首都圏を離れる企業が増加。転出企業は過去20年で最多
首都圏を離れる企業が増えている
調査会社の帝国データバンクによれば、首都圏から地方へ本社を移転する企業が増加しています。
2022年に、東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏から、他の県へ転出した企業は「335社」に上りました。
これは、過去20年で最多となっています。
一方、他の県から首都圏への転入は「258社」に留まりました。
つまり、転入よりも転出の方が多い「転出超過」の状態になっています。
首都圏では、ずっと転入超過の状態が続いてきましたが、新型コロナウイルス感染症をきっかけとして、2年連続で「転出超過」となっています。
他の大都市や、北関東へ転出
首都圏からの転出先で多いのは、つぎの5つです。
- 茨城
- 大阪
- 愛知
- 群馬
- 北海道
一方、首都圏への転入が多いのは、つぎの5つです。
- 大阪
- 愛知
- 北海道
- 福岡
- 茨城
転出/転入とも、大都市部、北関東3県、そして北海道が多くなっています。
これらは首都圏と関係が深い地域と言えるでしょう。
特に「北海道」は、コロナ前に比べて、転出企業が増えており、本社や研究施設、ワーキングスペースなどの受け皿として注目されています。
転出は「サービス業」が多い
首都圏からの転出が多い業種を見てみましょう。
一番多いのは「サービス業」で、100社を超えました。
サービス業は、物流センターや工場など大規模な施設を必要としないため、首都圏からの転出をしやすいのでしょう。
特に、テレワークなど、離れた場所でも作業しやすい、「ソフトウェア産業」が多くなっています。
そして、「製造業」「卸売業」「小売業」などが続きます。
転出は小規模な企業が中心
首都圏から転出した企業は、年間の売上が「1億円未満」の小規模な企業が中心です。
2022年の転出企業は「149社」でした。
しかし、「1~10億円未満」も大幅に増加しており「143社」に達しました。
これは、1990年以降で、もっとも多い件数です。
「赤字」で転出から、「黒字」のまま転出へ
首都圏から転出する理由は、この3年間で変化が見られます。
2020年は、新型コロナによる業績の急変で、オフィス賃料が高い首都圏から地方へと移転する動きが中心でした。
しかし、2022年は、Web会議を活用したビジネススタイルや、リモートワークなど場所に縛られない多様な働き方など、労働環境の変化によるものが増えています。
移転した年の業績を見ても、2020年は「赤字」の企業が半分以上を占めていました。
しかし、2022年は「黒字」の企業の方が多くなっています。
「赤字」に追われて都落ちするのではなく、新たな挑戦を試みるために「黒字」でありながら地方を目指すという前向きな企業が増えているのです。