第22回:これで良いのか遺品整理・特殊清掃業界
特殊清掃は「臭いが取れない」ことが最大の問題

[2020/1/7 00:00]


夫婦二人世帯・単身世帯や死亡者数が年々増加してきていることなどを背景に、遺品整理や特殊清掃(※)の専門事業者への依頼も増えてきています。

それに伴い、新規事業者の参入も急増して業者間の競争が激化し、消費者生活センターへの苦情もうなぎ登りに増えています。

そこで、業界の重鎮のお一人で、マインドカンパニー合同会社の鷹田了(たかださとる)代表に、遺品整理・特殊清掃業界では今、特に何が問題なのかとその解決策についてお聞きしました。

※特殊清掃とは、一般に孤独死、孤立死と呼ばれている死亡現場や、事件、事故、自殺等の死亡現場で遺体の痕跡を取り除き、原状回復する清掃作業のこと。

鷹田 了(たかだ さとる)氏

「一般廃棄物許可」がない業者は利益を出すのが難しい

まず、遺品整理業界の問題/課題点についてお聞かせください。

業者としての立場で言いますと、遺品整理は利益があまり出なくなりましたので、当社は遺品整理から特殊清掃と災害復旧へと方向転換しました。

どうしてあまり利益が出なくなったのでしょうか。

遺品整理業界は、ここ20年間成長が続いている業界と書いているメディアはたくさんありますが、その成長以上に参入業者が増え、業者の数が多くなり過ぎています。

事業者数は、2~3年前には1万社位と言われていましたが、今年は3万社くらいに増えたと言われています。

そのため、競争が非常に激しくなり、価格も乱れています。特に、新規参入業者は、遺品整理の実績をつくるために叩き売りするところも多いため、価格相場が急速に下落してきました。

加えて、ゴミ処理代が高くなってきました。当社は、「一般廃棄物収集運搬許可」は持っておらず、許可を持つ業者に委託したり、一般廃棄物では受け入れられない物は産業廃棄物として処理しています。

その産業廃棄物処理代は、2年前は1kg当たり35円だったものが、50円、60円、80円と値上がりし、この2年間で2倍以上になっています。

一方、一般廃棄物収集運搬許可による処理代は、ズッーッと変わっていません。例えば、東京23区であれば1kg当たり15円50銭です。

2トントラック1台分で比較しますと、一般廃棄物として処理すれば2万円位で済みます。

これに対し産業廃棄物として処理すれば、1kg当たり60円とすると平均6~7万円、一般廃棄物収集運搬許可の委託業者に依頼すると10万円以上かかってしまいます。

ですから、一般廃棄物収集運搬許可を持っている業者は商売になっていますが、一般廃棄物収集運搬許可の委託業者に依頼したり、産業廃棄物として処理しているところは利益があまり出なくなってきたのです。

遺品整理では、ほかに利益を出す方法はないのですか。

回収してきた遺品の中から、リサイクル、リユースできるものを仕分けして、ネットオークションや古物市場で売ったり、国内で売れないものは海外でリユースするという道があり、それを行なっている事業者もかなり存在しています。

しかし、そうしたことを行なうと、全ての企業とは言いませんが、率直に言いましてブラック企業になってしまいやすいのです。

どういうことかと言いますと、まず、引越しより遺品整理は回転が悪く、リサイクル、リユースを行なうとさらに回転が悪くなります。

引越しは、ゴミの持ち帰りがありませんので、1日3件行なっている業者が大半です。

これに対し遺品整理のごみは、ごみ屋さんを呼んで運んでもリサイクルやリユースするなら車で持ち帰らなければならない物が多く、通常は1日1件しか行なえません。

ですから、そういう業者の夕方までの仕事というのは、利益はほとんど出ないのです。

利益にするのは、夕方以降の残業の時間帯です。

どういうことでしょうか。

リサイクル、リユースで利益を出すために、夕方以降は、従業員は毎日のように夜の10時とか11時まで仕分け作業などを行ないます。

自社に大型倉庫を所有して、海外リユースまで一貫して本格的にリユースしている企業は利益を出しやすくなっています。

しかし、中途半端にリサイクル、リユースを行なう企業は、それだけの長時間労働に対して、正規の残業代を払っていては、経営的に合わない企業が多いです。それに目をつぶって行なってくれる従業員がいる会社でないと利益が出にくくなっているのです。

加えて、従業員を長時間残業させるのは、労働基準法の問題があり、労働基準監督署も厳しいので、本来はあまり行ないたくありません。

そのため、リサイクル、リユースを行なっているところは、融通のきく家族や親族が従事しているファミリー会社が多くなっています。

結局、一般廃棄物収集運搬許可を持たない業者や本格的に海外リユースまで行なわない業者は、利益は出しにくいということですね。

マッチングサイトは紹介手数料を払うと大赤字

遺品整理業界の問題/課題点としては、そのほかにはいかがでしょうか。

遺品整理業界には、ユーザーと業者をマッチングさせるサイトで、SEO(検索順位)やリスティング広告に多額の投資を行なっているところがあります。

そのサイトでユーザーを紹介されてマッチすると、紹介手数料として、遺品整理サービス費用の20%~30%を支払わなければなりません。

しかし、いま説明しましたように、遺品整理業では利益があまり出なくなってきていますから、20%~30%を払うと大赤字です。

ですから、自社で遺品整理を受注できる力があるところは、そのマッチングサイトを利用しなくなってきています。

しかし、自社で受注できる力がない業者もたくさんいます。そうした業者はマッチングサイトに頼っており、通常のサービス価格に紹介手数料分を上乗せするしかありません。

そうすると、競争が激しくなった中では、価格競争に負けて仕事がとれないか、うまく取れたとしても、上乗せした分だけ、ユーザーに高いお金を払ってもらうことになります。

このような実態になっていることも、遺品整理業界の問題点だと思います。

つまり、そのマッチングサイトは、利益があまり出なくなった遺品整理業者の窮状は考えずに、従来通りの紹介料を取っているということですね。

やり直しが増え、ユーザーに余計な出費をさせている

次に、特殊清掃業界において問題/課題点だと思われていることをお聞かせください。

特殊清掃業界には、非常に大きな問題があります。特殊清掃を行なうための資格を発行している団体の中で、資格取得者も結構多いのですが、その資格を取得しても特殊清掃をきちんと行なえない団体(以下、A団体)があることです。

A団体の教材を読むと、書いてあることは、空気中には細菌があるので除菌した方がよいとか、徐菌するには二酸化塩素が良いとか、そうした基本的なことばかりです。

「床の上で亡くなっていた場合はどうしたらよいのか」、「トイレの中で亡くなっていた時にはこのようにすればよい」とか、「床下まで体液が染み込んでいる時に、根太の場合やパーチクルーボードの場合、コンクリートスラブの場合にはどうするのか」、あるいは「ジプトーン天井が臭い場合の対処法」など、そうした具体的な清掃法についてはまったく書かれていません。

そのため、この資格を取得しても、きちんとした特殊清掃はできないのです。

孤独死現場での消臭作業

それで、どのような問題が起こっているのでしょうか。

特殊清掃をきちんと行なっている私の知り合いの業者の人たちから、「2~3年前から他社が行なった特殊清掃のやり直しが異常に増えている」との声を多く聞いております。

特殊清掃では、臭いを取ることが一番求められます。ところが、これはA団体の資格を取得した業者に限ったことではありませんが、臭いをきちんと取ることができない業者が多いのです。逆に言えば、臭いをきちんと取ることができない業者が大半なのです。

A団体の資格取得用テキストや、資格を取得して会員になってもらえるマニュアルなどでも、臭いの取り方については書かれていません。

つまり、臭いの取り方を教えられていないのです。

どうしてやり直しになるのですか。

やり直しを求めるのは、アパートやマンションなどのオーナーや管理会社です。臭いが残っているところには、誰も入居したくないですから、オーナーや管理会社としては、孤独死などの痕跡は残さず、無かったかのようにして欲しいわけです。

臭いをきちんと取れなかった業者にクレームをつけて、やり直しさせても同じことですから、きちんと出来る業者にやり直してもらうオーナー、管理会社が多いのです。

しかし、それだとユーザーにしてみれば、出費が多くなってしまいます。ユーザーに余計な出費をさせているわけですから、非常に大きな問題です。

そのことを、A団体はどう思っているのでしょうかね。

私はかつてA団体の役員に対して、資格取得の教材は現在の現場には通用しないということを散々言いました。

でも、「会員は増えているのでこのままではいいではないか」といった理由で私の意見は聞き入れられませんでした。

また、A団体は、今年9月に、特殊清掃のマッチングサイトを立ち上げ、A団体のトップは、登録事業者を集めるために、SNSなどで「一緒にやりましょう」などと盛んに煽りたてていました。

私はそれを見て、A団体の役員に電話して「会員を増やすことより先に、きちんと孤独死などの痕跡は残さずに施工できる業者を育てた方が良いのではないか」「ただ会員を増やすだけではユーザーの被害が増えるだけなので、ちょっとおかしいのではないか」と言いました。

すると、その役員は「トップは金儲けに走っているので、進言しても聞き入れてもらえない」と答えました。

それが本音かどうかは分かりませんが、いずれにしても私の電話には耳を傾けてもらえませんでした。

こうしたやり取りからして、A団体は、資格取得会員やマッチング登録会員を増やすことによって、ユーザーから特殊清掃の依頼を増やして手数料を稼ぐことしか考えておらず、臭いがきちんと取れるかどうかまでは考えていないと受け止めざるを得ません。

臭いがきちんと取れないので、ユーザーに二重の出費をさせているだけでなく、臭いがきちんと取れないことを分かりながら、そういう業者をどんどん増やそうとしているということですね。

そうなのです。まずユーザーに被害が出ているということが問題です。そして、被害が広がっていくと、特殊清掃業界全体の信頼性も無くなりますから、我われ業者にとっては死活問題なのです。

「完全消臭」を履行できる業者だけが加盟する新団体が発足

鷹田代表は、この大問題を解決していくには、どのようにしたら良いとお考えですか。

特殊清掃業者が、高い紹介手数料を払ってでも、A団体のような大きな問題があるところに入ろうとするのは、仕事がもらえるからです。特に、事業を始めたばかりの業者はそうです。

ですから、他のまともな団体も、そうした仕組みをどんどんつくっていけば良いと思うのです。A団体と同じだけの仕事を業者に紹介できるようになったら、あとは仕事内容で比べますから、いい加減な団体は自ずと弱体化していくはずです。

特殊清掃業者に仕事を紹介する受け皿となれる団体は、すでにあるのですか。

特殊清掃と災害復旧に特化した団体としては、この夏に「日本特殊清掃隊」という団体ができました。

私のように、A団体の行なっていることに意見を言ったり、不満を示したことによってA団体から除名された人や自ら退会した業者が多くいます。

その人たちが自然と集まって意見交換するようになり、いろいろ話し合った結果、「本当に世の中に役立つ特殊清掃を提供していこう」という理念で一致し、新しい団体を立ち上げました。

日本特殊清掃隊には、どのような特徴があるのですか。

一番の特徴は、「完全消臭」ということを謳っており、完全消臭を履行できるエキスパートの会社だけが加盟しているということです。A団体を除名されたのは、そういう会社が多いのです。

A団体は、完全消臭ではありませんし、そう謳うとまずいので、「完全消臭」という言葉は使っていません。

また、日本特殊清掃隊では、加盟各社が日々情報交換し、最新の技術、ノウハウを共有しています。この点でも、A団体に比べて格段に優れています。

オゾン脱臭機保有台数は業界トップクラス

団体が発足したばかりですが、加盟社に仕事を紹介するという面ではいかがですか。

つい最近の例ですと、これは水害復旧の案件ですが、団体に加盟している1社に多数の依頼がありました。1社ではこなせないので、加盟各社に割り振って処理しました。

完全消臭を履行できる業者は、全国にまだ1割程度しかいませんし、災害復旧できるところはさらに少ないので、今後、日本特殊清掃隊への依頼はもっと増えてくると思います。

水害復旧現場での消毒作業

特殊清掃事業者に仕事を紹介できる団体が増えていく

そのほか、特殊清掃事業者に仕事を紹介する受け皿となる団体はありますか。

私が所属している団体で言いますと、「一般社団法人 日本除菌脱臭サービス協会」があります。

孤独死などに限らず、脱臭全般の事業者が集まった団体ですが、「孤独死脱臭マイスター」という資格も発行しており、孤独死対応にも力を入れています。

受講料は、会員は3万円、非会員は5万円です。非会員の場合はA団体より2万円高いですが、カリキュラムの内容は数倍良くできており、コストパフォーマンスはこちらの方が断然高いです。

仕事の紹介という面でも、不動産管理会社などと提携しており、災害復旧の依頼はありますし、特殊清掃の依頼もたまにあります。

そのほか、所属されていらっしゃるのは。

「一般社団法人 家財整理相談窓口」にも所属しています。この団体は、準会員と正会員に分かれており、厳しい審査によって、ユーザーが満足する仕事ができると認められた会社のみを正会員にしています。

団体名の通り、ユーザーからの相談窓口ですが、変な業者に当たりたくないので良い業者を紹介してほしいという人もいますので、そういう人には正会員の業者を紹介しています。良い業者を紹介してほしいという相談も増えてきています。

両団体とも、加盟会員への仕事の紹介ということにも力を入れており、紹介は今後さらに増えていくと思います。

今日お話しいただいた、特に特殊清掃業界の問題/課題点は、メディアで取り上げるのは初めてだと思います。とても重要なお話をありがとうございました。


【鷹田了(たかださとる)氏のプロフィール】

マインドカンパニー合同会社 代表。

  • 2005年10月 一般廃棄物収集運搬&産業廃棄物収集運搬の有限会社 遠藤商事に転職する。
  • 2008年11月 同商事は、自社で遺品整理業を始める(社名:遺品整理ネクスト)。
  • 2012年2月 遺品整理ネクストの現場リーダーに抜擢される。TV出演などマスコミに多く露出して会社の知名度を上げていった。
  • 2013年11月 株式会社ロードにヘッドハンティングされ、専務取締役として勤務。
  • 2015年7月 マインドカンパニー(個人事業主)として独立。
  • 2018年5月 マインドカンパニー合同会社として法人化し、現在に至る。

これまでTV出演6回、新聞掲載6回、雑誌掲載8回、セミナー講師15回などの実績がある。

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塚本 優(つかもと まさる)
終活・葬送ジャーナリスト。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、葬祭(葬儀、お墓、寺院など)を事業領域とした鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務めたほか、終活資格認定団体を立ち上げる。2013年、フリーの終活・葬送ジャーナリストとして独立。 生前の「介護・医療分野」と死後の「葬儀・供養分野」を中心に取材・執筆活動を行なっている。

[塚本優]
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