新型コロナの影響で、首都圏を脱出する企業が過去最多に
「転入」「転出」とも過去最多のペース
首都圏から本社を移す企業が、過去最多のペースであることが分かりました。
企業情報サービスの帝国データバンクが公開した調査結果によれば、2021年前半に、首都圏から転出した企業は「186社」でした。
今年後半もこのペースで行くと、1990年以降で最多になる可能性があります。
一方、首都圏に転入してくる企業も「172社」と多く、こちらも過去最多になる可能性があります。
なお、この調査では、「首都圏」を東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県と定義しています。
転出先は「大阪」が最多
首都圏から「転出」した企業は、どこに行ったのでしょう。
転出先として一番多いのは「大阪」でした。
首都圏から距離があっても、人口の多い大都市に移転する企業が多いのです。
似た条件である「愛知」と「福岡」も、10位以内に入っています。
次に多いのが「茨城」でした。
これは、首都圏と接している地域への転出です。
同じ条件の「静岡」や、「群馬」「栃木」も10位以内に入っています。
この2つの流れ以外では、「北海道」が人気を集めており、昨年1年で7社だった転出が、今年前半だけで14社に増えています。
転入元も「大阪」が最多
では、首都圏に「転入」してくる企業は、どこから来たのでしょうか。
転入元で一番多いのも「大阪」でした。
36社が首都圏に転入しており、2位の2倍以上の規模です。
大都市がある「愛知」「福岡」も10位以内に入っており、離れた都市から首都圏を目指す流れが続いていることが分かります。
次に多いのが「北海道」で、首都圏と強いつながりがあることが分かります。
そして、首都圏と隣り合った県からの転入も多く、「茨城」「群馬」「静岡」「栃木」が10位以内に入っています。
「首都圏」だけが正解ではない
首都圏から転出する企業が増えたことについて、帝国データバンクでは、新型コロナウイルス感染症の影響を指摘しています。
新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言の発出などにより、本社機能や主要拠点が首都圏に集中することの脆弱性が改めて認知されたことで、本社など主要拠点を地方に移転・分散する動きが進んでいる。
特に、テレワークの常態化が進む首都圏の大手企業では、オンライン会議システムの利用などで通常業務に大きな支障が無いなど前向きな反応も広がり、人材派遣大手のパソナグループをはじめ東京オフィスの縮小・移転といった動きが広がっている。
一方で、首都圏に転入する企業も多く、東京を中心とする首都圏に進出するメリットや意欲が無くなったわけではありません。
新型コロナの流行により、これまでの「東京への一極集中」という流れに対して、別の選択肢が示されたと考えるべきでしょう。
「ともかく首都圏へ進出すれば良い」というわけではなく、その企業の業種や考え方によって、本社を置く場所を選ぶ時代になったのです。