高齢者は「何歳」まで働けるか、「何歳」まで働きたいか
70歳まで働くことができる道ができた
2021年4月に「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。
それによってサラリーマンの定年後の働き方が、少し変わりました。
これまで義務付けられていた「65歳までの雇用確保」に加えて、「70歳までの就業確保」が努力義務となりました。
65歳以上でも、会社から雇用されたり、「業務委託契約」や「社会貢献事業への従事」などで働く選択肢ができたのです。
しかし、定年後の働き方は一筋縄ではありません。
現在の高齢者が、実際に、何歳まで働きたいと思い、何歳まで働けているのかを見てみましょう。
データは、公益財団法人 生命保険文化センターが、60歳以上の高齢者に行なった調査を利用しています。
2020年10月から11月にかけて行なわれたインターネット調査には、全国の60歳以上の男女2,083人が回答しています。
「60代前半」で辞める人が多い「サラリーマン」
「何歳まで働けるか」という答えは、その人の働き方によって、大きく異なります。
ここでは「サラリーマン」「非正規社員」「自営業」ごとに見ていきましょう。
まず、会社員や公務員などの「サラリーマン」を見てみましょう。
「サラリーマン」の場合、「60代前半」は30%以上の人が働いていますが、「60代後半」になると、いきなり半分に減ってしまいます。
70代に入ると10%を切ってしまい、ぎりぎり残った人も「80代前半」までで終わります。
「70代」まで働ける「非正規社員」
ここで言う「非正規社員」は、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなどを含みます。
「非正規社員」は、「60代後半」になっても、サラリーマンほど急には減りません。
ただし、70代に入ると働いている人は10%を切り、80代に入ると、ほとんどいなくなります。
「80代」でも働いている「自営業」
これまでの2つに比べると、「自営業」はかなり違ったパターンになります。
「自営業」で働いている人は「60代前半」では10%ちょっとですが、「60代後半」になると、少し増えます。
これは、サラリーマンを辞めた人が業務委託契約などで、いったん自営業になって働いていることが影響しているのでしょう。
その後も、「80代後半」まで大きく減らずに働き続けています。
「サラリーマン」や「パート/アルバイト」に比べると、かなり高い年齢まで働き続けることができることが分かります。
「70代後半」が仕事の辞め頃
こんどは逆に「無職」の人の割合を見てみましょう。
「60代前半」では、「無職」の人は3割弱しかいません。
つまり7割ぐらいの人は、仕事を持って働いています。
しかし、「60代後半」「70代前半」と進むにつれて「無職」の人は増えていきます。
「70代後半」になると、「無職」の割合は8割を超えます。
だいたい、このあたりまでが、普通の人が働くことを辞める年齢なのでしょう。
そして、今回の調査では「90歳以上」は100%が「無職」でした。
つまり、「90歳以上」で働いている人は1人もいません。
まとめると、仕事の辞め頃は「70代後半」になるとき、そして「90歳」を超えると、すべての人が無職となっているというわけです。
仕事を辞めたい年齢は「数年から5年先」
実際に働いている高齢者は、何歳ぐらいまで働きたいと思っているのでしょうか。
調査結果によると、本人の年齢によって大きく異なります。
それぞれの年代で一番多い回答を見てみましょう。
- 60代前半 「65歳」
- 60代後半 「70歳」
- 70代前半 「75~79歳」
- 70代後半 「80代」
- 80代前半 「80代」
- 80代後半 「90歳以上」
つまり、自分の年齢よりも「数年から5年先」ぐらいで、仕事を辞めたいと思っている人が多いのです。
しかし、実際には、自分がその年令になったとき、働き続けられる条件があれば、働き続けている人が多いのでしょう。
そのため、定年などの制限がなく、自分が働き続けようと思えば働くことができる「自営業」では、「80代」になっても働いている人が多いのです。