税務調査で見つかる申告漏れは1件当たり「256万円」。経営コンサルタントは「2,266万円」
ある日かかってくる一本の電話
毎年、確定申告をするフリーランスにとって恐怖の対象は、税務署の「税務調査」でしょう。
例えば、申告が終わって、しばらく経ったある日、「ご提出いただいた申告書の内容について、いくつかお尋ねしたい点がありまして。いえ、こちらから係員がお伺いいたしますから」というような電話が入ります。
そして、指定の時間に待っていると、2人組の係員がやってきます。
過去の帳票は、ゆっくりと丁寧にチェックされ、あったはずの収入が記帳されていないことが分かります。
そう、隠していた臨時の仕事の収入がバレたのです。
こうなれば、修正申告に追い込まれて、追加で納税するしかありません。
さらに、悪質な脱税であれば、「重加算税」などの重い懲罰が用意されています。
ここまで想像すれば、少しでも後ろ暗いところのあるフリーランスにとって、それがどんなに怖いことかが分かります。
では、この「実地調査」を受けた人は、何人いるのでしょうか。
そして、調査を受けるような人は、どんな職業で、どれぐらい収入を隠していたのでしょうか。
国税庁のデータをもとに、税務調査について紹介します。
1年の調査は「60万件」
今回参照するのは「令和3年事務年度」のレポートです。
国税庁の事務年度は「7月1日から6月30日」ですから、2021年7月から2022年6月の分ということになります。
この期間に行なわれた調査は「60万件」でした。
そのうち、申告漏れなどが見つかったのは「31万7千件」でした。
調査に入られると、半分以上の確率で違反が見つかるのです。
実地調査1件当たりの追徴税額、つまり追加で払った税金は、「256万円」でした。
違反の大きさで3つのコース
税務署の調査には、3つの段階があります。
- 特別調査/一般調査
高額/悪質な違反を対象とします。10日以上の日数を確保して行なわれます。 - 着眼調査
申告漏れ等が見込まれる個人を対象とします。訪問して短期間で行ないます。 - 簡易な接触
文書や電話を使った連絡、または来署依頼による面接を行ないます。
「特別調査/一般調査」と「着眼調査」を「実地調査」と呼びます。
これがだいたい3万件で、残りが「簡易な接触」です。
それぞれの調査では、見つかった申告漏れの金額に大差があります。
- 特別調査/一般調査 1,613万円
- 着眼調査 431万円
- 簡易な接触 53万円
つまり、「特別調査/一般調査」が行なわれるのは、1千万円以上の申告漏れが見込めるような大きな違反が疑われる場合です。
これが、「着眼調査」になると、数百万円程度になります。
凄いのは「簡易な接触」でも、申告漏れを認めている人がいることです。
つまり、後ろ暗いところがある人は、ちょっと問い合わせがあったぐらいでも、申告の不備を認めてしまうのです。
税務署という存在が、恐怖の対象であることが分かります。
申告漏れが大きい職業ランキング
所得税の申告漏れは、職業によって大きな差があります。
そもそも、たくさん稼いでいる職業でなければ、申告漏れが大きくなりません。
また、複数の収入源から毎日収入があるような職業の方が、収入をごまかしやすいでしょう。
今回、一件あたりの申告漏れが大きかった職業の1位は「経営コンサルタント」でした。
申告漏れの金額は「2,266万円」で、追徴税額は「611万円」になります。
漏れた分だけで2千万円ということは、その何倍もの収入があることが推測されます。
2位はコンピューター関係の「システムエンジニア」で「2,150万円」です。
3位はペットの繁殖を行なう「ブリーダー」で「2,136万円」です。
「ブリーダー」は、昨年度までは「小売業・犬」に分類されていましたが、今回は単独で取り上げられています。
それだけ、悪質な申告が多かったのでしょう。
風俗業からコンピューター関連へ
なお、新型コロナ以前は「風俗業」と「キャバレー」「キャバクラ」など、広い意味での風俗業が上位に入っていました。
しかし、ここ2年は「プログラマー」や「システムエンジニア」などのコンピューター関連の業種が入っています。
コンピューター系の職種では、受発注や納品などがオンラインで完結してしまうことが珍しくありません。
そのため、収入をごまかしやすいと思われるのでしょう。
しかし、税務署は銀行口座を中心とするお金の動きを把握しています。
臨時の仕事を受けなかったことにして、受発注の記録を隠したとしても、報酬の支払いの記録からバレてしまうのです。
小手先の節税に走って、「実地調査」や「簡易な接触」を受けるぐらいならば、公正な判断による、正しい納税を心がけましょう。