もステージの指標を継続的に下回った。
これで分かるように、「感染状況」も「医療体制」も、緊急事態宣言の目安とされる「ステージ4」の指標は下回りました。
つまり、緊急事態宣言を解除しても、おかしくはない状態と言えるでしょう。
再び増加の兆候も
しかし、さきほどの評価で挙がっている不安が、ここ1週間ほどで、再び新規感染者が増え始めていることです。
例えば、東京都のグラフを見ると、3月10日の時点では、増加比は「96.3%」でした。つまり、前の週よりも、今週のほうが新規感染者が減っていました。
しかし、3月17日の時点では、増加比が「111.8%」でした。つまり、前の週よりも新規感染者が増えているのです。
専門家からは、次のように、再び増加に転じることを危惧する意見が出ています。
7週間続いた新規陽性者数の減少傾向が止まり、高い水準のまま、その増加比が100%を超えた。今後、変異株等により急激に感染が再拡大する可能性を踏まえ、増加比の推移に警戒が必要である。
緊急事態宣言を解除できたとはいえ、新型コロナウイルスの終息には、ほど遠いと言わざるを得ないでしょう。
対策を続けることに「疲れ」
しかし、「緊急事態宣言」が無駄だったわけではありません。
一都三県の新規感染者のグラフを見ると、今回の緊急事態宣言の時点から、新規感染者が大きく減ったことが分かります。
つまり、緊急事態宣言が、新型コロナウイルスの感染拡大を止めることに影響したことは間違いありません。
しかし、緊急事態宣言が2カ月以上に及んだことで、対策を続けることに対する疲れも見えます。
例えば、東京都の繁華街の夜の人出を見ると、緊急事態宣言の発令で大きく減っていたのに、2月下旬からは再び増え始めています。
あまりに長期に渡る緊急事態宣言によって、我慢し続けることに耐えられない人が出てきているのです。
緊急事態宣言を継続したとしても、これ以上は、新規感染者が減らない可能性が高いのです。
これで終わったわけではない
ここまで見てきたように、今回の緊急事態宣言の解除は「最悪の段階から、かろうじて抜け出した」という状態です。
けっして、「すべて元通りになって、新型コロナの不安がなくなった」わけではありません。
人間に例えれば、「病院を退院することができたけれど、病状の不安は残っており、通院して監視を続けなければならない状態」と思えば良いでしょう。
さきほど見たように、専門家からは「変異株による再度の流行拡大」を心配する声も上がっています。
ですから、緊急事態宣言が解除されたからと言って、気を緩めてはいけません。
これまでと同様に、「マスク」や「手洗い」「三密を避ける」など、基本的な感染予防対策を続けてください。
新型コロナウイルスとの共存は、緊急事態宣言が解除されることで終わったわけではないのです。