「食費」が支出の3割を超える、定年退職後の家計
「無職世帯」の家計の実態
定年退職して仕事を離れると、家計も大きく変わります。
東京都の調査データを使って、無職の高齢者の家計をのぞいてみましょう。
もととなった「東京都生計分析調査」は、都内の792世帯の家計を、6カ月間記録したものです。
今回は、このうち214人の「無職世帯」のデータを使用します。
収入の柱は「年金」
無職世帯の実収入は「23万5,231円」でした。
このうち、78%にあたる「18万3,738円」は、「社会保障給付」つまり「年金」です。
無職世帯の世帯主の平均年齢は「75.1歳」なので、年金が収入の柱となっています。
年金以外の収入が22%あり、金額では「5万1,493円」です。
中身は、家族の収入や、家賃収入などです。
しかし、この2つを足しても支出に対して足りません。
貯金を取り崩すなどして埋めている「不足金」が「5万7,388円」もあります。
そして、不足金も含めた金額は「29万2,619円」になります。
つまり、無職世帯でも、月にだいたい30万円ぐらいのお金が必要なのです。
税金と健康保険が約4万円
今度は支出を見ていきましょう。
「29万2,619円」のうち、最初に出ていくのが「税金/社会保険料」です。
金額は「39,396円」ですから、月に4万円は引かれることになります。
公的な支出は、将来の想定では忘れられがちですが、馬鹿にできない金額なのです。
「税金/社会保険料」を抜いた残りを「消費支出」と言います。
今回の調査では「25万3,223円」でした。
これが、実際の家計費と思えば良いでしょう。
支出の3分の1以上が「食費」
消費支出で一番大きい用途は「食料(食費)」です。
食費の割合を「エンゲル係数」と言いますが、今回は31.3%でした。
同じ調査の「勤労者世帯」では26.4%ですから、かなり差があります。
無職世帯はエンゲル係数が高く、支出の3分の1以上が「食費」で消えてしまいます。
以下、「住居費」「水道光熱費」「保健医療費」「交通/通信費」「教養娯楽費」などが、それぞれ1割弱です。
食費は「8万円」、光熱費は「2万円」
実感を得やすいように、「消費支出」の用途をパーセントではなく金額で見てみましょう。
- 食費 79,382円
- 住居費 23,296円
- 水道光熱費 20,297円
都内なのに「住居費」が安いのは、家賃が掛からない持ち家の人が多く、平均値を下げているのでしょう。
- 教養娯楽費 24,759円
- 諸雑費 20,670円
- 交通/通信費 20,104円
- 保健医療費 18,792円
- 交際費 18,084円
- 小遣い 5,674円
「交際費」と「諸雑費」が意外と多いの対して、純粋な「小遣い」は5千円しかありません。
自分の家計を考えるときの参考に
「無職世帯」の家計を見ると、収入だけでは生活できず、月に5万円ほどの不足が生じていることが分かりました。
つまり、年金だけでは生活できず、貯金を取崩すなどして埋めているのです。
ただし、今回の調査結果はあくまでも平均値であることを忘れてはいけません。
もっと少ない金額で生活している人もいますし、逆にもっとお金を使っている人もいます。
自分が、どのような定年後の生活を送るかは、自分で考える必要があります。
そのときに、どんな収入と支出が必要なのか、今回の調査結果が参考となるでしょう。