たった3カ月で1兆8千億円を稼いだGPIFの儲け方

[2021/11/8 00:00]

真似できるものなら真似したい

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2021年第2四半期(7~9月)に、「1兆8,763億円」の収益を上げました。

たった3カ月で、1兆8千億円という巨額の利益を得たのです。

どうしたら、このような利益を得られるのでしょうか。

私達が自分の投資において、参考になるような方法だったら真似をしたいものです。

公開されている資料をもとに、GPIFの儲け方をさぐってみましょう。

何が儲かるか分からないので「分散投資」している

GPIFは、私達の年金の積立金を運用している機関です。

その目的は、いま余っている年金の資金を運用して、将来の年金に備えることです。

公的な年金を預かっていますから、その投資方針は、かなり保守的です。

簡単に言えば、国内と国外、株式と債券に、4等分して投資しています。

出典:GPIF

第2四半期の収益状況を見ると、プラスになっているのは「国内株式」と「国内債券」で、「外国株式」と「外国債券」はマイナスでした。

「国内株式」が5%以上の収益率を上げて、利益のほとんどを稼いでいます。

出典:GPIFのデータをもとに編集部が作成

しかし、ここで「そうか、国内株式が儲かるのか。オレも投資しよう」と思ってはいけません。

1つ前の第1四半期を見ると、「国内株式」はマイナスでした。

その代わり、「外国株式」「外国債券」「国内債券」が稼いでいたのです。

出典:GPIFのデータをもとに編集部が作成

このように、四半期ごとにみても、儲かる部門と、損をする部門は、入れ替わっています。

GPIFといえども、その投資がプラスになるのか、マイナスになるのかは分かりません。

そのため、4つの部門に分けて、投資をすることで、投資の安全性を高めているのです。

これは、「分散投資」という方法で、安全性を求める投資の際の基本です。

つまり、GPIFがやっていることは、特別なことではなく、投資の基本どおりに「分散投資」をしているだけなのです。

投資している金額が巨額なので、プラスもマイナスも大きく見える

では、どうして普通のことをやっているのに、GPIFは巨額の収益を上げているのでしょうか。

1つの理由は、運用しているお金が大きいことです。

「1兆8千億円も稼いだ」とか、逆に「1兆8千億円の損失が出た」と聞くと、私達は、ものすごく大きな黒字や、壊滅的な赤字と感じてしまいます。

しかし、GPIFは「194兆円」という巨額の資金を運用しているので、1兆8千億円でも、1%未満でしかありません。

少し前に、10兆円を超える赤字となった四半期がありましたが、それでもGPIFの投資額全体から見れば「数%の赤字」なのです。

GPIFのような巨額の投資について考えるときは、金額ではなく、投資額全体に対する割合で考えなければいけません。

ちなみに、私達が100万円を投資したとすれば、今回のGPIFの収益率「0.98%」では、「9,800円」の収益です。

GPIFにあやかって、同じように投資をしたとしても、投資する金額が違いますから、GPIFのように巨額の利益が上がるわけではありません。

逆に10兆円の赤字であっても、GPIFから見れば、収益率はマイナス5%です。

100万円の投資に置き換えれば5万円の赤字です。

たしかに痛い金額ではありますが、取り返しのつかないような巨額な赤字ではないことが分かります。

長く投資を続けることで、赤字だったときの影響を減らす

GPIFが儲けている、もう1つの理由が「長期投資」です。

GPIFは、2001年から運用を始めましたから、もう20年も投資を続けています。

通算で見ると、3年に1度は収益が上がらずに「赤字」となっています。

つまり、GPIFとて、勝ち続けているわけではなく、言ってみれば「2勝1敗」でしかありません。

しかし、「黒字」になったときの資金は、そのまま投資されているので、だんだん黒字が積もっていきます。

そうすると、赤字の年があったとしても、ずっと通してみると、トータルでは黒字となっています。

言ってみれば、時間を味方に付けて、短期的な赤字の影響を少なくしているのです。

出典:GPIF

金額に驚かず、収益率をチェック

GPIFの投資方針を見ると、「分散投資」「長期投資」で、特別なものではありません。

ただし、運用している資金が大きいため、とても儲かったり、損をしたりしているように見えます。

GPIFについてのニュースをチェックするときは、「金額」ではなく「収益率」を見てください。

できれば、自分が100万円を投資していると仮定して、その収益率では、どれぐらいの黒字や赤字になるのか計算してみましょう。

そうすれば、「年金運用資金が10兆円以上の赤字だ。もう日本の年金制度は終わりだ」とか、「たった3カ月で何兆円も儲けたGPIFと同じ方法で投資しますから、絶対に儲かります」という、デマに惑わされることはありません。

[シニアガイド編集部]