売上半減、赤字97億円の「ぐるなび」の苦境で分かる厳寒の飲食業界
97億円の赤字に転落
飲食店紹介サイトの「ぐるなび」が、2021年度(2020年4月~2021年3月)の決算を公開しています。
2021年度の売上は161億円で、前期より47.7%のマイナスでした。
当期純損失は97億円で、前期の9億円の黒字から赤字転落となりました。
ぐるなびは、飲食店からの掲載料と予約課金が収益の柱なので、飲食業界の動向が業績に反映されます。
この記事では、ぐるなびの決算説明会の資料をもとに、新型コロナウイルスによる飲食業界の変化を紹介します。
サイトへの掲載料が激減
ぐるなびの売上は、主に2つのサービスに支えられています。
一つは「ストック型サービス」で、ぐるなびへの掲載料を飲食店から受け取ります。掲載料は月に1万円と5万円のコースがあります。
もうひとつは「スポット型サービス」で、ぐるなび経由で行なわれた予約について課金を行います。
決算説明会の資料によれば、ストック型サービスでは、次のような影響がありました。
まず、2020年の最初の緊急事態宣言を受けて、多くの飲食店は休業を余儀なくされました。
その際にぐるなびは「休会」で応じました。
すると、これまで5万円の「販促正会員プラン」を使っていた店舗が、休会から復帰する際に、経費削減のために1万円の「ビギナー会員プラン」にしたのです。
そのため、第1四半期の「ストック型サービス」の売上は、前期の60億円から13億円へと、4分の1以下に減少しました。
2度めの緊急事態宣言が出た第4四半期については「休会措置は行わず柔軟に契約金額の見直しに対応した」としており、会費の割引などがあったようです。
また、退会も多いうえに、新規獲得が少なくなったため、前期末に55,505店あった有料加盟店が、今期末には44,532店へと、1万店以上減りました。
これだけ加盟店舗数が減ると、減収になるのが当然です。
同様に、「スポット型サービス」の前期の約9億円から約1億円まで、大きく下がりました。
「スポット型サービス」は、第3四半期に行なわれた「Go To Eat キャンペーン」によって、いったんは大きく回復しました。
しかし、2021年1月の再度の緊急事態宣言を受けて、「Go To Eat キャンペーン」が打ち切られたため、通年では大幅な減少となったのです。
「緊急事態宣言」に翻弄された飲食業界
このように見ていくと、飲食業界にとって、2020年4月と、2021年1月の2度の「緊急事態宣言」、そして2020年9月から始まった「Go To Eat キャンペーン」が、大きな影響を与えたことが分かります。
特に、2度の「緊急事態宣言」の発令に伴なう、営業時間の短縮や休業によって、経費の削減にも目が向けられ、「ぐるなび」の収益が大きく減少したのです。
このような、ぐるなびの姿は、飲食業界の現在の苦境が、そのまま表れたものと言って良いでしょう。
そして、それは3度目の緊急事態宣言によって、現在も続いているのです。
来年度も厳しい環境と赤字を予想
4月から始まった2022年度については、ぐるなびは、次のような厳しい見通しを明らかにしています。
新型コロナウイルスの感染状況は、変異株による感染再拡大やワクチン供給の遅れ等の懸念から不透明感は払拭されず、消費者の外食需要はコロナ前と比較し縮小した状態が続き、飲食店にとって厳しい経営環境が継続する
そして、今期に引き続き30億円の損失を想定しています。
損失を少しでも押さえて、回復へと向かうためにも、新型コロナウイルスの状況が落ち着く必要があるでしょう。