第64回:SNSのタイムカプセル投稿は何年先まで使えるのか
自分の死後に、あらかじめ設定していたツイートを発信するサービス「desubot(デスボット)」が2021年7月末に提供を終了しました。
4カ月前にベータ版を公開したばかりでしたが、Twitter上で正常にツイートできないケースが確認されたこと、生存確認の受け取りミスで投稿されるリスクがあること、半永久的にメンテナンスすることが困難なことなどから決断したといいます。
登録されたメッセージはすべて削除したとのこと。
【大切なお知らせ】
— nwsa / のーさ (@hrqsn)July 25, 2021
3/5にβ版を公開した「desubot」ですが、7/30(金) 23:59を持って提供を終了する事にしました。
他界後にTwitterアカウントが放置されてしまう事への危惧から「desubot」を開発しましたが、やはり個人での利用に留めておくべきとの決断に至りました。
理由は以下の通りです。pic.twitter.com/bXhcylgsKf
こうした“タイムカプセル投稿”機能は不測の事態の備えとして心強いものです。しかし、desubotが終了する理由の冒頭に挙げているように、外部サービスの動作は元のSNSの設計に依存するところがあります。
元のSNSの内部設計に変更がなされたとき、置いてきぼりにされてしまうリスクがどうしても拭えません。
死後に何かしらの情報を発信するなら、元のSNSが標準で備える予約投稿機能を利用してタイムカプセルを作るほうがリスクを抑えられそうです。
各サービスがどのような予約投稿機能を実装しているのか、個別に検証していきましょう。
Twitterはブラウザ版で18カ月先の投稿が可能
Twitterはブラウザからアクセスすれば標準で予約投稿が使えます。
ツイート入力枠の下にあるカレンダーアイコン(予約設定)を押すと、投稿時期を指定する画面が現れるので、あとは分単位まで投稿のタイミングを決めて登録するだけです。
予約時期は現在時間から18カ月先までとなるため、不測の事態用の投稿をセットするなら、期日前に更新したり、元の予約ツイートを破棄したうえで新規に設定したりするメンテナンスが必要になります。
また、ツリー形式の投稿は予約設定できないので、140文字を超える長文をセットしたい場合は、文章を画像にして貼り付けたり、単独投稿を複数用意したりする工夫が求められます。
FacebookとInstagram、LINEはビジネスユースのみ対応
FacebookとInstagramは、パソコン用の公式ツール「クリエイタースタジオ」を通してセットすることで予約投稿が可能です。
ただし、どちらも個人用のアカウントは非対応です。
Facebookなら「Facebookページ」、Instagramなら「プロアカウント」といったビジネス向けのアカウントでのみ利用できます。
それらを持っている場合は、20分~75日後までの範囲で予約投稿が可能です。
LINEもFacebook等と同じく標準アプリでは対応していません。
「LINE公式アカウント」アプリをインストールし、LINE公式アカウントを作ることで予約投稿が可能になります。
ビジネスユースを想定したアカウントですが、個人で利用することもできます。
予約投稿の範囲は自由度が高く、2040年や2050年でもセットできました。
YouTubeは2年後まで、noteもプレミアム会員なら2年後まで
YouTubeはTwitterと同じくアカウントの制限なしに、動画のアップロードページ「YouTube Studio」で予約設定が選べます。
動画の公開設定を決める最後のプロセスで「スケジュールを設定」を選び、日時を確定するだけです。
指定範囲はリアルタイムから2年後の同月末日23時45分まで。たとえば2021年8月20日12時00分に投稿予約をする場合、2023年8月31日23時45分がもっとも遠い予約設定となります。
そのほか、有料アカウントになることで、特典のひとつとして予約投稿が選べるようになるサービスもあります。
mixiは「mixiプレミアム」になると1週間先までの予約が可能になります。
noteは「noteプレミアム」になると、2年後の同月同日23時30分までの設定が選べます。
ブログは実質無制限で投稿できるケースが多い
予約投稿に関する各社のスタンスはバラバラでした。しかし、俯瞰してみると次のような傾向が読み取れます。
- プライベート用アカウントでは予約投稿を提供しないタイプが多い
- 予約投稿機能を提供している場合も1~2年先までというスタンスが中心
- 有料アカウントの特典のひとつとして予約投稿機能を提供する場合もある
SNSはリアルタイム性が重視される傾向が強く、予約投稿機能は必須ではないことが窺えます。
また、提供する場合も「せいぜい2年まで」というデザインになっているのは、運営側が保障できるタイムスケールを示唆しているところがありそうです。
一方でブログサービスを見渡すと、西暦2200年や3000年の公開設定でアップできるサービスは珍しくありません。
実質無制限で予約できる仕組みですが、当然ながら西暦3000年まで記事を守り続ける保証は付随しません。
あくまで、そのブログサービスが提供を続けている範囲での無制限です。
そのあたりの事情はSNSも同様です。場を提供する大本であっても一寸先は闇。わずか数年後であっても、将来にタイムカプセルを運ぶ責任を負わせることは難しいことだと思われます。
このメッセージが公開されたとき、私はこの世にいません――。
そうしたメッセージが残されたSNSやブログはたまに見かけます。
しかし、そのほとんどは家族や友人が、本人の没後に代理でアップしたものです。
自動の予約投稿を公開した事例は数えるほどしかありません(設定を忘れていたのか、しばらくしたら削除されたケースもありました)。
運営側もそうした使い方を推奨している例は見かけません。
予約投稿を使ってラストメッセージを世に公開するのはある種の趣がありますが、難易度はなかなかに高いのではないかと思われます。
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古田雄介(ふるた ゆうすけ)
1977年生まれのフリー記者。建設業界と葬祭業界を経て、2002年から現職。インターネットと人の死の向き合い方を考えるライフワークを続けている。著書に『故人サイト』(社会評論社)、『ここが知りたい! デジタル遺品』(技術評論社)など。2020年1月に、『スマホの中身も「遺品」です』(中公新書ラクレ)を刊行した。