新型コロナの影響で、健康保険料が払えずに倒産する会社が続出。滞納している会社が5%を超える
「公租公課」は会社の義務
会社には、さまざまな義務がありますが、特に重要なのが「公租公課(こうそこうか)」です。
「公租」とは法人税を始めとする税金を、「公課」は健康保険や厚生年金など保険料を指します。
このうち、税金の重さは知られていても、保険料の負担についてはあまり知られていません。
実は、会社員が加入している厚生年金保険料と健康保険の保険料は、会社が半分を負担しています。
しかも、この保険料は、毎月支払う義務があります。
会社の業績に関係なく、一定の金額を支払わねばならないので、経営に影響が及ぶほどの大きな負担なのです。
倒産の原因は「健康保険料」
新型コロナによって、会社の経営が傾くと、保険料を滞納する会社が大量に発生しました。
それを受けて、2020年からは、保険料の納付猶予が行なわれていました。
ただし、保険料の支払いを待ってくれるだけで、免除されたわけではありません。
そのため、2023年に納付の猶予が終わると、溜まっていた保険料が原因となった会社の倒産が増えています。
企業情報サービスの帝国データバンクによれば、保険料が原因となった倒産は、11月の時点で「111件」に達しました。
保険料の差し押さえで倒産した実例
例えば、パチンコホール大手の「ガイア」は、業績不振によって消費税と社会保険料の支払いができず、差し押さえ処分を受けてしまいました。
それが引き金となって、民事再生法の申請に至ったのです。
また、韓国食材スーパーの「永山」は、社会保険料の猶予を受けており、社会保険料の滞納額は7億円に上りました。
しかし、業績を立て直すことができず、当局からの差し押さえの予告通知を受け、事業の継続を断念して破産に至りました。
5%以上の会社が健康保険料を滞納している
日本年金機構によると、厚生年金保険を含む社会保険料を滞納している会社は、2022年度末時点で14万811社に上ります。
これは、納付の義務がある会社の「5.2%」にあたります。
また、厚生年金保険料などの差し押さえ件数は2万7,784事業所で、その前年の4倍に増えました。
すでに、かなり多くの会社が、社会保険料の負担に耐えられない状態であることが分かります。
一般には、会社経営において、社会保険料の負担は軽く見られがちです。
しかし、実際には、その負担は大きく、いったん経営が傾いた会社にとっては倒産に至る要因なのです
特に、新型コロナによって、保険料を猶予または滞納していた会社にとって、ここしばらくは注意が必要でしょう。
健康保険料の未納が続く状態は、会社にとって「倒産に至る症状」の一つなのです。