上場企業の「早期/希望退職」が1万人を超える。新型コロナと黒字リストラのハサミ撃ち
昨年を上回るペースで増加
企業情報調査会社の東京商工リサーチによれば、上場企業の「早期/希望退職」が、6月3日で1万人を超えました。
「早期/希望退職」を募集した上場企業は、すでに50社に及び、昨年よりもずっと早いペースで増えています。
募集が多い業種は「アパレル」と「電気機器」
「早期/希望退職」を募集した企業を業種別に見てみましょう。
一番多いのが「アパレル/繊維製品」で8社でした。
次に多いのが「電気機器」の7社です。
以下、「サービス(観光)」、「運送」、「外食」が4社で続きます。
赤字企業のリストラが増える
ここ数年の「早期/希望退職」は、企業自体の業績が「黒字」のもとで行なわれる「黒字リストラ」が目立ちました。
「黒字リストラ」は、「社員の年齢構成是正」や「製造拠点の見直し」、「業務のIT/オートメーション化」などを目的として行なわれるもので、一般には「40代以上」など年齢を指定して募集されます。
しかし、2021年は、企業の業績が「赤字」の比率が増え、68%に達しました。
新型コロナによる会社の業績の悪化が原因で、それに対応するために「早期/希望退職」を募集せざるをえない企業が増えたのです。
業種が違うとリストラの理由が違う
「早期/希望退職」を募集した企業の業績は、業種によってくっきりと別れています。
募集企業が多い「アパレル/繊維製品」では、8社中7社が「赤字」でした。
しかし、「電気機器」では、「赤字」は2社だけで、「5社」は黒字です。
「サービス」「運送」「外食」は、4社のすべてが「赤字」ですが、「自動車関連」は3社のすべてが「黒字」です。
つまり、「アパレル」「サービス」「運送」「外食」などは、新型コロナの影響を受けた「生き残るためのリストラ」です。
しかし、「電気機器」「自動車」などの製造業は、昨年までの流れを受けた「黒字リストラ」です。
同じ「早期/希望退職」の募集であっても、業種によって、その内容は異なっているのです。
この2つの流れは、今年後半も続く見込みです。
100社超えで、昨年以上のリストラに
東京商工リサーチでは、「2021年通期の募集企業数は昨年の93社を上回る100社超、募集人員はリーマン・ショック後2番目の水準となった昨年(1万8,635人)並みとなる可能性が高い」としています。
どちらの理由によるリストラにしても、まっさきに中高年が対象となることは間違いありません。
自社の業績に関わらず、常に人事/総務部門の動きに注意しておきましょう。
また、自社で募集があったときに、それに応ずるのかどうか、自分自身でシミュレーションしておきましょう。