3年連続で倒産が増加した「旅行業」。原因の9割が「新型コロナ」
「旅」に関する業界の倒産状況
企業情報調査会社の東京商工リサーチが、2021年前半の旅行業と宿泊業の倒産状況を公開しています。
旅行業と宿泊業は、いずれも、新型コロナウイルス対策による不要不急の外出の自粛や、県境を越える移動の制限、各地のイベント中止などを受けて苦しい状況が続いています。
今年前半は、東京都を中心に緊急事態宣言が何度も行なわれました。
そのため、「旅」に関する業界は、経営状況が苦しいことが予想されていました。
旅行業は3年連続で倒産が増加
旅行業の倒産は、「18件」に及び、3年連続で前年同期を上回りました。
年間では2014年以来、7年ぶりに30件を超える勢いです。
なお、「新型コロナウイルス感染拡大に伴う業況悪化」が原因の倒産は16件で、全体の約9割を占めます。
以前から業績が悪いところに、「新型コロナ」禍が追い打ちをかけたことが分かります。
東京商工リサーチでは「先行きの業況見通しは厳しく、過剰債務を抱えて資金調達が限界に達した小規模・零細企業による『あきらめ倒産』の増加が懸念される」としています。
宿泊業は昨年に比べると改善
一方、宿泊業の倒産は43件で、2年ぶりに前年同期を下回りました。
昨年前半の倒産は72件で、過去20年でも2番目に多く、それに比べると大幅に減少したのです。
しかし、倒産件数が減少したとはいえ、コロナ禍を原因とする倒産は22件で、全体の5割を占めています。
東京商工リサーチでは、「今なお、国内外ともに人の移動が制限され、当面の業況見通しが厳しい宿泊業では、経営破綻が増加に転じてもおかしくない」としています。
新型コロナが落ち着くまでは本格的な回復は難しい
東京都では、7月12日から、4度目の緊急事態宣言が発令されました。
それに伴い、東京オリンピックでは、ほとんどの競技が無観客で行なわれることになりました。
つまり、オリンピックの観戦を目的とした、東京への旅行が無くなってしまったのです。
また、観客を入れる予定であった、地方会場での競技も、東京からの観客の移動を恐れて、無観客へと切り替わる例が続いています。
これにより、旅行や宿泊のキャンセルが、ますます増えるでしょう。
このように、新型コロナウイルスを抑えるための施策は、旅行業と宿泊業にマイナスの影響を与え続けています。
需要を取り戻すための「GoToトラベル」も休止されたまま、再開のめどが経っていません。
少なくとも、今年いっぱいは、旅行業と宿泊業にとって、苦しい日々が続くでしょう。
本格的な業績の回復は、新型コロナウイルスの流行が落ち着く、来年以降になることは間違いありません。