第25回:「終の棲家」として評価が高い慶友病院自分の親を安心して預けられる場所をつくる
医療法人社団 慶成会が運営する「慶友病院」は、2つの療養型病院を構えています。
東京都青梅市にある「青梅慶友病院」(※1)と、東京都稲城市のよみうりランド内にある「よみうりランド慶友病院」(※2)です。
同院の入院患者は、以前入院した患者家族からの紹介や口コミが8割を占めており、病院でありながら、「終の棲家」(ついのすみか)として評価が高いのが大きな特徴です。
そこで、理事長の大塚太郎医学博士に高評価の要因などについてお聞きしました。
(※1)病床数:736床、職員数:774名、患者平均年齢:89.4歳、患者平均在院期間:3年4カ月
(※2)病床数:240床、職員数367名、患者平均年齢:88.7歳、患者平均在院期間:2年5カ月
あらゆる施策は理念に照らして検討・実行する
まず、慶友病院の理念をお聞かせ下さい。
慶友病院は、私の父である現会長の大塚宣夫(おおつか のぶお)が「自分の親を安心して預けられる場所をつくる」ということを理念として、1980年に開院しました。
世の中にある他の病院や高齢者施設には捉われず、あるいは介護/医療制度などにもあまり捉われることなく、自分達がこういうところだったら自分の親を預けたい、もしくは自分の親の最期を任せられると思える場所をつくることをテーマに、今日までやってきました。
大塚会長がそのような場所をつくろうと思われたのは、どうしてでしょうか。
会長によると、きっかけは、高校時代の親友からの相談電話です。
脳梗塞で寝たきりの祖母の面倒を家族で看ていたけれども、夜中に叫ぶなど認知症の症状が出はじめて、家族みんなが疲弊している。それで、当時、精神病院に勤めていた会長に、どこか預かってくれるところはないかとの電話がかかってきた。
会長にも心当たりがなく、いろいろ探してある老人病院を見学に行ったら、大きなショックを受けたそうです。
畳式の部屋に布団がびっしりと敷き詰められ、お年寄りはそこにただ転がされているだけ。そんな病室がずらっーと並んでいる。
おむつ交換はあまりされておらず、お風呂も使われている形跡がない。だから、臭いがひどい。
そのような場所であるにも関わらず、入居できるのは半年先。半年すれば、みんな亡くなって一巡するので、そうしたら空きが出ますと言われた。
会長は、まさに「現代の姥捨て山」だと思ったそうです。そして、これからは高齢者がもっと増える。自分たち夫婦にだって親がいる。せめて「自分の親だけでも安心して預けられるような施設をつくりたい」と考え、親友の電話から6年後に開院にこぎつけたということです。
「自分の親を安心して預けられる場所をつくる」という理念は、慶友病院の開院理由そのものでもあるわけですね。
そうです。ですから、当院では理念型の経営を行なっています。あらゆる施策は、「自分の親を安心して預けられる施設をつくる」という理念に照らし合わせて検討し、実行しています。
例えば、患者様に対するケアの行ない方もそうですし、職員の処遇もそうです。院内のいろいろなインテリアひとつとってもそうです。
また、医療/介護保険制度には左右されない経営を心掛けています。医療/介護保険制度はころころ変わりますので、制度に左右されてしまうと自分達が大切にしてきた理念がブレてしまうからです。
例えば、医療保険制度が変わり、医療区分の高い人を引き受けて、医療区分の低い人には出ていただくというようなことは、自分がお客様の立場であれば、安心して預けられる場所ではありませんので、そういうことはしたくないと考えています。
経営的には、全体で帳尻が合えば良いという考え方をしており、一つ一つのことについて、儲かるかどうかでは判断・実行していません。このことは、経営者としての覚悟でもあります。
覚悟とは、どういう意味でしょうか。
一つ一つのことについて、儲かるかどうかで判断や実行をすると、職員は白けてしまいます。
職員には、「自分の親を安心して預けられるようにしようよ」と言っているにも関わらず、「保険制度がこう変わったから、この患者様にはあまり必要はないと思うけど、この酸素をやりましょう」などと言い出したら、職員は言っていることとやっていることが違うではないかと思って、いきいきとは働けません。
私どもにとって一番大事なことは、職員一人一人が後ろめたくなく、本当に自分の親にしてあげたいと思うことをできるようにすることです。
そうできる環境を整えることが、経営者としての私の役割だと考えています。
職員は学歴や技術より人柄や雰囲気によって採用
今のお話にもちょっと関わりますが、「自分の親を安心して預けられる場所をつくる」という理念を貫くために、行なっていらっしゃることは。
病院の中でいろいろ起こっていること、もしくは、いま我々が取り組んでいることが、「自分の親を安心して預けられる場所をつくる」という理念に照らし合わせて、どういう意味を持っているのか、理念に近づいていることなのかなどについて、いろいろな機会を通じて職員に話すようにしています。
例えば、ご家族様からのクレームや病棟内でのトラブル、職員の悩み事などがあった時には、「自分の親を安心して預けられる場所」とするには、どうすべきなのかということを職員と一緒に議論し、決めています。
もう一つは、常勤職員、パート、アルバイトの全スタッフたちとのダイレクトコミニュケーションを多く取り、理念の共有を図っています。
飲み会なんかもたくさんあり、私も良く参加しています。ですから、パート、アルバイトを含め、スタッフが一緒になって理念の実現を目指しているという風土になっていると思います。
そうした結果、私は、青梅慶友病院の常勤職員、パート、アルバイトを含めた約780名の全スタッフの99%以上は、顔と名前が一致しています。
今のお話は、職員の研修や教育に関わることですが、採用で基準にされていらっしゃることは。
採用では、学歴や技術より人柄や雰囲気を重視して採用しています。
なぜなら、自分の親を預けたい、最期を看て欲しいと思う人は、人柄や雰囲気が良い人だからです。また、知識や技術は、後から研修などで教えることができますが、人柄は変わりません。
病院は、人と人が関わるサービス業というのが私どもの考え方ですので、当院の一番の売りになるのは人です。当院のクオリティというのは人が全てです。
料理屋で言えば、鮮度の悪い魚を仕入れて、どんなに手をかけても美味しい料理にはならないのと同じで、私たちの理念を実現できるクオリティの高い人を採用することが一番重要だと考えています。
ですから、人事担当にも「この人に自分の親を預けたいと思うか」という判断基準で採用して下さいと言っています。
もちろん、優秀な人材は、良い待遇でないと集まりませんので、給料は近隣の同業者よりも2割程度高いところを目指しています。
しかし、仕事は業務時間内に終わらせることを徹底しており、サービス残業はありませんし、有休取得も100%近くになっています。
そのかわり、仕事の効率性と生産性を高めるようにしています。
1,500坪ある「遊歩公園」を併設
「自分の親を安心して預けられる場所をつくる」という理念を追求することにより、いろいろなサービスが生まれてきたと思いますが、サービスの主な特徴をお聞かせください。
私たちのサービスの主な特徴は三つあると思っています。
一つは、「生活、介護、医療の一体的提供」です。超高齢者が暮らすのに必要なものを全部、一つの場所で提供するということです。
世の中では、介護は介護施設で受けてくれ、医療は病院で受けてくれ、というのが一般的です。介護施設では、医療も受けられますと書いてあっても、実際に医療が必要になったら、病院に行かなければならないところが多いのが実態です。
しかし、私どもがお預かりしているのは、80代後半から90代の方々が多く、そういう方々にとっては、介護と医療は同時に必要になります。
また、当院にいらっしゃる患者様というのは、人生最後の数カ月から数年をここで過され、そして旅立っていかれます。患者様の9割は、ここで死亡退院されています。
ということは、ここは患者様が人生最後の生活を送られる場ということです。ですから、私たちがまず行なうべきことは、旅立ちの瞬間まで快適に過ごせる生活の場をご提供するということです。
ただし、超高齢者の生活においては、介護、医療も必要になりますので、最晩年の生活をしっかり支えるための介護と医療も、生活と一体的にご提供します。
これが私たちの考え方であり、特徴だと思います。
一般病院ではもちろん、療養病院でも、「快適に過ごせる生活の場の提供」を基本に据えているところはあまりないと思います。そのような考え方になったのは、どうしてでしょうか。
会長の話では、開院当初から「医療より生活第一」という考え方ではなかったそうです。当初は「お年寄りだって寝たきりの人だって、医療の力をもってすれば元気になる」と考えていたと言います。
ところが、検査をしたり薬を出したりしても、なかなか元気にならない。医療をやればやるほど元気がなくなっていく。
1年ぐらい試行錯誤して、「お年寄りに必要なのは、医療より介護だ」と考えるようになった。一人で生活できなくなった人に対して、周りがサポートするということですね。
ところが、生活のサポートという意味で介護をしていても、「起きてどうするの。今日は何するの」という患者様が出てきた。
そういう患者様を見ているうちに、単なる介護よりも、どんな状態になってもまず、「快適に豊かに過ごせるよう生活環境を整えること」が大事だと、会長の考えが進化したと言います。
寝たきりでも、認知症でも、病気でも、どんな方でも、ここで過ごす時間は、人生の最後に誰もが経験する生活の一時期です。だからこそ、生活を基本に据え、環境を快適に豊かにする。衣食住を整える。その上で、介護と医療をくっつける構造にしようと思ったのです。
優先順位を、医療より介護、介護より生活へとひっくり返したわけですね。「快適に豊かに過ごせる生活の場の提供」ということでは、例えば、どのようなことをされているのですか。
生活の場ですから、まず、患者様がどのような状態であれ、できるだけ、朝になったら起こして着替えをし、日中はベッドから少しでも離れてもらいます。
そうすると、皆さん、だんだんと表情が変わってきます。部屋から一歩も出なかった方が、車椅子で散歩まで楽しめるようになったりするのです。
散歩やご家族との面会などには、お洒落ができるように、病院内に帽子やスカーフ、アクセサリーなどを用意し、その中から自分が好きなものを選んでもらえるようにしています。
身繕いの習慣を身に付けることは、「何かしよう」という前向きな意欲を持つことにつながるのです。
それ以外にも、生活空間を快適に豊にするために、建物や病院全体も工夫しています。
例えば、どのようなことでしょうか。
まずは、ゆったりとした空間づくりです。
青梅慶友病院では、改築の時にベッド数は増やさずに、建物の大きさだけを倍くらいにしました。人間にとって広い空間というのは、それくらい大事なのです。
開院時に併設した「遊歩公園」は、1,500坪くらいあります。これだけ広くしたのには、理由があります。
病院には、認知症の患者様も多くいらっしゃいます。自分の家族でも認識できない方も多いですから、せっかくご家族がいらしても、病室内で座っているだけでは会話がもちません。
そんなとき広い庭があれば、会話できなくても散歩するだけで間が持ちます。四季折々の植物を見ながら、公園を一周することで、一緒に過ごす時間を共有できるようにしているのです。
患者が快適に過ごせるよう、医師ではなく看護師に権限を与える
先ほど院内を見学させていただきましたが、ロビーやホール、廊下、食堂や喫茶室などのすべてが、とても広いと思いました。また、壁一面に絵画が描かれたり、廊下にはお花などが置かれているなど、インテリアコーディネートされており、病院というよりホテルのような感じでした。
もう一つ驚いたのは、病院特有の臭いがまったくないことです。どのようにされているのですか。
臭いの管理については、開院した当初からこだわっています。
患者様の70%はオムツをしていますから、臭ったらすぐに交換するのは基本です。いちばん強烈な臭いの元の口臭は、食事が終わったら歯磨きをするなどして、口内を清潔に保つよう心掛けています。
また、食べこぼしたら着替えをするなど、発生源を断つようにしています。
それから、芳香剤も使用禁止です。いい香りのものを使うと、ついついそれに頼ってしまいますし、臭いの発生源も分かりにくくなってしまうからです。
スタッフが徹底的に行動することで、臭いを元から断つようにされているわけですね。そのほか、「快適に豊かに過ごせる生活の場」を提供するためにこだわられていることは。
年をとっても、最後まで残る楽しみは食べることです。ですから、食べるものを美味しくするということにも、こだわっています。
例えば、食べる力が衰えた人にはミキサー食というのが普通の病院食かと思いますが、それでは見た目も味も食欲をそそるとは言い難い。
そこで当院では、通常の食事とは別のレシピでつくった柔らかい料理を、「ソフト食」としてお出ししています。
25年程前から取り組み始めたことですが、最初はミキサー食をゼリーで固め、かたちをつくることから始めました。しかし、彩りは悪く、冷たいメニューばかりになってしまいました。
そこで、ゼリーから蒸し物中心に変えることにより、温かいメニューが増えました。また、増粘剤を止めて、野菜でとろみをつけたりソースを工夫することにより、味も良くなっていきました。
専用の食材選びに始まり、裏ごしや隠し包丁を入れるなど、栄養士、料理人が工夫を凝らし、現在では34品に増えたメニューを、260名程の患者様に提供しています。
快適に豊かに過ごせる生活の場を提供するために、組織運営上、工夫されているようなことはありますか。
権限は、医師ではなく看護師に与えています。どうしてかと言いますと、患者様の生活のことを分かっているのは、普段患者に接する時間が長い看護師だからです。
生活、介護、医療の全体を一番コーディネートしやすいのも看護師です。ですから、患者様への処方も、看護師長が反対すれば通りません。また、看護師が患者様のことを考えて減薬の提案もできる権限を与えています。
惨めな長生きより豊かな一日を実現する医療を提供
サービスの主な特徴の二つ目をお聞かせください。
二つ目は、超高齢者にとってふさわしい医療を行なうということです。
私どもがお預かりしている超高齢者の方々の特徴は何かと言いますと、明日はどうなるか分らないということです。「ピンピンころり」という言葉があるように、明日、突然亡くなってしまうということがいくらでもある方々なのです。
医療というのは、そもそもにおいて、「痛い」「苦しい」の連続です。
我われが病院に行ったら、検査のために採血して、医者は気軽に「ついでにもう一本採っておきましょう」と言いますが、針をさされるのも普通だったら嫌ですよね。薬ひとつ飲むことでも嫌ですよね。検査だって不安だし、無い方がいいですよね。
でも、私たちはそれをなぜ我慢するのかというと、その先に良いことが待っていると思うからです。痛みや苦しさが早く取れるのではないか、もしくは早く社会に復帰できるのではないかと思うから我慢するわけです。
でも、超高齢者はそうではないと……。
そうです。超高齢者の方々というのは、辛い、苦しい思いをしただけで、良いことは無かったということがいくらでもあるのです。
私もかつて大学病院に勤務していましたが、痛い、苦しい思いをさせ、管だらけになって、そのまま亡くなっていく方はたくさんいました。
なぜそうなるかと言うと、超高齢者の特徴を踏まえずに、若い人と同じ医療を行なっているからです。
ですから、私どもは、超高齢者は明日どうなるか分らないという特徴を踏まえた上で、その人にとって本当にメリットのある、必要な医療だけを行なうようにしています。
逆に言えば、超高齢者には不必要な医療は極力少なくすることこそが、我われプロの技術だと考えています。
具体例をあげていただけますか。
分かりやすい例で言いますと、糖尿病の方に、一番最初に行なうのは食事コントロールです。糖尿病の方が「アイスクリームを食べたい」とか「晩酌をしたい」と言ったら、普通の病院は駄目だと言います。
しかし、80代後半や90代の超高齢者は、糖尿病とは別の理由で、明日突然亡くなってしまうことだってあるわけです。
そうなってしまうと、ご家族は後で、「何で食べさせてあげなかったのか」、「何で飲ませてあげなかったのだろう」と後悔します。
「自分の親を安心して預けられる場所をつくる」という当院の理念に照らし合わせると、そういう時に「自分の親にしてあげたい医療」というのは、親の望むようにして後で後悔しないようにすることだと思うのです。
ですから、当院では、ご本人に残っている能力と時間を見極めながら、不要なチューブや検査、薬は一つでも少なくするようにしています。
つまり、「苦痛に満ちた惨めな長生きよりも、豊かな一日」を実現する医療を目指しています。
家族にとっても快適な場所をつくる
サービスの主な特徴の三つ目についてお聞かせください。
患者様と同時に、ご家族様にとっても快適な場所をつくるということです。
ご家族様は、自分たちで看られるなら看たいと思われている方が大半です。しかし、介護が必要になったり、認知症になったりすると、とても看きれないので、やむを得ず預けられるのです。
そうしますと、預けた先で親が汚い姿をしていたり、嫌そうな顔をしていたりすると、家族はものすごく後ろめたいに気持になってしまいます。
家族の生活を守るために、自分の親に嫌な思いをさせていると考えてしまうと、ご家族様の気持ちも患者様から離れていってしまいます。
私どもは、ご家族が後ろめたい気持ちにならないようにするだけではなく、親を自宅で看ていたのでは絶対にできないようなことを行なって、「親孝行ができた」と思ってもらえるようにしています。
例えば、どのようなことを行なっているのですか。
先ほど言いました、衣服や身繕いなどをして、できるだけ姿が美しく保たれるようにしていることもそうです。
広い遊歩公園を設けて、患者様とご家族様が一緒に散策できるようにしていることもそうです。遊歩公園では、職員がサンマや焼き芋などを焼いて振舞うワゴンを出したりして、感動体験をしていただくようなことも行なっています。
また、院内でも、患者様とご家族様が一緒に参加できる多数のイベントを行なっています。プロの演奏家や歌手を招いてのコンサートや、フランス料理、お寿司、ステーキなどの本格的料理が味わえる「美食倶楽部」、アロマテラピーなどなどです。
そのようなことを行なって、親との心豊かな思い出になるような時間を持てるようにしています。
面会は24時間可能にしているそうですね。
ご家族がいつでも面会に来ていだだけるようにするためです。
特に、私どもがお預かりしている患者様の平均年齢は約89歳ですので、朝は元気でも夕方は容態が急変する可能性があります。そのような患者様が、ご家族と会える機会を極力減らしたくないという思いもあって、そうしています。
面会に来られたら、ご家族でゆっくり過ごしていただくために、談話スペースや喫茶室のほか、パーティルームも用意しています。
パーティルームは、10人程度が入れる貸切りの個室です。食器を用意しており、ケータリングの持ち込みもできますので、誕生会や長寿の祝いなどで親戚一同が集まる場所として好評です。
パーティルームを利用されたあるご家族にお話をうかがったところ、そのご一家は、かつては正月や誕生日などには、長老であったお母様のお宅に親戚一同が集まっていたそうです。
しかし、お母様の身体が不自由になってきたことから集まれなくなり、親戚が顔を合わせる機会もめっきり減っていたと言います。
ところが、当院への入院をきっかけに、親戚の集まりが復活したそうです。急な体調不良があっても、すぐそばにスタッフがいるなど自宅やレストランにはない安心感もあり、今ではお母様を囲んで4世代で集まっているそうです。
先ほどおっしゃっていた、自宅では絶対できないことが、ここではできている一つの例ですね。
パーティルームを用意し、介護/医療スタッフもそばにいるからできているというだけではなく、高齢者に残された大きな能力の一つが、「家族や親族を集める力」であるということを改めて感じます。
「患者様の残された能力を引き出す」というのが当院の目標の一つですが、パーティルームは、「家族や親族を集める力」を引き出す場所になっていると思います。
家族・親族の絆をつないだり、取り戻したりする場所になっているわけですね。面会には、どのくらい来られていますか。
青梅慶友病院だけも、毎日100~200名、正月や敬老の日には1,000名程度が来られます。今年の正月は特に多く、1,800名を超える方が来られました。
すごい人数ですね。青梅慶友病院の病床数は736床ですから、良く来られる家族も多いわけですね。家族にとっても快適な場所になっていることを示す数値ですね。今日は、貴重なお話をありがとうございました。
【大塚太郎(おおつか たろう)氏のプロフィール】
医療法人社団慶成会 青梅慶友病院・よみうりランド慶友病院 理事長。
東京都生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、順天堂大学医学部入学。
同卒業後、順天堂大学医学部精神医学教室に入局。
順天堂医院、順天堂越谷病院、順天堂東京江東高齢者医療センターなどの勤務を経て2007年より青梅慶友病院に勤務。2010年より現職。
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塚本 優(つかもと まさる)
終活・葬送ジャーナリスト。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、葬祭(葬儀、お墓、寺院など)を事業領域とした鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務めたほか、終活資格認定団体を立ち上げる。2013年、フリーの終活・葬送ジャーナリストとして独立。 生前の「介護・医療分野」と死後の「葬儀・供養分野」を中心に取材・執筆活動を行なっている。