東京電力、6月から電気料金を3割値上げ。すでに去年から高くなっているのに、今度は何が違うのか
6月からの値上げを申請
東京電力は、2023年6月に行なわれる電気料金の値上げを、政府に申請しました。
「昨年後半から、すでに料金が高くなっているのに、いまさら何が変わるのか」と思っている人も多いでしょう。
この記事では、これまでの値上げと、6月の値上げの違いを中心に紹介します。
これまで上がったのは「燃料費調整額」
実は、昨年後半から上がっている料金は、電気料金本体ではなく、「燃料費調整額」と言う部分なのです。
「燃料費調整額」は、電力会社が使用している燃料の値段が上がるにつれて、引き上げられてきました。
例えば、2022年4月には1kWh当たり「2.06円」でしたが、2022年8月には「4.64円」になりました。
つまり、たった4カ月で2倍に上がりました。
東京電力の一般家庭モデルの1カ月の使用量は「260kWh」で計算されています。
それで「燃料費調整額」を計算すると、4月は「535.6円」だったのが、8月は「1,055.6円」に上がったことになります。
エアコンを使う夏場には、使用量が500~600kWhになることが多いので、「燃料費調整額」だけで千円以上高くなったことになります。
これだけ上がれば、電気料金が高くなったと感じていても不思議ではありません。
今度の値上げは「電気料金本体」
ここまでの値上げの理由は分かりましたが、今回の値上げはどう違うのでしょうか。
実は、「燃料費調整額」は、法律で上限が定められています。
東京電力の計算では、本来は「燃料費調整額」は「11.81円」になるところですが、上限があるため「4.66円」に抑えられています。
つまり、燃料費の高騰に対して、「燃料費調整額」では調整しきれなくなりました。
仕方がないので、今度は電気料金自体を値上げすることになったのです。
電気料金の値上げには、政府の承認が必要なので、少し先の6月の値上げを申請したわけです。
今回の申請では、平均「29.31%」、ほぼ3割の値上げとなっています。
一般家庭で「2,611円」の値上げ
今回の値上げでは、どれぐらいの影響が出るのでしょうか。
一般家庭を想定した「30A」契約で「260kWh」のモデルでは、「9,126円」が「11,737円」に上がります。
値上げ幅は「2,611円」、値上げ率で言うと「28.6%」になります。
使う量が少ない家庭にも影響が
少し細かい話になりますが、「従量電灯B」では、電気料金は使用量によって、3段階に分かれています。
これは、生活に不可欠な分については、電気を安く提供するためです。
1kWh当たりの料金は、それぞれ「9.83円」ずつ上がって、次のようになります。
- 第1段階料金 25.01円→34.84円
- 第2段階料金 31.61円→41.44円
- 第3段階料金 35.70円→45.53円
一番低い第1段階も値上げの対象ですから、あまり電気を使わない家庭でも、確実に値上げの影響を受けます。
というわけで、6月に予定されている値上げは、3割も上がる大幅な値上げであり、これまでの「燃料費調整額」の値上げ以上の影響が及ぶでしょう。
「自由化部門」の値上げ幅が小さい理由
ここまで紹介したのは、「規制料金」と呼ばれる枠組みで、家庭用の「従量電灯B」などのプランです。
「規制料金」は、その名のとおり、「燃料費調整額」の上限や値上げの承認など、政府による規制が行なわれるプランです。
実は、電力プランには、「自由化部門」と呼ばれる、もう1つの枠組みがあります。
こちらは、2016年の電力自由化の後に用意されたもので、家庭用には「スタンダードS」などのプランが用意されています。
今回、「自由化部門」も値上げされましたが、値上げ幅は平均「5.28%」で、規制料金よりも小さくなっています。
それならば、「従量電灯B」のユーザーは、「スタンダードS」に乗り換えた方が得なのかというと、そうとは限りません。
なぜなら、「自由化部門」の料金設定は、電力会社が自由に定めることができます。
「規制料金」のように、値上げについて政府の許諾を取る必要がありませんし、「燃料費調整額」も自由に変更できます。
つまり、「自由化部門」の料金は、今の時点で、すでに大きく値上げ済みなのです。
その証拠に、6月以降の「スタンダードS」の電気料金は、「従量電灯B」と同じになります。
値上げ幅が小さくても、安いわけではありません。
現在のように、すべての物の価格が上昇しているときは、政府の規制が入る古いプランの方が有利な場合もあります。
今後の動向によっては、「スタンダードS」から「従量電灯B」に戻すほうが有利な場合もあるでしょう。
自分の使用条件に合わせて、検討することをおすすめします。