「唐揚げ店」の倒産が過去最多。競争激化の上に、たび重なる逆風
「唐揚げ店」の倒産が過去最多
調査会社の帝国データバンクによれば、持ち帰りを中心とした「唐揚げ店」の倒産が増えています。
2023年上半期の倒産は「9件」でした。
これは、これまで一年間で最多だった2021年の6件を大幅に上回っています。
もともと「唐揚げ店」は、零細な企業が多いため、倒産の手続きを取らない閉店や廃業を含めると、もっと多くの店舗が消えたと思われます。
出店しやすさが魅力の「唐揚げ店」
「唐揚げ店」は、ここ数年で大幅に店舗数を増やしていました。
「唐揚げ」は、冷めても味が落ちにくく、自宅での調理が敬遠されがちなため、自宅に持ち帰って食べる「中食」用のおかずとして人気となったのです。
さらに、「唐揚げ店」は、大きな店舗を必要とせず、初期投資が抑えられます。
調理などのオペレーションも容易で、原料が鶏肉のためコストが低いというメリットもありました。
つまり、出店しやすい魅力的なフォーマットだったのです。
特に新型コロナの流行が始まってからは、居酒屋から業態転換を図ったワタミなど、他業種からの参入が続きました。
また、フランチャイズチェーンを利用して、個人が起業して運営する例もありました。
競争激化の上に、たび重なる逆風
しかし、出店数が増えれば競争も激しくなります。
都市部を中心に競争が激化し、大手では出店ペースを抑え始めました。
すでに「唐揚げ店」市場は、ライバルが多くて競争が激しい、いわゆる「レッドオーシャン」と化しているのです。
東京23区では、市場競争に負けて、出店からわずか半年で閉店に至った実例もあります。
その上、新型コロナによる外出制限の終了により、持ち帰り飲食市場自体が小さくなるという逆風も吹いています。
さらに、輸入鶏肉や食用油など原材料価格の上昇により、「唐揚げ店」の強みだった原価の安さが消えてしまいました。
例えば、2年前に比べて、輸入鶏肉は2.5倍、キャノーラ油は1.7倍に急騰しています。
もちろん唐揚げの値上げも行なわれていますが、もともとがB級グルメ的存在であり、大幅な値上げはできません。
そのため、安価なムネ肉を使った唐揚げや、素材にこだわった唐揚げなど、差別化を図るための商品開発に走っているのが現状です。
それでも、「唐揚げ」という枠の中で、差別化することは容易ではありません。
競争の激しい都会を中心に、今後も唐揚げ店の淘汰が進むでしょう。