年金を受け取りながら働いていると減額される「在職老齢年金」。65歳未満の基準が「47万円」に
年金と給与が多いと、年金が減らされる
年金を受け取りながら働いている人にとって「在職老齢年金」は気になる制度です。
「在職老齢年金」は、会社の厚生年金保険に加入した状態で、老齢厚生年金を受け取っている人を対象とした制度です。
具体的には、職場からの「給与」と、支給されている「年金」の合計が、基準となる金額を超えると、年金が減額されます。
年金を受け取る側からすると、あまりうれしくない制度なのです。
4月から制度が改正された
しかし、2022年4月に、制度の改正がありました。
本人が65歳未満の場合、基準となる金額が「28万円」だったのが「47万円」に変わりました。
これで「在職老齢年金」の対象となる人が、だいぶ少なくなったのです。
それでも、年金を受け取りながら、働いている人にとって「在職老齢年金」の知識は必須です。
改正後の制度をもとに、注意点を紹介しましょう。
「総報酬月額相当額」という数字を使う
「在職老齢年金」は、職場からの「給与」と、支給されている「年金」の合計の金額が重要です。
ここで「給与」と言っているのは、社会保険関係で使う「総報酬月額相当額」という金額です。
給与の「手取り」や「振込金額」とは異なりますので、注意してください。
また、月々の給与だけではなく、ボーナス(賞与)も含めて計算されますから、思っていたよりも大きな金額になることがあります。
自分の「総報酬月額相当額」については、勤め先の会社の総務部門に聞いて確認するのが確実です。
年金の金額は「報酬比例部分」を見る
「在職老齢年金」の計算で使うのは、「老齢厚生年金」の月額です。
これを「基本月額」と言います。
「ねんきん定期便」で確認するときは、「報酬比例部分」という欄にある金額を見てください。
「老齢基礎年金」や「加給年金」の部分は含まれませんから注意してください。
差し引かれる金額の計算方法
「在職老齢年金」では、「総報酬月額相当額」+「老齢厚生年金」が、47万円を超えているかどうかが問題となります。
超えていなければ、「老齢厚生年金」がそのままの金額で支給されます。
超えている場合は、「47万円を超えた金額の半額」が、年金から差し引かれます。
例えば、「総報酬月額相当額」が40万円、「老齢厚生年金」が13万円とします。
この2つの収入の合計は、40+13ですから、53万円になります。
これは、47万円を超えていますから、年金が差し引かれます。
差し引き額は、「(53-47)÷2」ですから、3万円です。
「老齢厚生年金」は、13万円から3万円引かれて、10万円が支給されます。
つまり、53万円だったはずの収入が、在職老齢年金によって50万円になってしまうのです。
65歳から支給開始とは限らない
なお、老齢厚生年金の支給は、基本は「65歳」ですが、それ以前に受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」という制度があります。
1961年4月1日以前に生まれた男性と、1966年4月1日以前に生まれた女性は、「特別支給の老齢厚生年金」の対象になります。
ひょっとすると、65歳以前から年金を受け取る可能性がありますから、確認しておきましょう。
年金をもらい始める前に確認を
今回の改正で、「在職老齢年金」の基準額が大きくなったので、対象となる人は少なくなりました。
それでも、自分の老齢厚生年金の振込が始まる前に、自分が「特別支給の老齢厚生年金」や「在職老齢年金」の対象であるかどうかは確認しておきましょう。
自分ではわからないときや、在職老齢年金による減額を避けるために「総報酬月額相当額」を調整する場合は、会社の総務部門に相談してください。