年金を運用しているGPIFが、3四半期連続の赤字
リーマンショック以来の3連続赤字
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用成績が、3四半期連続で赤字となっています。
四半期(3カ月)単位の決算が、3回連続で赤字になるのは、2008年のリーマンショック以来となります。
歴史に残る恐慌と同じレベルの何かが、投資市場で起きている可能性があります。
GPIFの赤字の内容から、その変化の大きさを探りましょう。
今回は「7兆円」の赤字
GPIFが、直近の3四半期で受けた赤字は「7兆6,752億円」です。
これは、GPIFの総資産「192兆968億円」の、約4%にあたります。
これによって、「将来の年金の支給に影響がある」という規模ではありませんが、赤字の原因を確認して置かなければならない金額です。
GPIFは創立以来「99兆9,567億円」、昨年だけでも「10兆円」の利益を上げており、いつも赤字を垂れ流している無能な組織ではありません。
それだけに、今回の3四半期連続赤字は深刻なのです。
分散した4分野の投資が全滅
では、この3四半期の赤字は、どの投資分野から発生したのでしょうか。
GPIFは、国内外の債権と株式の4つの分野に、それぞれに資産の4分の1ずつを投資しています。
しかし、2021年からの3四半期において、利益を出した分野はありませんでした。
投資を分散するのは、リスク(危険)を避けるためですが、この3四半期について言えば、すべての分野で悪い結果となったのです。
最大の赤字は「海外株式」
この3四半期に一番大きな赤字を出したのは「海外株式」です。
2021年の第1四半期と第3四半期には大きな黒字を出していましたが、直近の3四半期は赤字続きです。
海外株式は、上昇局面が終わり、株価が低迷しています。
GPIFも、その影響を受け、大きな赤字を出してしまいました。
また、「海外株式」よりも、リスクが低いとされる「国内債権」も赤字が続いています。
市場の混乱を招いた複数の要因
直近の3四半期で、国内外の債権/株式市場が低迷したのは、複数の理由があります。
まず、2022年2月には、ロシアのウクライナ侵攻が始まりました。
また、アメリカのインフレが進み、その対策として、米国中央銀行(FRB)が大幅に公定金利を上げました。
これにより、「海外債権」と「海外株式」の市場が大きく影響を受けました。
さらに、国内では円安の影響も加わり、「国内株式」と「国内債権」も不安定な状況に追い込まれています。
GPIFは、危険な投資をしていたわけではありません。
しかし、2022年のように世界に大きな変動があり、市場全体が混乱してしまうと、赤字となってしまいます。
今回のGPIFの赤字は、「どんな投資でも、“絶対に安全”な投資はない」という教訓を思い出す、良い機会となりました。
GPIFは長期的な投資ができるので、これから取り戻すチャンスがあります。
しかし、もしこれが個人の投資で、資金切れで撤退してしまったら赤字のままです。
今回のGPIFの赤字は、個人が投資する際に参考とすべき教訓がたくさん含まれているのです。