今年前半の「休廃業」は、「倒産」の9倍。旅行業が急増
倒産の9倍もある「休廃業」と「解散」
企業情報調査会社の帝国データバンクによれば、2021年1月~6月の倒産件数は「3,083件」で、昨年同期よりも21.8%少なくなりました。
しかし、倒産ではなく、休業や廃業、そして解散などを選んだ企業は「28,400件」に上ります。
休廃業や解散を選ぶ企業は、倒産した企業の9倍も多いのです。
しかも、休廃業や解散をした企業の56.0%は黒字でした。
つまり、半分以上の企業は、黒字なのに事業を停止してしまったのです。
帝国データバンクでは、「先行きの見通しの立たない中、財務内容やキャッシュに余裕のある企業が『あきらめ型』の廃業や解散を選択している可能性がある」としています。
旅行業の休廃業は過去最高のペース
前年の同じ時期よりも、休廃業や解散が増加した業種を見てみましょう。
一番多いのは、アパレルの「男子服卸売」でした。
そして、「一般旅行業」を始めとする旅行業が多く、「旅行代理店」「ホテル/旅館」などが入っています。
このため、旅行業全体の休廃業と解散は、過去最多のペースとなっています。
支援と気持ちが切れたときに休廃業が急増する恐れ
2021年の上半期は、新型コロナによる「緊急事態宣言」が出され、外食産業やサービス業を中心に引き続き厳しい経営環境が続きました。
しかし、政府・民間金融機関による活発な資金供給やコロナ対応の補助金もあって、倒産件数は少なくなっています。
逆に言えば、政府の支援が途切れたら、また、新型コロナウイルスに対する先行きの見通しが立たなくなったら、事業の停止を選ぶ事業者が急増する可能性があります。
そして、ギリギリまで追い込まれて周囲に迷惑を掛ける「倒産」ではなく、傷が浅いうちに撤退する「休廃業」や「解散」という選択もあるのです。
新型コロナの影響を見るときは、「倒産件数」だけではなく「休廃業」や「解散」など事業を停止した業者の数にも注意が必要なのです。